表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅蓮荘奇譚 弐  作者: 天城なぎさ
第弐拾壱話 鬼(き)になる妖
29/95

第弐拾壱話 結

 目を開けると、見慣れた天井が視界に拡がる。心配そうに、響希君と白牙が私の顔を覗いていた。

 そっか。私、倒れて……。


「華鈴!! 大丈夫か? もしかして、妖念感(ようねんかん)か?」

「うん。般若の妖の名前が分かったよ」

『急に倒れたから、びっくりしたよ。お茶飲む?』

「ありがとう。白牙」


 床に倒れたから、肩と頭が痛い。立ち上がると、響希君が椅子を差し出してくれた。


「雪村さんは、妖念感があるんだね。珍しい」

「そうなんです。いつもは、関わった妖の念を感じているのに、今は、関わっていない妖の念を、感じてしまって」

「妖念感は、恐怖心や疑念からも、感じることがあるらしい。気をつけた方が良い」

「忠告、ありがとうございます。橘先生はどうですか?」

「まだ立てそうにないし、上体も起こせない。今日は部活を休みにして正解だったよ」

「ゆっくり休んでください。キノカサは出掛けているみたいなので」


昨晩から、キノカサは出掛けているらしいし、橘先生にはゆっくり休んでもらえるはず。


『ごめんください』


玄関から、聞き覚えのあるテノールボイスが聞こえた。もしかしたら、ツグノハという名の妖かもしれない。



「依頼人か」

「響希君はここにいて。私が対応する。白牙もここにいてね」


玄関に向かうと、そこには般若の面を着けた妖が、錫杖(しゃくじょう)を手に立っていた。


『霞ヶ森の紅蓮荘とは、ここで間違いありませぬか?』

「はい。紅蓮荘とはここです」

『妖の住む森だと聞きましたが、汝は人間。汝が頼みを聞いてくださるのですか?』

「ええ。お聞きしますよ」


水の間は使っているから、空いている木の間を使おう。

ドアを開け、中へ促して。円卓のテーブルに向かい合って座る。


「ご依頼をお聞きします」

『アタシの師匠。清浄の妖、玖琉様を探して頂きたいのです』

「もしかして、あなたの名前は、ツグノハさん?」

『何故、アタシの名前を? 汝とは今、会ったばかりだというのに』

「私には、妖念感があります。昨晩、あなたを見かけました。あなたが発していた念を、ずっと感じていましたよ」


椅子に慣れていないからか、ぎこちない様子で、座るツグノハ。


『妖念感のある人間には、かつて一度だけ、会ったことがあります』

「玖琉様は、清浄の妖だそうですね。はぐれたんですか?」

『卯月の始めに、共に越後国へ。しばらくは共にいたのですが、玖琉様がお姿を消してしまわれた』

「それは、いつ頃ですか?」

『十六夜の月が、空で輝いていた頃。信濃国から流れる川で、浄めを行ったその日に。一刻も早く見つけて頂きたいのです。早く浄めなければ、妖だけではなく、人間にも影響が出てくるのです』


十六夜の月が出ていた日を調べて、信濃川の流域で妖探し。ゴールデンウィーク期間中で良かった。


「信濃川流域全てか。ゴールデンウィーク中だからな。簡単だろ」

「響希君!?」

『ボクもいるよ』


水の間にいたはずの、響希君と白牙が、いつの間にか木の間で聞いていたらしい。


『どうか。玖琉様を、見つけ出して下さいませ。この国の穢れを祓えるのは、玖琉様しかいないのですから』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ