第弐拾弐話 参
「響希君、あそこに倒れてるの、妖だよね?」
「何処だ?」
「ほら、向こうの自販機の側」
「あ、あそこか。妖にしては、妖気がないように感じる」
「行ってみよう」
学校付近まで戻ってきた私たちは、自販機の側で倒れている、妖か人間を発見した。
妖だとしても、人間だとしても、どちらも大問題。妖だったら、穢れによるものかもしれないし、人間であれば、救急車を呼ぶ必要がある。
信号が青であることを確認して、すぐさま自販機の所まで、走っていく。
人間サイズの妖か、それとも……。
「妖だな。ここに来てやっと妖気を感じる」
「どうしよう。穢れかな」
「だとしたら、かなり危ない。白牙、すぐにシキを呼んでくれ」
『分かった。ここにいてよ』
ずっと呼び出したままの白牙に、シキを呼んできてもらう。その間、倒れたままの妖は、ピクリとも動かない。
「妖気が弱くなっていってる」
「それにしても、髪の長い妖だな」
「そうだよね。綺麗な黒髪……」
見た感じ女妖だろうか。だけど、見た目で決めつけるのは、よくない。
『ううぅ』
「あ、気がついた?」
『人間……?』
「そうだよ」
『ここに近づかぬ方が良い。穢れが、充ちている』
「玖琉様が祓ってくれるから、安心して」
声を聞くと、女妖だったよう。穢れによって倒れていたらしい。
『玖琉様が危ない。この近くに、シキ殿が居られるはず。今すぐ、会いに行かねば』
「シキなら、すぐに来るよ」
「あまり喋らない方が良い」
『しかし、はぁ。はぁ。玖琉様がっ』
シキが駆けつけてくれた時には、女妖は意識を失ってしまっていた。
『玖琉殿が危ない。ですか』
「何かあったのかな。ツグノハは、危機を知らないんだよ」
『今から行ってみましょうか。山野の地にいるんですよね?』
「俺たちは行けない。人間の事情がある」
『では、キノカサから乗せて貰いましょうか』
「でも、キノカサは出掛けてるでしょ?」
『帰ってきていますよ。妙月殿も一緒ですし』
女妖を紅蓮荘まで運んで、木の間のベッドに寝かせる。
キノカサが紅蓮荘の中にいたので、話をして。
『これから山野まで行くんだってな』
「キノカサ、俺たちを山野まで乗せてくれないか?」
『乗せるってより、連れてってやるよ。妙月もいることだ。俺が響希を運んで、妙月が華鈴に憑依すれば良い』
「あれは、ちょっと……」
『何か不満でもあるのか?』
「何て言うか。憑依されるのが、苦手で」
『妙月だから、何かあっても大丈夫だろ』
『長話はそのくらいで。玖琉殿の身の安全が、最優先です』
妙月様が二階から降りてきた所で、すぐに山野まで送ってもらう。と、言っても、妙月様が私の体に憑依することになるけれど。




