第弐拾弐話 弐
近くにいた妖の話を聞いていくと、岡ノ原の地で見かけたという。
「何か分かったか?」
「岡ノ原の地で見かけたって。何体もの妖たちが、そう言ってる」
『岡ノ原の地に、玖琉様が居られるのですね』
「おそらく。今からでも行こう」
『待って。華鈴。ボクが聞いた話は、樽沼の地で見かけたって』
「岡ノ原と樽沼じゃ、反対方向か」
『探すのをやめて、聞き込もう。確かな情報が欲しいよ』
この辺りの妖たちにもう少し聞き込んだとして、玖琉様にたどり着けるだろうか。
「まだ時間はある。これから岡ノ原に行って、そこで聞き込むか」
『岡ノ原は広いよ。ボクたちだけで聞き込んだら、日が暮れちゃう』
「ツグノハは、どうする?」
『アタシは、玖琉様を見つけ出すまで、休む時間は惜しむ覚悟』
そうと決まれば、話は早い。これから岡ノ原に行って、聞き込みながら、探せば良い。
鷹の鳴き声が、何処からか聞こえてきて、空を見上げると、鷹の妖、ナラメがすぐ側を滑空していた。
『ここにいたのか。玖琉様が見つかったぞ!』
「ナラメ! 玖琉様は何処にいた?!」
『山野の地にいる!』
山野は、数年前に岡ノ原と合併した、小さな村。山々に囲まれ、冬は雪深い。どうしよう。電車とバスを乗り継いで行くしか、方法がない。
「今から電車に乗るとして、電車が一時間後にしか来ないか」
「電車に乗ったとしても、バスがないよ」
「俺たちは、行けそうにないな」
「ツグノハだけでも、山野に行けないかな?」
「どうやって?」
「うーん。空を飛ぶとか?」
響希君とともに、滑空しているナラメを見やる。視線に気づいたのか、ナラメがこちらへ来てくれた。
『何だ?』
「この妖を乗せて、山野まで飛べるか?」
『ふーむ。無理だな。大きすぎる。人間と大きさが同じ妖など、乗せて飛べるかっ』
「ダメか。そうか。飛べる妖なんて、知り合いにいないしな」
『響希殿。アタシのことはご心配なく。歩いて、山野の地まで』
「だとしても、距離がありすぎるよ。それに、山道だし」
『旅には慣れておりますので。ありがとうございました』
踵を返し、山野まで歩いて行ってしまった、ツグノハ。旅に慣れているとは言え、距離がありすぎる。
「一件落着だな。おそらく」
「そうだと良いね。紅蓮荘に戻ろう」
歩いて信濃川流域へやって来た。普段よりたくさん歩いたせいか、足が痛い。
「そういや、誕生日おめでとう。華鈴」
「あ、ありがとう。十七歳になりました」
「もう、二年生だもんな」
「だね。もう二年生だよ」
土手を妖たちが歩いている。小さな妖や人間サイズの妖も。皆、玖琉様が来ていることを、噂して。




