第弐拾参話 漆
翌日。快晴とまではいかない、晴れ空の下。
「晩御飯までには帰って来るように。何かあったら、すぐに電話して下さい。では、解散!」
これから、グループで自由に散策をする。グループは、私と同室の楓、桃麻、楓の彼氏の大和の四人。
「清水寺、楽しみだね~!」
「楓は御朱印帳持ってきた?」
「当たり前でしょ。お寺と神社で一冊ずつ。華鈴は?」
「私も、二冊持ってきた。楽しみだね」
これから私たちは、電車とバスに乗り、予定している五ヶ所に行く。余裕を持たせた予定で、一番乗りで戻ってこれるだろう。
「あ、ヤバい。トイレ行って良い?」
「大和。お前、食い過ぎ!」
「ゴメン! ちょっと待ってて」
「はぁ。食べるのだけは、好きなんだよね。ごめんね、二人とも」
「大丈夫。余裕をもたせた予定だから、遅くなっても、間に合うよ」
私たちは旅館の一階で、大和がトイレから戻ってくるのを、待っている。
「楓、大和とよく付き合ったな」
「押しに負けたの。ホント、嫌になることばっかり。デートなんて、遅刻常習犯なんだから」
「大和の彼女は、大変そうだね」
かれこれ二十分くらい、大和はトイレに籠ってしまった。中々戻ってこないため、余裕がなくなって。
「大和まだかよ。俺らの観光、どこか諦める?」
「諦めるなら、伏見稲荷か金閣寺は? 八坂神社に行くし、諦めてもいいよ」
「伏見稲荷と金閣寺を諦めても、後悔はないよ」
「それにしても、まだかよ!」
大和が戻ってきたのは、約一時間後。スッキリしたみたいで、満面の笑みを浮かべている。
「ごーめーん! 中々腹痛が治らなくて」
「大和。金閣寺は無しになった。あと、伏見稲荷も無し」
「えー! なんで!? 予定は、余裕をもたせたんじゃないの?!」
「今、何時だと思う? 皆は出発して、多分、一ヶ所目を観光してる」
「あー、これはもう無理だね」
「どうしてくれるの!? たった三ヶ所だけじゃない!」
「すみません。行こ。清水寺からだよね?」
そんなこんなで、一時間遅れで出発した私たち。電車とバスの時間もズレてしまい、観光どころの話ではなかった。
「あれ? 八坂神社に行くバスは、こっちから?」
「大和。もう、ついてくるだけにしてくれ。時間がないから、お昼はコンビニだな」
「このままだと、そうなるね。楓、足大丈夫?」
「うん。靴擦れで血が出てるけど、なんとか」
お土産屋さんで、焼き八ッ橋と生八ッ橋を買って、桃麻とお揃いのストラップも購入。映画村で、たくさん見てまわるために、余裕なんてない。




