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紅蓮荘奇譚 弐  作者: 天城なぎさ
第弐拾話 罪深き者
22/95

第弐拾話 結

 霞ヶ森の妖たちは、妙月様に担がれている橘先生に、興味津々。


『半妖の気配だ。これから喰うつもりか?』

等々目(とどろめ)か。お前はいつも食い気があるな」

『響希には分かるまい。人間を喰うよりも、半妖の方が美味なのだよ』

「喰ったことあるのかよ」

『ない。人間と半妖を喰うほど、落ちぶれてなどない』


 特に、等々目という名の妖が。等々目は私が初めて霞ヶ森に来た時にも、食い気があった。私は、姿を見たことがない妖で、いつも声しか聞いたことがない。


「等々目って、どんな姿なの?」

「僕は見たことない。声は聞いてるけど」

「俺もないな。話すことはあるけど」

『等々目を見たことないのか? 見たら、腰を抜かすぞ』

「キノカサは見たことあるの? どんな姿?」

『会ってからのお楽しみだな』


 そうこう言ってる間に、紅蓮荘へ到着。橘先生を水の間に運び、ベッドに寝かせる。ずっと気を失っていて、深い眠りについているよう。


「僕、ちょっと出てくるね」

「何か用か?」

「父が帰ってきたらしい。連絡きてた」


 (つかさ)君のお父さんは、海外出張が多い人らしい。橘先生を運んですぐに、紅蓮荘から出ていってしまった。

 キノカサは水の間に入ってくることなく、ヒサギと妙月様は、運んだ後すぐに台所へ。

 今、水の間にいるのは、私と響希君だけ。


(つかさ)君のお父さんって、海外出張があるほどの、エリートなの?」

「エリートどころの話で、済む人じゃない。華鈴も知ってるような、人だ」

「花里さんは、(つかさ)君しか知らないよ?」

「あー、じゃあ。ファッションデザイナーって職業は、知ってるよな。(つかさ)の父親は、世界的デザイナーの、コージ・ハナザトなんだ」


 コージ・ハナザト。世界的に有名な、ファッションデザイナー。主にメンズファッションのデザインをしているけれど、数年前からレディースファッションのデザインも、行っている人。


(つかさ)君って、あのコージ・ハナザトの息子ってこと?」

「そう。基本的に海外で暮らしてるから、日本にはあまり帰ってこない」

「だから(つかさ)君は、一人暮らしなんだね」

「本人は、その方が良いらしい。好き勝手出来るからな」


 時々、うぅ。と、橘先生から苦しそうな声が聞こえる。姿も人間だったり、妖だったり。

 シキにはまだ伝えてなかったけれど、台所にいるヒサギや妙月様が伝えてくれているだろう。


『この方が、半妖の?』


 水の間にシキが入ってきた。姿は人間で、手には深めの透明な器を、二つ。


『余った花豆のあんこで、ぜんざいを作りました。甘さは控えてありますが』

「ありがとう。シキ」

「俺はいい。おはぎ食べ過ぎた。シキ、橘先生の分にしてもいいか?」

『構いませんよ。(つかさ)がいないようですが、どちらへ?』

「家に帰った。父親が帰ってきたらしい」

『そうでしたか。ところで、この半妖の方は、制裁を受けていらっしゃる。黒羽の妖ですか』

「そうだよ。私たちの、先生でもあるの」


 見ただけで分かるなんて、シキって凄い。流石、霞ヶ森の森主(もりおさ)


「明日も部活だよな。夜のうちに、目覚めてくれれば良いけど」

『この制裁であれば、もうすぐ終わりますよ。心配しなくとも、直に目覚めます』

「シキって、何でも分かるんだね」

『森主を長年、務めていますからね。知らぬことがあっては、務まりません』


 シキが作ってくれたぜんざいは、ほんのり甘くて、白玉も、モチモチしていて美味しい。

 小豆のぜんざいも美味しいけど、花豆のぜんざいも負けず劣らず。橘先生にも、このぜんざいを、早く食べて欲しい。

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