第弐拾壱話 弐
――玖琉様は何処。玖琉様は何処――
誰? 貴方は誰なの?
知らない声が、暗闇の中から聞こえてきた。
――玖琉様は何処におるのだ。玖琉様がおらぬ今、辺りは穢れで、充ちておる。浄めねば、多くの妖が傷ついてしまう――
尚も続く、謎の声。声の主は、玖琉様と呼ばれる誰かを探して、さ迷っているらしい。それに、穢れで妖が傷つく? どういうことだろう。
『華鈴?! 大丈夫?』
白牙の声で目を覚ましたら、心配そうに私の顔を覗いている。
「白牙」
『華鈴、魘されてた。大丈夫?』
「うん。平気。大丈夫だよ」
『それなら良かった。びっくりしたよ』
「ごめんね。まだ暗いし、寝よっか」
再び目を閉じると、謎の声は聞こえなかった。
何だったんだろう。穢れで妖が傷つくなんて事、あるのかな。
――玖琉様、何処に居られるのです――
え? すぐ近くで、声が聞こえた。目を開け、辺りを見渡しても、誰もいない。時計は深夜三時になる頃。ちょうど、丑三つ時。
『華鈴、どうしたの?』
「誰かが、私を呼んでる。妖かな」
『だとしたら、ボクも気づくよ。悪い夢でも見てた?』
「見てない。だけど、誰かを探してる。玖琉様って、誰?」
『玖琉様? それって、清浄の妖、玖琉様のこと?』
「穢れで妖が傷つくって、浄めなきゃ、妖が傷つくって」
『落ち着いて、華鈴。深呼吸しよう』
白牙に促されるまま、深呼吸を数回。落ち着くことが出来て、白牙と一緒に考えられる。冷静にならなきゃ。
『あのね。清浄の妖っていうのは、この現世に蔓延る穢れを、浄めてくれる妖なんだよ。平安の世からずっと、この国中を旅してね』
「その妖が、新潟県でいなくなった。そういうことに、なるよね」
『可能性はあるね。この事を、シキに伝えなきゃいけない。もしかしたら、傷ついている妖は、おそらく穢れによるものだと思うから』
夜明けまでまだ時間はある。だけど、玖琉様を探している妖が気になるし、玖琉様の行方も気になってしまう。そして、もう一つ。
「あの般若も気になるね。関係あるのかな」
『気にしすぎだよ。大丈夫。シキなら、なんとかしてくれる。ボクたちは、そのお手伝いをしよう』
「そうだよね。気にしすぎだよね。まだ三時だし、寝よう」
明日、いや。今日また紅蓮荘に行く予定だし、何も心配する必要はない。なのに、気になってしまう。どうしても、あの般若が頭から離れてくれない。
――玖琉様。何処に居られるのです。穢れが、邪な者に変わってしまっておりますよ。せめてもう一度、お姿をお見せください――




