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紅蓮荘奇譚 弐  作者: 天城なぎさ
第弐拾伍話 蛍火舞う空
58/95

第弐拾伍話 伍

 食器を台所に持っていき、そのまま二階の自室へ。部屋の明かりをつけて、ベッドにダイブ。


『響希様』

「おわあっ!? え、誰?」


 いきなり女の人の声が聞こえ、声のする方を見てみると、そこにいたのは、見覚えのある妖。


「キョウカ様? え、どうして俺んちに?」

『紅蓮荘では、相談しづらく。本日、紅蓮荘へ来られなかったのは、響希様でしたので』

「依頼ですか。聞きますよ」

『良かった。すみません。響希様の気配を辿って、この部屋に来てしまいました』

「でも、俺、一回この部屋に来てますよ? その時はいませんよね?」

『一度、お庭の方で待たせて頂きました』

「そうですか。あ、どうぞ、座ってください」


 なんだ。そういうことか。納得したところで、紅蓮荘では相談しづらい依頼を聞くとしよう。


「それで、依頼というのは?」

『もうじき、蛍の飛び交う時期になりますよね。霞ヶ森では、多く見られると聞きました』

「そうみたいですね」

『祥一郎と観た場所に、行きたいのです。ですが、小さき友人たちが、付いてきてしまいます。わたくしは、誰にも知られず、一人で蛍を観たいのです』

「なるほど。でもそれは、一人でこっそり出掛ければ、解決しますよ?」


 そうだ。そのくらい、キョウカ様だって分かるはず。それなのに、依頼として来るのは、何かあるのか?


『それは、分かっております。本日もそうですし』

「それなら、どうして?」

『しばらく、小さき友人たちと、離れたいのです』

「離れる? 霞ヶ森には帰らないと?」

『はい。ずっと悩んでいました。いつか、小さき友人たちと、離れなければいけないと、考えていました』

「まさかとは思いますが、今日からですか?」

『そうです。小さき友人たちには、何も伝えてはいません。しばらく、旅に出ようと思います。その前に、蛍を観たい』


 きっと今頃、霞ヶ森ではキョウカ様の捜索が行われているはず。シキも何も聞いていないだろうし、小さき友人たちは、パニックだろうな。


『響希様。しばらく泊めて頂けますか?』

「俺は問題ありませんけど」

『ありがとうございます。響希様。お庭に、泊めさせて頂きますね』


 マジかよ。泊まる気か。外でも良いって言われても、日向が気になるだろうし。それに、台風の影響もあるだろう。


「僕がどうかした? え、あ、さっきの妖さん」

『お邪魔しています』

「いえいえ。ごゆっくり」

「日向、どうした?」

「お風呂空いたから、次いいよ」


 いきなり日向が部屋に入ってきて、俺の方がパニックを起こしそうだ。


「聞こえてたけど、この妖さん、泊まるんでしょ?」

「ああ。でも、外にいたら、探しに来た妖に見つかる」

「それなら、突き当たりの部屋は? 二階にあるわけだし、僕たちで匿えるじゃん」

「あそこは埃だらけだろ?」

「掃除すれば良いでしょ。僕、やっとこうか?」

「テスト前だろ。俺がやる」

「でも、妖さんも食事するよね? どうしようか」

『わたくしのことは、お気になさらず。妖は、食事をせずとも、生きられますよ』


 これなら、俺と日向だけの秘密として、キョウカ様を匿える。風呂に入る前に、軽く掃除をすれば良い。

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