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紅蓮荘奇譚 弐  作者: 天城なぎさ
第弐拾伍話 蛍火舞う空
56/95

第弐拾伍話 参

 薄暗くなってきた頃にキノカサと別れ、家路についた俺。街灯の灯りに虫たちが集まっている光景を目にしては、妙月様の怯えた顔が浮かんできてしまう。


「鼠と蛇もいたら、怯えるどころじゃないだろうな」


 おっと、いけない。そんなことを、考えてしまう俺がいる。

 妙月様が恐れているところを、見たくはない。


 そうこうしていると、いつの間にか家の前。玄関の明かりが灯り、居間も明かりが点いている。


「ただいま~」


 虚しく響く俺の声。返事なんて、返ってきたためしがない。どうせ、兄貴も弟も、ゲームに夢中なんだろうけど。


 ガラガラガラガラ。と、居間の磨りガラスの引き戸が開き、廊下にやってきたのは、二つ上の兄貴。

 今日は休みだとかで、上下スウェットで、髪はボサボサ。これが兄貴による、社会人の休日。


「お、響希じゃん。いつもより早くね?」

「呑気にゲームをしている兄貴に、一番言われたくないな」

「ちゃんと働いて金納めてますぅ~。未成年のくせに、生意気だぞ」

「この前、彼女にフラれた奴に、言われたくないね!」

「そういう響希は、彼女いないだろうが!」

「何言ってんの? 兄貴の同級生と付き合ってるけど?」

「またまた~。俺の同級生って、誰のことだ?」

「高校の時に同じクラスだったろ。高坂美穂さんと」


 その名前にピンときたようで、兄貴は驚いた表情を向けてきた。


「高坂さんと付き合ってんの? いつから?」

「二月から。両思いだったこともあって、付き合ってる」

「高坂さんって。容姿端麗で、成績優秀な、あの高坂さんだよな?」

「そうだけど?」

「マジかよ。あの高坂さんが、俺ではなく、弟の響希に……。待て。まさかとは思うけど、日向(ひゅうが)にも彼女がいたりするのか?」

「自分で聞けば? 俺が、知るわけないだろ」


 まだ玄関に入っただけ。早く中に入らせろ。俺だってゲームしたいんだよ。


「てか、何しに廊下に出てきたわけ?」

「あ、そうだ。トイレに」

「忘れないだろ。普通」


 やっと中に入れた。二階の自室に行き、鞄を置いたら、居間へ。二つ下の弟、日向が、テレビに接続してゲームをしていた。


「あれ? 響希、帰ってくるの早くない? いつも六時過ぎてるじゃん」

「真代に捕まったからな。仕方ないだろ」

「また卓球の話でしょ? 真代君、響希とまたやりたいんだよ。きっと」

「ブランクがある俺が、真代の相手が出来るわけないだろ。てか、テスト勉強はしなくて良いのかよ?」

「今は休憩中。明日からテストとか、嫌になるよ」

「それは、分かる。ただ、高校生になれば、早く帰れるぞ」

「僕も早く高校生になりたいよ。響希みたいに、自由に遊べるじゃん」

「もう少しの辛抱だな」


 ゲームに夢中な日向の邪魔はしないように、俺は居間の片隅でスマホでゲーム。


「そういえば、響希の知り合いかな。妖が訪ねて来たよ。綺麗な女の妖」

「俺を? 誰だ、その妖」

「さぁね。僕は、響希と違って、妖に知り合いはいない」

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