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紅蓮荘奇譚 弐  作者: 天城なぎさ
第弐拾肆話 雨降る日は君想う
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第弐拾肆話 陸

 日曜日になると、昨日の雨が嘘だったかのような、晴天。少し暑いくらいの気温で、梅雨の時期とは思えない程。


 駅で紗奈と待ち合わせ。十時の電車で行くと、昨夜連絡をきた。


「もうすぐ電車来るけど、紗奈、遅いなぁ」


 スマホを確認しても、紗奈から連絡は来ていない。何かあったのだろうか。


「ごーめーん! 遅くなっちゃった!」

「間に合って良かった」

「彼氏が連絡しつこくて。変な男が美術館にいても、無視してて」

「紗奈にも彼氏いたんだね」

「まぁね。束縛男だけど」

「大変だね。彼氏さんも来るの?」

「一緒に来ようとしてるの。だけど、華鈴と行くからって、断った」


 そろそろ電車が来る頃で、私たちはホームへと移動。

 走ってきたらしい、紗奈の髪はボサボサ。


「先に渡しとく。これ、チケットね」

「ありがとう。これのお金、払ってないよね」

「いいよ。気にしないで。元々、美術部の友達と行く予定で、買ったから」


 日曜日の電車も、相変わらず少し混んでいて、お出掛けの人たちで溢れている。


「座れるかな」

「どうだろう。とにかく、彼氏がいないことを祈るだけ」

「大変そうだね」

「後で、彼氏の愚痴聞いて!」

「わ、分かった」


 電車に乗って、樽沼の地を過ぎ、二駅目の駅。


「ここから歩くけど、すぐだから」

「最寄り駅、代畑(しろはた)だったんだね」

「そうそう。ここが最寄り」

「行こっか。早く観たい!」


 歩いて五分。本当にすぐで、案外近い所に美術館はあった。初めての美術館で、『クロード・モネ展』。楽しみ!


 入り口の自動ドアの扉が開くと、感じたことのない空気が、美術館を包んでいた。

 入り口でチケットの半券を受け取り、いよいよ、絵画鑑賞。


「凄いよね。モネの作品には、いつも憧れてる」

「私、この絵好き。いつか、紗奈の作品観てみたい」

「文化祭、おいでよ。桃麻もいるわけだし」

「桃麻と一緒に、紗奈の作品鑑賞するね」

「お待ちしてます」


 クロード・モネの作品は、私が知っている作品もあれば、知らない作品がたくさん。あれこれ観ていると、時間を忘れてしまう。


「あとで、画集買おうかな。クロード・モネの画集って、書店で買えるよね?」

「買えるよ。種類が多いから、華鈴の好きなやつ選びなよ」

「紗奈は画集持ってるの?」

「モネもあるし、ルノワールに、ゴッホ。三人の画集は持ってる」

「いつでも観放題だね」

「いいでしょ~?」


 美術館に来て良かった。綺麗な絵画を、こんなにじっくり鑑賞出来て、なんだか楽しい。


「ここの二階、カフェになってるの。お昼ごはん食べよう」

「カフェがあるの!? 美術館、凄いね」

「そうでしょ。軽食だけど、大丈夫だよね?」

「うん。美術館でランチなんて、夢にも思わなかった」


 紗奈が案内してくれて、階段を上がって、二階へ。コーヒーの香りが漂う、広いカフェ。


「ちょっと、トイレ行ってくる。華鈴、先に注文してて良いよ」

「分かった。席取っておくね」


 クロード・モネの作品を観に来た人たちで、ある程度の席が埋まっていた。店員さんに案内された席は、四人用の席。


「紗奈のお友達さん。だよね?」


 席に着いて、メニュー表を見ていると、急に知らない男の人に話し掛けられ、顔を上げると、同い年くらいの人が、席の側に立ったいた。


「そうですけど。貴方は? 紗奈のお知り合いですか?」

「紗奈の彼氏です。一緒に良い?」

「どうぞ」


 ちゃっかり、私の向かいに座ったこの人が、紗奈の彼氏さん。まさか付いて来ていたとは。紗奈が戻って来たら、どうなるんだろう。


「ちょっと! 何で来たの!」

「美術館に行くって言うから、付いてきた」

「やっぱり……。今すぐ帰って」

「えー? お友達さんは、何食べます?」

「華鈴に話し掛けないで!」

「だ、大丈夫だよ。紗奈」

「ほら、紗奈も座りなよ。お昼食べるんでしょ? 俺は……。お、ハムとチーズのトースト、美味しそう」


 トイレから戻ってきた紗奈は、開口一番、彼氏さんがいることに、言及。彼氏さんの隣に座った紗奈は、諦めた様子で、呆れている。


「華鈴は決めた?」

「うーん。私もトーストにしようかな。あ、ピザがあるね」

「ピザも良いよね~。えー。迷う~」

「華鈴。お昼は、隼人(はやと)の奢りだから、遠慮しないで良いからね! たっかいやつ、選んで良いから!」

「えー。俺の奢りなの? マジで?」

「当たり前でしょ。ストーカーが何言ってんの」

「仲良しだね。二人は」

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