第弐拾話 肆
私たちだけでは、長かった一時間半は、シキとキノカサが来てくれたおかげで、短く感じられた。そして私は、重要な事に、気づいてしまったのは、言うまでもない。
「あのー。響希君」
「どうした? 華鈴の分は残しとくぞ?」
「そうじゃなくてね。これから橘先生に会いに、学校に行くよね?」
「それがどうした? 在校生だから、自由だろ」
「自由だよ。そうなんだけど、今日は休日で、私たちは私服だよね」
「休みなんだから、私服だろ。何も、不審な事は何もない」
響希君と僚君は、シキお手製の紫花豆おはぎを食べ進め、大皿いっぱいにあった、おはぎは消えていく。
「ちょっとまて。華鈴、俺たちは在校生だよな」
「そうだよ。響希君、気づいた?」
「気づいた。そう言うことか」
「どうする? このままだと、学校には入れないよ」
話に入って来なかった僚君が、お茶を飲んで一息つくと、分からないといった表情で、私たちを見ている。
「僕たち、在校生なんだから、入れるでしょ? 二人とも、何言ってんの?」
「いやいや。入れるんだ。確かに、入れる。ただ、ここで問題が発生してる」
「何? 何もないでしょ?」
僚君は気づいていない。今日は休日。私たちは私服。お願い。僚君、気づいて。
「今日は休日。学校の玄関は開いている。僕たちは在校生だから、中に入れる」
「そう、入れるんだ。ただ?」
「あ、私服じゃん! 制服じゃないと、入ったら怒られるやつじゃん!」
良かった。気づいてくれた。そうなると、着替えて行くしかない。
「着替えてから学校に集合すると、面倒だな」
「呼び出す? 橘先生の連絡先、僕まだ入れてないけど」
「私のスマホ、バッテリー切れたから、使えないよ。響希君は、入ってる?」
「入ってる。呼ぶしか方法がないか。ついでに、謝罪も出来るしな」
部活は終わった頃だから、電話に出てくれるだろう。
響希君が橘先生を呼んでくれている間、私と僚君は、何もする事がない。
「ダメだ。出ない」
「呼び出し音はしてたんだよね? それなら、大丈夫だと思うよ」
「そうだよ、響希。最後の一個、食べても良い?」
「折り返してくれれば、後が早いんだけどな」
さて、どうする。橘先生と話せないのなら、松坂さんに会いに行くしか、方法がないような。
「松坂さんに会いに行く?」
「家、知らないだろ。それに、松坂が知っているなら、既に封じているはず」
「待とうよ。橘先生から、折り返してくるかもしれないしさ」
外から入ってくる光が、次第に少なくなってきた。雨が降ってきそうな空模様。
そして、ポツポツと降ってきた雨が、本降りに変わっていった。




