第弐拾弐話 漆
私たちの近くに、ツグノハらしき、般若の面の妖が。
「おーい、ツグノハ!」
私の声に気づいた様子で、その場で立ち尽くしている。私たちがツグノハに近づいて、話を聞くことに。
『華鈴殿。それに、響希殿まで。そちらのお二方は……。妙月殿ではありませんか!!』
『久しいな、ツグノハ。紀伊国以来だな』
『妙月様がいらっしゃるとは。皆様は、玖琉様をお見かけしましたか?』
「ううん。見てない。私たち、邪気の影響で、同じ場所を歩き続けたの」
『とある妖の話では、森の中にある、祠の近くに、いらっしゃるそうです』
「祠? そんなもの、近くには無かったぞ」
誰も祠を見ていない。祠の近くにいるなら、誰か一人でも、気づくはず。
『邪気が減りましたね。浄めの一波が、放たれたように感じましたが、どなたが?』
『それはボクだよ。ボクとシキ以外、誰も出来ないんだ』
『白牙殿でしたか。汝のおかげで、玖琉様を見つけることが、出来そうです』
ツグノハが加わり、一緒に玖琉様探し。
邪気が減ったおかげで、違う景色に変わっていく。
「祠なんて、どこにも無いぞ?」
『おかしいですね。祠があると、聞いたのですが』
「森の中にあるんだよね? この森、かなり深いし、広いよ。ピンポイントで見つけるのは、無理だよ」
『木の上から探してみるか。妙月とともに、木の上から探してみる。お前たちは、このまま探してくれ』
その時、私の頭に激痛が走った。何かで殴られたような、そんな痛み。
『華鈴殿!?』
「大丈夫。心配事いらない。おそらく、妖念感だ」
意識が遠退いて、視界は真っ暗。何も見えず、身体中の力が抜け、立っていられない。
***
今年も、来てくださったのですね。玖琉様。見ない内に、少しお痩せになられました?
この頃、何も食べておりませぬ。水縹様は、お変わりなく。それにしても、この村には、穢れが少ない。貴女が豊穣の神だからでしょう。人々も妖も、幸せそうだ。
私は、豊穣を願う事しか出来ません。雨乞いの力でもあれば良いのでしょうが、この祠で願い事をしている事しか出来ませんよ。
玖琉様が話しをしている。女性の声だろうか。何もなく、真っ暗な空間で、誰かと話をしている。
玖琉様は、木霊にお会いしたこと、ありますか?
木霊ですか。ええ。ありますよ。しかし、この地では見かけませんな。
大きなクスの木がありますの。そこにたくさんいますよ。そうです。会いに行きませんか? 可愛らしい姿なのです。
それは、見てみたいものです。ともに参りましょう。
玖琉様と誰かの会話は、ここで終わり。私の意識も、元に戻っていく。
「ううぅ……」
「大丈夫か? 華鈴」
「響希君。水縹様を探して。そこに、玖琉様も一緒にいるはず」
『水縹様とは? 玖琉様がご一緒とは?』
「豊穣を願う水縹様が、玖琉様と一緒に、木霊に会いに行くみたい。大きなクスの木に……」
『華鈴、立てるか? 無理そうなら、俺背負うぞ』
「ありがとう。キノカサ。お願いします」
キノカサに背負われ、大きなクスの木を、目指すことになった、私たち。そこに玖琉様がいると信じて。




