表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅蓮荘奇譚 弐  作者: 天城なぎさ
第弐拾伍話 蛍火舞う空
61/95

第弐拾伍話 結

『先程、響希様がお聞きになりたかった事を、お話します』

「あぁ。はい」

『ただ、自由になりたかったのです。祥一郎と過ごした日々にも、その後の日々にも、小さき友人たちは必ず側にいました。わたくしが出掛ける日も必ず。わたくしに、自由はないのでしょうか? わたくしだけで、過ごす日々は、これからも訪れないの? わたくしは、それが嫌で嫌で、堪らなかった』


 キョウカ様の顔を見ずとも、キョウカ様が泣いていることは、はっきりと伝わった。小さき友人たちに、罪はない。だけど、キョウカ様は一人で、過ごしたいと思っていたんだ。


「自由を、手に入れてください。俺は、キョウカ様の言葉を持ち帰り、小さき友人たちと、森の妖たちに伝えます」

『響希様。わたくしは、貴方に恩を返さねばなりません』

「そんな。俺は、ただ依頼を受けただけです。ほら、また一匹飛びましたよ」


 いつの間にか、多くの蛍が飛び交っている。いつかのキョウカ様も、愛した人とともに観ていた景色。


「寂しくなります。キョウカ様がいなくなるのは」

『小さき友人たちを、どうかお願いいたします』

「はい。いつか、キョウカ様が戻って来るまで、見守ります」

『何故でしょう。離れたいと願っていましたのに。何故、涙が出てきてしまうのでしょう』


 それはきっと、別れるのが辛いからですよ。その言葉を伝えようにも、俺の口からは、何も出てきてはくれなかった。


『儚い光りです。この蛍たちは、もうじき最期を迎えてしまう』

「生きる者の運命(さだめ)です。人間も、いつかは死にゆく」

『祥一郎が亡くなった時、人間に、永遠があったなら良かったのにと、思いました。死とは、神ですら抗えないのですから』


 飛び交う蛍が空高く飛び、まるで星のよう。生きる者全てが、儚い存在。それを改めて思い知らされる。


『響希様、ありがとうございました。これで、旅に出られます』

「それは良かった。後の事は、任せてください」


 しばらく蛍を観て、キョウカ様はどこかへ行ってしまった。見送った俺は、そろそろ帰らないとヤバい。


「黒牙、召来!」


 紙人形をポケットから取り出し、俺の式神、黒牙を呼び出す。特に何の用件もなしに。


『どうした?』

「ただ、なんとなく呼んだだけだ」

『そうか』

「黒牙も、蛍を観たいだろ?」

『夏の風物詩だからな。霞ヶ森でも観れるぞ』

「ここで観る蛍も、良いだろ」


 キョウカ様は旅に出られた。これで、依頼は完遂。後始末は明日にでも、するとしよう。


『もう暗い。帰らなくては、いけないだろ?』

「そうだな。帰るか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ