第弐拾弐話 陸
再び妙月様に憑依されて、いよいよ山野へ。何が待っているのかは、私にはまだ分からない。
それにしても。山野の方の異常、よく分かりましたね。視力良いんですか? 妙月様。
『何も感じぬか? 邪気とは違う気が、漂ってくるではないか』
『妙月。おそらく人間は、感じないだろう。穢れに対し、反応したことがない』
「妖気と邪気は、感じるんだけどな。穢れは感じない」
『そのうち、感じるようになるかもしれぬな。キノカサ、急ぐぞ。何やら様子がおかしい』
『山々を荒らすつもりだろうな。まさか、厄神か?』
厄神が、山野の地にいるんですか? そこに暮らす人たちは?
『おそらく、厄神によって、何かしらの病や災いに遭っているかもしれぬ』
そんな。妙月様なら、厄神を封じることが、出来ますよね。
『朱音寺妙月の力を以て、封じられぬ厄神など、おらぬわ。ハッハッハ』
なんだかんだ話をしていると、山野の地に着いた。木々が生い茂った、深い森の中。家々がどこにもなく、不思議な空間となっている。
妙月様の憑依を解き、自らの足で地面に降り立つ。
「家々がない。誰もいないなんて、あり得ない」
「穢れの中だからな。玖琉様を探そう」
『はぐれないようにな。何が待っているのか、分からないのだから』
『太陽は、まだ沈んではいないな。しかし暗すぎる。不知火でも使うか』
妙月様が、落ちていた木の棒を拾い、左手をかざすと、火が現れた。妙月様を先頭に、森の奥へと進んでいく。
遊歩道のような道も、獣道もなく。笹藪を通ってみたり、木々の狭い隙間を通ってみたり。だけど、何かがおかしい。
「ここ、さっきも通ったよね?」
「そうか? 笹と木しかないからな」
『そうだな。妙月、進むのをやめよう』
『何かおかしいな。何者もいない』
同じ場所を通っている。それに、玖琉様は、既にこの場所にいるはずなのに、姿が見えない。
『今、この空間に充ちているのは、邪気だ。華鈴。白牙を呼んでくれないか』
「白牙、召来」
ポケットの中から、紙人形を取り出し、白牙を呼び出す。地面に落ちた紙人形から煙がたち、その場に白牙が現れた。
『ふぁーあ。何か用?』
『白牙、この邪気を祓えるか?』
『やってみるけど、この量の邪気は、ボクの妖力を超えるよ』
『全て祓わなくて良い。祓えるだけで、やってくれるか?』
『分かった。じゃあ、皆離れて』
白牙が放つ光りは、妖も妖眼を持つ私たちの目にも、影響があるらしい。
距離をとり、光りを見ないように、目隠しをして、目を瞑る。そして、数十秒後。
『キノカサ。ちょっと』
『どうした?』
『向こうに、誰かいるみたい』
『何だと?』
白牙が邪気を祓ってくれたおかげで、私たち以外の誰かが、この近くにいるらしい。目を開け、私たちも確認する。
「あれって、ツグノハじゃない?」
『般若の面だね。行こう。玖琉様を見つけなきゃ!』




