記憶喪失
「何で学校に上級悪魔がいるの?」
上級悪魔というのはかなり危険な存在であり。少なくとも学校にそんなポンポン出て来るような存在ではない。にもかかわらず現れたことに対して白木から驚きと軽い恐怖の声が上がる。
「皆様大丈夫ですか?今助けますね。神よ・敬愛すべき神よ・悪魔を閉じ込める結界をはりたまえ・封魔結界」
封魔結界、それは魔を封印する結界。術者の力量に非常に大きく左右される結界。上級悪魔を閉じ込める結界となればかなりの力量が要求される。
「封魔結界?まさかマリアンヌさんは聖職者ですか?それも司祭クラス以上の」
丁度昨日、自分にはもっと知識が必要だと思い正教会について調べていた白木はそう結論を出し驚きの声を出す。
「はい。そうです。私は正教会所属の聖職者ですよ。そして今私に与えられている役職は見習い聖女です」
見習い聖女、それは聖女になれる可能性を持った者に与えられる称号。そして聖女になれば正教会内では絶対的な権力を手にすることが出来る。つまり簡単に言えば見習い聖女とはかなり凄いのだ。
「見習い聖女、それってかなり上の地位じゃないですか」
「はい。そうですね。あ、それよりも上級悪魔を倒すの手伝ってください、中級陰陽師の白木さん」
「何故それを知ってるの、いや、違う。私の事を調べたのね」
「いいえ調べてはいません。見たら分かりますよ。それよりも早く上級悪魔を倒さなくて大丈夫なんですか?私の結界もそんなに長くは持ちませんよ」
「そうだね。勇気君上級悪魔を倒すの手伝って」
「あ。ああ。分かった。えっと俺は何をすればいいのだ。というか俺は何だ。俺は何でこんな所にいる。わあああああ。何だこの化け物は」
勇気がいきなり頭を抱えだし、喚きだす。
「まさか、あの上級悪魔、記憶戻しの能力を持ってるってこと?勇気君がそれにかかって、悪魔というの存在を知る前に記憶を戻されてしまっているわ。やられたわ」
「白木さん、時間稼げますか。10分いえ5分いただければ私の祈りで勇気様の記憶を元に戻せます」
「5分か、いいわ。頑張って稼いで見せるわ」
「ぐがああああああああああああああああ」
上級悪魔が発狂しながら襲いかかる。
「破道・霊術式・1式・霊弾」
「ぐが?ぐがぐが?お前、邪魔、殺す」
「やれるものならやってみなさい。滅道・霊術式・7式・拘束滅」
「ささささささ。痛い。痛い。あああああ」
パキン
「壊せた。壊せた。さあ、次は、お前を、壊す」
上級悪魔の目からビームが飛び出る。
「守護道・霊術式・1式・盾」
パリン
慌てて防御しようと盾を張るも、簡単に割られてしまう。そして上級悪魔の出したビームは一切減速せずに白木に向かって伸びた。
それを猫子が手からビームを出し上級悪魔のビームに当てて消滅させる。
「猫子さん。今のは一体?」
「詳しくは説明できないけど、貴方に死なれたら目覚めが悪いの。だから手助けをした。勘違いしないでよね」
「そう、ありがとね。助かったわ。一応礼を言っておくわ」
「どうも、ほら。それよりも上級悪魔から目を放して大丈夫」
グシャ
上級悪魔の腕が白木に当たる。
慌ててガードしたが左腕が折れる。
「痛い。でもこの程度の怪我なら大丈夫だ。守護道・霊術式・7式・損傷回復」
「なるほど。損傷部分を回復させたのね。流石だね」
「まあね。これでも陰陽師の端くれこれくらいは出来るわよ。滅道・霊術式・1式・霊滅弾」
上級悪魔の腕に当たり腕が滅せられる、ようは溶けるようにして消えた。
「あああああ。あああああ」
上級悪魔がそう耳のつんざくような唸り声を上げると腕が瞬時に再生する。
「そんな簡単の腕を再生するなんて、やっぱり私には」
「何諦めてるのよ、諦めなければまだ希望はあるでしょうが」
「猫子さん。猫子さんって思ったよりも優しい人なんですね」
「ちょっと、急に何よ。それじゃあ、今までの私は優しい人じゃないって言い方じゃない」
「ハハハ。正直に言えば今までは勇気を狙う泥棒猫だと思ってました」
「泥棒猫ってアンタ。でもアレだね。白木さんって思った以上に話しやすい人だったね。今までは高嶺の花ってイメージがあったよ」
「白木さんじゃなくて。香でいいですよ、猫子さん」
「じゃあ。こっちも猫子さんじゃなくて、普通に猫子でいいよ」
「ンフフ」
「ハハハ」
「何か思った以上に仲良くなれそうですね私達」
「そうかもね。さてと、じゃあ香。今から起きることは勇気には秘密にして欲しいの」
「どうしたんですか急に、まあいいですけど」
バシュ
上級悪魔の頭が弾け飛んだ。
「今のは一体」
「あ。実は私これでも結構強いんです。今のは私の能力で上級悪魔の頭を内部から爆発させて倒しました。まあ、香にも分かりやすく言うならば破道・霊術式・51式・内部強制破壊の無詠唱術式といった所かな?厳密には違うけど」
「え、待ってということは50番台の破道と同レベルの威力を誇る術を無詠唱で行使したってこと。それって上級陰陽師の中でも上位のレベルじゃ・・・」
「まあ、そうだね。今の私は普通の上級陰陽師よりかは圧倒的に強いですよ、まあ私自身が陰陽師ではないけどね」
「そうか。凄いね。私も負けてられないな。もっともっと強くなるぞ」
「そうですね。でも香が強くなってる間に私はもっともっと強くなりますよ」
「そう。じゃあ私はそれよりも、もっともっと強くなってみせるよ」
「何を。じゃあ私は更にもっともっともっともっと強くなります」
「「ハハハ」」
「何だろう。私達出会い方が違ったらもっと仲良くなれたかもね」
「何を言ってるんですか。香これから仲良くしていきましょう。同じ人を好きになった者同士」
「そうだね。フフ」
「ハハハ」
「猫子に白木、どうしたんだ?二人で仲良さそうに笑って」
マリアンヌの治療によって記憶が戻った勇気が二人が仲睦まじく笑ってる様子を見てそう声をあげる。
「「内緒」」
二人が今日一番の笑顔で笑った。
「お。おう」
「というか私ずっと蚊帳の外でしたよ。頑張って勇気様の治療をしたのに」
「治療?あれ、もしかして俺何か怪我でもしたのか?」
「え?勇気様、もしかして何があったのか覚えてないのですか?」
「逆になにかあったのか?」
「何も無かったですよ。勇気さん」
猫子がいきなりそんな事を言い出す。そして言いながら二人に念話を使いこう伝える。
【今回の上級悪魔は完全に勇気さんを狙ったものでした。自分のせいで上級悪魔が出現して皆を危険に晒したとなれば、きっと心優しい勇気さんは責任を感じ、傷付いてしまいます。ですので。ここは一つ女同士の秘密ということにしませんか?】
白木はそれを聞き、軽く頷いて見せる。
マリアンヌも、少し不服に思いつつも。言ってる事には納得した為頷く。
「そうなのか?」
猫子の何もなかったという言葉に疑問を抱き。そう問いただす勇気。
「はい。何もありませんでした。強いていうなら、勇気様が私に学校を案内している途中盛大にこけて頭を打って気絶したので。私が聖職者の力を使って直したくらいです」
「そうなのか。て、待ってくれ、聖職者の力ってマリアンヌも何か特別な力の持ち主なのか」
「はい。そうですよ」
「そうですよって。まあ、そうか、それは何というかビックリだ。でも俺の傷を癒してくれたんだな。それは本当にありがとう」
「どういたしまして。さあ、勇気様学校案内の続きをお願いします」
「ああ。そうだね。じゃあ案内するわ」
「私も案内するね」「あ。私も」
「じゃあ。4人で行こうか」
「「「はい」」」
そうして勇気は白木、猫子と共に軽くイチャつきながらマリアンヌに対して学校を案内していったのであった。
――――――――――――――――――
補足説明
白木は猫子の事を陰陽師ではない力を行使する、超能力者もしくは魔術師のような存在だと誤解しています。実際はガッツリの陰陽師です。まあ、主人公もとい怠惰を司る陰晴に悪魔の力少々貰ってるから完璧な陰陽師といえるかどうかは微妙なラインですか。
マリアンヌは猫子の事を普通に陰陽師の力も使えるけど。何か他にも力の使える存在だと思っています。理由というか、まあ後々明らかにしていくのですが。マリアンヌは右目に聖眼・バローナという見ただけどその人の能力や才能が大まかに分かるという特別な眼を持っているからです。更に追加でその人の行っている言葉がある程度嘘かどうかも分かる能力も持っています。ただある程度なので真実の中に嘘を入れられて話をされたりすると、真実と認識されてしまいます。流石に100%の嘘審判は強すぎます。
話を戻しますが。マリアンヌは聖眼・バローナによって猫子に陰陽師の力と悪魔に似てるけどよく分からない力があることを理解しています。
因みによく分からない力という理由は主人公こと陰晴が聖力と霊力と悪魔力という3つの力を使って混沌という新しい属性を生み出しており。その混沌が猫子の体にも少々含まれているからです。
後。今回普通に猫子が力を持ってるっての知った白木とマリアンヌが特に違和感なく受け入れた理由はずばり主人公の張ったご都合主義結界によるものが非常に大きいです。
ただし。ご都合主義結界は学校にしか張っていないので、街中で余りにもおかしなことが起こると、揉めます。超絶揉めます。簡単に揉めます。
次回・主人公無双お楽しみに。
よろしければブックマーク・ポイントをお願いします・
作者が非常に喜びます。
イエーイ。イエーイ。イエーイ。