表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅蓮荘奇譚 弐  作者: 天城なぎさ
第弐拾弐話 迷いの杜
34/95

第弐拾弐話 伍

『華鈴。元に戻るぞ。憑依していると、腹がへって仕方ない』


 紙人形を手に持つと、すーっと妙月様が離れていった。私の魂が体に戻ると、お腹が空いていることを、思いしらされる。


『人間に憑依していると、腹がへる。やはり妖の姿が一番だな』

「すみません。私、お昼食べてないので」

「コンビニがあるから、買いに行くか。キノカサと妙月様は、どうする?」

『俺たちは、食わなくても生きていける。妙月は何か食うか?』

『いや。妖に戻れば腹はへらぬ。それより、キノカサ。少し気になるのだが』


 何かを発見したらしい妙月様が、キノカサとともに、どこかへ行ってしまった。その間に、私と響希君はお昼を買いに、近くのコンビニへ。


「意外と残ってたな。カルボナーラが残っててくれて良かった」

「サンドウィッチとおにぎりは、無かったね。玉子サンド、食べたかった」

「お昼過ぎてたし、仕方ない」

「妙月様たち、どこに行ったんだろうね。丘の上に戻っててくれれば、良いけど」


 コンビニの外でお昼を食べて、丘の上に戻ってみると、キノカサも妙月様もいない。気になることがあったみたいだけど、どこに行ってしまったんだろう。


「連絡取れないしな」

「妖はスマホなんて、持ってないもんね。戻ってくるのを、気長に待つしかないよ」

「気長に。ねぇ」

「最近は、高坂先輩とデートしてるの?」


 何か話題を作らなければ。キノカサと妙月様を待つ時間が、永遠に感じられてしまう。


「美穂さん、バイトがあるから。会えるのなんて、月一か二くらい」

「専門学校生は、大変そうだね」

「でもまぁ、この前の休みに、カラオケ行ったけどな」


 どこに行っても、妖が歩いている。空を飛んでいる妖もいるし、斜面に寝転んでいる妖も。


『待たせたようだな』

「どこに行ってたんだ。急がないといけないんだ」

『仕方ないだろ。気になるだの、何だのと』

「その妙月様はどこだ?」

『饅頭売りの妖がいてな。そいつから、饅頭を買っている』

「ねぇ、キノカサ。妖はお金持ってるの?」

『妖には妖の通貨がある。妙月も多少は持っている』


 そんな話をしていると、風呂敷の包みを持って、妙月様が戻ってきた。


『すまぬな。ちと、気になることがあったもので』

「お饅頭を買いに?」

『饅頭は、ついでだ。ここから見える、山々の先が、山野の地。その山野の地に、良からぬモノが見えた。黒い(もや)のようだ』

「まさか、穢れが妖になった?」

『おそらく。玖琉はあの中だろう。あれ程になってしまっては、祓えぬぞ』


 私たちには見えない、その光景。山と山の間に、黒い靄が溜まっているらしい。


「山野まで、あとどれくらい?」

『小一時間ってとこだな。かなり距離がある』

「妖と戦うことに、なるのか?」

『分からない。行かなければ、何も分からない』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ