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紅蓮荘奇譚 弐  作者: 天城なぎさ
第弐拾肆話 雨降る日は君想う
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第弐拾肆話 弐

 白牙を呼び出して、さっそく、捜索開始。

 甘い香りを嗅いだ白牙は、どこか少し驚いている。


『この香り、妖だね。それも、かなり強い妖力を持つ、妖だよ』

「妖なら、どこにいるか分かるよね?」

『土地神の従者。もしくは、神本人の可能性があるよ』

「この辺り、祠も神社もないけど?」

『ここ、四条でしょ? 祠はあるよ。分かりにくい場所だけど。ついてきて』


 白牙が歩きだし、どこに向かうのかは、白牙にしか分からない。とにかく、白牙についていく。

 雨が降りだしてきて、次第に本降りに変わっていった。折り畳みの傘を、ショルダーバッグに入れていたおかげで、濡れずに済む。


「華鈴。どこに行くの?」

「私も分からない。今、私の式神が、案内してくれてる」

「それで、あの人は人間なの? それとも妖怪?」

「妖みたい。土地神の従者か、神本人だって」

「そんなことある? 信じられない」

「会ってから、確かめないと、何も言えないかな」


 歩けど目的地に着かない。一体、どこに向かっているんだろう。河川敷を歩いているのは、私たちだけ。川は濁りきり、流れも早い。


「白牙。どこまで行くの?」

『もうすぐだよ。この橋の近く。ここ、降りるよ』

「紗奈。階段降りるって。足元気をつけて」

「この下にあるの?」


 階段を降り、橋の方へと更に進む。橋の橋脚付近に、背高草の茂みがあって、白牙はそこで立ち止まった。


『ここだよ』


 茂みをかき分け、進んでいく。すると、中央部には、コケに覆われた、古びた小さな祠が、鎮座していた。


「こんなところに、神様がいるの? 廃れた祠があるけど」

「いるみたいだよ。妖気を感じるから」

『今は留守中だね。出掛けてるのかな。カルマ様、よく出掛けるから』

「あのね、この祠に住んでいる神様なんだけど、今は留守中みたい」

「神様が留守とか、人間みたい。そっか。あの人には会えないか」


 待っていても、この雨じゃ風邪をひいてしまう。この近くなら、遊べる所が多いし、選択肢の幅は広い。


「どうする? 待ってても、いつ戻るか分かんないし、雨も凄いし。近くでお茶する?」

「それなら、ダーツやらない? 駅の近くに、ダーツが出来るお店があるの」

「やってみたい。紗奈はダーツ出来るの?」

「塾で同じ油彩画専攻の人と、時々やってる。スコアは全然だけどね」


 雨は止む気配を見せず、どしゃ降りのまま、降り続いている。白牙を紙人形に戻し、駅まで歩いていく。


「華鈴。学校は楽しい?」

「楽しいよ。ただ刺激は少ないけど」

「普通科ってそうだよね。私も、部活以外で刺激がないよ。ねぇ、明日も空いてる?」

「空いてるよ。何かあるの?」

新坂(にいさか)美術館で、クロード・モネ展をやるの。美術部の人も誘ってるんだけど、もうすぐテストだから、皆来れなくて」

「クロード・モネって、あの蓮の池の絵の?」

「そうそう。あの絵有名だよね」


 絵画かぁ。行ってみたいけど、美術館は、敷居が高いイメージ。せっかくのお誘いだし、行かないわけないよね。

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