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紅蓮荘奇譚 弐  作者: 天城なぎさ
第拾捌話 甘く苦く、雨は降る。
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第拾捌話 伍

 翌日も降り続く雨。せっかくの日曜日に、天候が雨だとテンションは下がる。 

 だけど、今日も霞ヶ森へ。

 家を出てすぐに、子犬を連れた、幼なじみで彼氏の桃麻に遭遇。


「あれ? 華鈴? どっか行くの?」

「うん。霞ヶ森にね。内緒だよ?」

「気をつけろよ。まぁ。響希氏もいるし、僚(つかさ)氏もいるから平気だろうけど」

「うん。ありがとう、桃麻。桃麻は何してるの?」

「雨なんだけどさ、だ(・)ん(・)ご(・)の散歩に行くんだ」


 恐らくだ(・)ん(・)ご(・)は子犬の名前なんだろう。

 桃麻が立ち止まると、良い子にお座りをしていて、なんだか可愛い。


「メスでさ、一歳なんだ。一歳だとギリギリ子犬」

「可愛い~! 撫でても良いかな?」

「どうぞ~。食べ過ぎでポチャポチャしてるけど、そこは気にしないで」

「食いしん坊なんだね。よしよし」

「キャン! キャン!」


 頭を撫でると嬉しそうにしているだ(・)ん(・)ご(・)。動物を飼ったことないから、少し羨ましさがある。


「じゃあ、俺たち行くな」

「桃麻も気をつけてね」

「おう! 行くぞ、だ(・)ん(・)ご(・)」

「キャン! キャン!」


 桃麻たちを見送り、私も霞ヶ森へ向かう。

 雨の降る日の霞ヶ森は、いつも以上に神秘的な場所に変わる。雨に濡れる木葉。水溜まりでは、小さな妖が楽しそうに遊んでいたり。


「おはよう。りんちゃん」

「おはよう。僚(つかさ)君。今日は響希君はいないの?」


 前方から声をかけられ、少し驚きながら、僚(つかさ)君と挨拶を交わす。


「響希はデートみたいだよ。もうすぐ先輩が忙しくなるから、その前に行くんだって」

「デートかぁ。羨ましい」

「たまには行ってくれば? 妖のことなら僕たちに任せて!」

「ありがとう、僚(つかさ)君」


 紅蓮荘が見えてくると、外では灰色の妖狐が、花畑を眺めていた。


「おはよう。ヒサギ」

『あ? 華鈴と僚(つかさ)か。響希がいないようだが、どうした?』

「今日は来れないんだよ。響希にだって、遊びたい時があるの」

『そうか。中にキョウカとか言う妖が来ているぞ』


 キョウカ様だ。僚(つかさ)君へは須崎さんから連絡が行っているはず。

 だけど、キョウカ様たちは、取り壊しが早まったことを知らない。


「昨日の夜、須崎氏から連絡があったんだ。りんちゃんも知ってるよね?」

「うん。私にも来たよ。今月末だもんね。もうすぐだし、この事、キョウカ様にも知らせなきゃ」


 急いで紅蓮荘の中に入ると、キノカサと妙月様の笑い声と、キョウカ様の話し声が聞こえてきた。


「キョウカ様!」


 水の間で話していた所に、私が突撃。後を追うように、僚(つかさ)君も水の間へ。


『華鈴様、僚(つかさ)様。どうなさったのですか?』

「僕たちの名前を、呼んでくれた……」

『明日(みょうにち)より、こちらでお世話になりますので、お名前をお呼びしたまでです』

「明日から来られるんですね?」

『はい。シキ殿のご厚意に甘えさせて頂きます』


 良かった。それなら、取り壊しが早まったとしても、大丈夫。

 そんなこととは知らない妖たちの笑い声は、私たちの心配を描き消してくれた。

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