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ロボと日記と終末世界  作者: 空戦型


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十月の日記 一~七日

 十月一日 



 九月と言うと夏の印象だが、十月は本格的に秋になってきた印象を受ける。

 終末前はスポーツの秋、読書の秋などと言っていたが、やはり食欲の秋は今も昔も欠かせない。というか、冬を乗り切れないと本気で飢え死になので今のうちに食料を確保しないとやばい。


 最初の一年はまだ荒らされていない食料や保存食が多くあったが、二年目の冬はかなり空腹の時間が多かった。食料がいつまでも町で確保出来るとは限らない以上、これからの未来のことを思うと冬の乗り切り方を真面目に考えなければならない。


 昔の冬と言えば言わずもがな保存食や日持ちのする野菜類が物を言う。

 ナッツ、ドライフルーツ、あとは保存環境の良い場所での野菜の保存などか。

 冷蔵庫など使えないので過去の人々がどれだけ大変だったか、そして文明が高度化してから何故人口爆発が起きたのかがはっきり分かる気がする。


 この世界で一番苦しいのが、ターミネイターや生存者同士の争いのせいでのんびり農耕が出来ない事だ。シャングリアの脱走者たちの村のように同じ気持ちを持ったコミューンを形成できればまだいいが、風来坊の俺はどうしても踏みとどまってしまう。

 恐らく今、食料を安定して手に入れられるほどの勢力はシャングリアとヤエヤマ解放戦線、そして詳細不明のソゾロギのみ。すなわち三年度の冬で俺のようなフリーで粘ってきた生き残りの殆どがそうした大きな組織の庇護下に入ることを決意するだろう。


 これまでそれぞれの組織は生活の安定と勢力拡大に腐心していた筈だ。二つの勢力の戦闘が増えだしたのは恐らくここ最近、互いに勢力として安定してきてからのことだと俺は推測している。でないと二勢力の存在をここ最近になるまで知らなかったことがおかしく思えるからだ。


 冬を越した後、二つの勢力の戦いは激化する。

 そんな気がする。


 ともあれ、なんとか気候がマシな南を目指す。

 あと、雪の積もりやすい日本海側じゃなくて太平洋側を行きたい。

 行ければの話だが。


 残存食料、六日。

 水、八日(簡易浄水装置あり)。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブ、C1B1所有。




 十月二日



 山奥にぽつんとある小さな民家を発見。

 さっそく漁るが、ある意味食料よりも有り難い井戸があった。

 水質も問題なく、これで暫く水に困らない。


 他、近隣の山に野生化したしいたけやら野菜やらがあったのでいただく。

 ここの住民は割と自給自足に近い生活を送っていたのだろう。

 流石に地下に備蓄していたらしい野菜などは多くがダメになっていたけど。


 それにしても、いいものを見つけてしまった。

 固形のカレールーだ。

 レトルトではない作りたてのカレーが食べたい、と腹の虫が唸りを上げた。

 米も野菜も手に入れたし、あとは肉があればカレーが作れる。

 魚を代用するのが妥当だろうが、出来ればビーフジャーキーなんかがあると水で戻せばビーフカレーになる。


 それはさておき、あまり南ではないがここを冬を越す拠点にするのは悪くない。

 居座りとまではいかずとも、この辺りは食料を貯めるのに非常に良い。

 暫くここで食料集めに努めよう。


 残存食料、八日。

 水、二〇日(簡易浄水装置あり)。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブ、C1B1所有。




 十月三日



 ところで、量子格納すれば食品は劣化しないのに何故保存食を求めるのか不思議に思ったことはないだろうか、などと誰かに語りかける書き方をしてみる。


 終末世界に残っているものの多くは保存性の高い食料と、自然に育まれた食料だ。

 だから自然と手に入れるものが保存食ばかりになるのは分かる。

 しかし、手に入れる食料を保存食にする意味は?


 個人的な理由としては、生ものは調理に時間がかかること。

 シンプルだがとても重要なことだ。

 何せいつ誰に襲われるか分からない今の世界では、料理をするのはそれそのものが一定のリスクを伴う。そのまんま囓れる方が都合が良い。


 生が嫌ならまとめて料理した食材を小分けにして保存すれば良いと思うかも知れないが、都合の良い入れ物が簡単に手に入らないし、量子格納は『熱』は忠実に保存されないので出した時に暖めないと美味しくない。こんな世界でサバイバルしてたら、どうせなら少しでも美味しいものが食べたいと思うのは人情だろう。


 他にも、生のフルーツとドライフルーツなら水分の抜けたドライフルーツの方が多く格納出来るなど、保存食の方が容量の節約になるというメリットもある。これが意外とバカにならず、この生活を始めたばかりの頃はガイストの容量に悩まされたものだ。


 あと、最後に。


 何らかの理由でガイストが破壊されて量子格納していたアイテムがランダムに吐き出された際、生ものより保存食の方が回収が早くて楽。これはガチなので絶対にこの日記を読む人は覚えておいて欲しい。


 残存食料、九日。

 水、二〇日(簡易浄水装置あり)。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブ、C1B1所有。




 十月四日



 柑橘類のなる木を発見。

 小さいみかんみたいなものかと思ってかぶりついたらクソほど酸っぱかった。

 図鑑によるとあれはすだちと言うらしい。

 食べた瞬間一瞬いけるかなと思った自分に腹が立つ。

 なんかおかしいなとは思ったんだけどね。

 人間ってバカだよね。


 残存食料、十日。

 水、二〇日(簡易浄水装置あり)。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブ、C1B1所有。




 十月五日


 昨日の日記の自分が馬鹿すぎて笑ってしまった。

 変なツボに入ってひとしきり笑ったが、悪くない。

 笑うのは健康にいいって言うし、俺もそう思う。


 しかし、ここ数日食料を集めていて思ったが、ここは拠点にするにはやはりだだっ広すぎると感じる。冬を越す拠点とするという考えは時期尚早だった。幸い食料はそれなりに集まったし、いい加減にこの場を後にすることを考えた方が良さそうだ。

 決めた。明日にはここを起つ。


 残存食料、十二日。

 水、二〇日(簡易浄水装置あり)。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブ、C1B1所有。

 



 十月六日



 かなり久々にイミテイターの遺体を発見。

 キーグローブも衣服も装備も一通り回収されているところを見るに、ヤエヤマの活動区域なのではないかと思えて警戒心が高まる。彼らもイミテイターから貰うものを貰っているなと今更ながら当然のことに納得する。


 警戒して人目を避けるルートを通っていると、回収を逃れたイミテイターの遺体を発見。

 キーグローブは破壊されていたが、逆に服が無事だったので回収して着てみる。

 実は身体がちょっと成長して前の服がややぴっちりになっていたのだ。

 今回のものはサイズが丁度良いし、デザインも悪くない。


 しかし、ターミネイターはある程度行動パターンや習性が分かった部分もあるが、イミテイターは徹頭徹尾謎だらけだ。痕跡からしてターミネイターと戦闘していることだけは確かなのだが何故肉眼でそれが見えないのだろう?


 回収され尽くして何もない町を後にし、なにもない道を延々と進んだ。

 

 残存食料、十一日。

 水、十九日(簡易浄水装置あり)。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブ、C1B1所有。




 十月七日



 ヤエヤマ解放戦線は、なんてものを作っているんだ。

 一体どうやって、とか、なんのために、とか、考えがあるのに文字にしようとすると頭が回らないほど俺は混乱している。違う。これは恐怖かもしれない。


 とにかく、ここにいるのはまずい。

 一刻も早くこの区域を抜け出さなければ。

 怖い。でも俺は、何が怖いんだろうか。

 


 残存食料、十日。

 水、十八日(簡易浄水装置あり)。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブ、C1B1所有。

おひさ。

いや、待たせすぎだよね……ぜんぜん進まなくて申し訳ないです。

七日アナザーまでやります。

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