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紅蓮荘奇譚 弐  作者: 天城なぎさ
第弐拾陸話 徒然
62/95

第弐拾陸話 壱

 今日の天気は、晴れ(のち)曇り。雨は降らないと、天気予報で言っていた。

 暑い日差しの下、学校へと向かっていく。


「響希~! おっはよ!」

「朝から元気だな。真代」

「考えてくれた? 昨日のこと」

「全く。戻る気はない」


 あと少しで校門だというのに、後ろから真代に声を掛けられるとは。不覚。


「つっちーとは、一緒じゃないんだね」

「今日は、俺が少し早く出たからな」

「ラケットはどうしてる?」

「まだ持ってる。捨てるに棄てられない。ラバーを張り替えれば、まだ使えるだろ。欲しいなら、いつでも良いぞ?」

「響希のラケット、シェイクでしょ。俺は要らないよ」


 話しながら歩いていると、いつの間にか、生徒玄関の中に来ていた。(つかさ)の姿は見えない。


「朝練は? 漣はまだ来てないのか?」

「朝練はないよ。れんれんは、まだ来てないね」

「お前たちは、暇なのか?」

「暇ではないよ。夏休みになれば、練習試合が控えてる」

「俺たちを誘ったところで、ブランクがあるから、練習にすらならない。諦めてくれ」


 教室に向かう俺たちの背後から、(つかさ)と漣の話し声が聞こえてきた。


「あ、響希! まっしーといるってことは、まさか響希も?」

「察しが良いな。漣も真代も、俺たちのことは、忘れてくれ」

「そうはいかないんだよ。三年の先輩が引退して、部員数が四人だけ。団体戦に出れないんだ」

「俺も真代も、次の大会で優勝したい。頼めるのは、響希と(つかさ)だけなんだ」

「僕たちのブランクは長いよ。それに、中学と高校でのレベルは、桁違いでしょ?」


 そう。(つかさ)の言う通り。俺たちにはブランクがあるし、中学と高校のレベルは桁違いだ。


「何があったんだよ。中一の時に」

「そうだよ。何があったの? 俺も、れんれんも、何も知らないままなんだよ?」


 いきなり辞めた時も、その後何度も、辞めた理由(わけ)を問われてきた俺たち。いつか話さなければならないと、そう思ってきた。


「教室でゆっくり話す。それで良いか?」

「響希。話すの? あの事を?」

「もう、ここまで来たんだ。理由(わけ)を話さなければ、俺たちだって解放されない」

「そっか。分かった。僕も話すよ」


 教室に入ると、まだ誰も来ていない。華鈴も吾妻も来ていない、静かな教室で、話すとしよう。


「まだ誰も来ていないなんて、珍しいね。ね、響希」

「そうだな。まるで、俺たちの為にいないようだ」

「それじゃあ、話してもらおうか。何があったのか、どうして辞めたのか」

「響希の席の周りに集まるか。その方が良い」


 各々、鞄を机の上に置き、俺の席の周りに集まった。この時が来たのかと思うと、心臓はバクバク。


「おはよう。早いね。皆」

「おはよ。あー、あたしたちは入らない方が良かった?」

「おはよう。雪村さん、吾妻さん。俺たちのことは気にしないで。すぐに終わるから」


 華鈴と吾妻が、教室に入ってきてくれたおかげで、少し落ち着いた。それじゃあ話そう。

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