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ロボと日記と終末世界  作者: 空戦型


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九月六日 Another コミュニティ・前編

 九月六日 Another


 先日からぐずついている空模様に少しだけ嫌な予感がしていたのは確かだ。

 なのでターミネイターの大移動が近くの山頂付近に向かっているのを確認したとき、もしやと思い追跡した。案の定、想像通りの未来がそこに待っていた。


「オベリスク……!!」


 大小様々なターミネイター達が絡み合って構成された漆黒の鉄塔、オベリスク。どういう方法か、奴らはここでオベリスクになれば雷が落ちてくると予想したらしい。落雷があれば、そこに新たなターミネイトDが産まれるだろう。


「……クラマはターミネイトDを知らなかった。やっぱりオベリスクはつい最近の行動変化と見て良さそうだな」


 そもそも落雷なんて一定の天候条件が揃えば幾らでも発生するものだ。もし去年からこれが起きていたならそこら中もっとターミネイトDがうろうろして、いよいよ人類は危なかった筈である。


 オベリスクを観察すると、以前見かけたものより少々全高が低く、代わりに太くなっている。元々高い山頂に作るから以前ほどの高度が必要なかったのかも知れない。


 ――気になる事は多いが、戦闘準備をする。


 ターミネイトDの自己進化は危険すぎる。

 以前は試すことが出来なかったが、落雷発生前にオベリスクの破壊を試みることにする。左肩部に三連装マイクロミサイルポットを、右手に多目的ライフルを。背部ハードポイントを二カ所使って大型高速ミサイルを量子展開する。


 本来はハードポイント一カ所を使って展開も出来るが、それではネイビーキャットの重心が傾く。幾らオートバランサが働いているとはいえ、バランスの取りにくい重心ではどうしても動きが鈍る。


 問題はどう仕掛けるかだ。

 いきなり高速ミサイルをかましてもいいが、万一迎撃されたら劣勢甚だしくなる。


「直撃させればオベリスクの土台も最低限中破くらいはするはず……そこまでいけばマイクロミサイルでも破壊は出来る。とは思うが、出来れば最低でもガイストが二機は欲しかったなぁ」


 と、オベリスクに接近するガイストの反応を検知。

 咄嗟に武装を展開したまま出力をスリープに落とし、ステルスを展開する。反応はオベリスクを挟んで対角線側。こちらのレーダーの性能が良かったため、接近するガイストたちはネイビーキャットの存在に気付いていない。


『な……何だこれは!?』


 姿を見せたのは、先々日見かけたあのデザートベアだ。

 僚機はネイビーキャットの下位互換に当たるC級ガイスト『ゲッコー』。

 そしてもう一機はC級ガイストの中では一番バランスが良い『オルカ』。


『どうするよ、サカベさん! 逃げるか!?』

『うじゃうじゃ動いてるから変だと思って付いてきてみりゃ、何だこれ!? 今から巣でも作るのか!?』

(この人達はオベリスクのことは知らないらしいな……)


 望遠で確認したが、ガイストは全機が蹄十次をバツで潰したエムブレムを掲げている。彼らと連携を取れればオベリスクに勝てるかもしれない、と淡い期待を抱くが、オープン回線で堂々と行われる通信内容にすぐにその気が失せる。


『近くのナワバリにこんなのがいたんじゃ安心して暮らせん! どうやらこっちに興味はないらしいし、今のうちに全部潰すぞ!』

『お、おう! そうだな!』

『待ってくれよ、あの下の方のバカでかいシャイタンを! 本当に俺たちで倒せるのか!? ああくそ、今からでもガーデンに向かって頭を下げて退治して貰えれば……』

『そ……そうだな! そりゃいい!』

『馬鹿野郎! 俺たちはとっくにあそこを追放されてんだ! 今更縋っても助けて貰えるものかよ!!』

『そうは言うがな! 俺たちは元々テンプルナイツでも何でもないんだぞ!?』


 意見はバラバラ

 統率もバラバラ。

 そもそも何故オープン回線を使って話を垂れ流しているのかも謎。

 声を聞くに、全員三十代から四十代という印象だ。


(ダメだこりゃ。話からしてシャングリアから追放されたか、あるいは逃げた人たちのようけど、まさに烏合の衆だな。移動速度がバラバラなガイストでチームを組んでるのもそうだけど、もしかしてあの人達ガイストの使い方がいまいち分かってないんじゃないか?)


 様々事情があるのかもしれないが、あれは当てになりそうにない。

 そうこう言っているうちにオベリスクはそろそろ完成しそうな高さになり、先ほどサカベと呼ばれた男の駆るデザートベアがアサルトライフルを構えながらオベリスクに五月蠅い足音を立てて接近する。


『あっ、おい何を……』

『埒があかん! 俺は戦うぞ! うおぉぉぉぉーーーーッ!!』


 デザートベアが両手で構えたアサルトライフルを乱射し、オベリスクに弾丸が被弾する。するとオベリスクを構成していたターミネイター達がデザートベアに一斉射撃を開始した。上から下まで、あらゆる面からの一斉攻撃だ。


 夥しい攻撃が雨と降り注ぐ。

 他の二機は距離が離れていたから難なく躱したが、デザートベアはそうはいかない。特に土台となった30m級の砲撃が命中し、デザートベアは吹っ飛んだ。


『ぐあぁぁぁッ!?』

「無謀なおっさんだな……だが、今ので色々分かった。オベリスク状態でも反撃してくるってのはなにげに重要な情報だぞ。それに……」


 デザートベアは損傷していたが、その度合いは想像より遙かに軽く、小破にもギリギリで至っていない。


 理由は恐らく敵の居る面のターミネイターしか攻撃出来ないこと、火力のある10m級ターミネイターがオベリスク内部に組み込まれているため攻撃に参加してないこと、オベリスクを構成するターミネイターの9割が歩兵サイズであること……そして、30m級ターミネイターが本来の半分の火力も出せていないのが原因だ。


「まぁオベリスク状態じゃミサイル発射管が味方に向いてるから撃たないのは当然だが、ビームの威力がやけに低いのは何だ? ……反動を抑える為か、或いはターミネイトDを生み出すのにエネルギーをある程度残しておく必要があったのか……」


 何にせよ、あれなら大型高速ミサイルを命中させるのは難しくなさそうだ。

 大型高速ミサイルの弾道を、一度高高度に飛翔してからターゲットに向けて高速落下するようセットする。これだけで30m級のビームの射角から完全に外れ、撃墜されるリスクが減る。

 歩兵ターミネイターの火力と攻撃精度で高速ミサイルを撃墜出来る確率は低い。仮に出来たとしても、上手くいけば爆発の衝撃でオベリスクが一度は崩壊するだろう。


 しかし、空中に飛翔する途中で撃墜される可能性を考え、狙撃銃タレットをセットする。オベリスクを射程圏内に捉えた上で、起動を20秒後にセットして後方に下がる。


 20秒後、ターゲットへの自動攻撃を開始したタレットを囮に、大型高速ミサイルの発射を実行。発射管から地面にアンカーが打ち込まれ、ミサイル発射管の蓋が開き、ミサイルが射出される。

 発射管に射出機能もついているらしく、物理的に射出された際の加速の中で推進剤を噴射したミサイルはあっという間に視界から消えた。そのまま発射管をパージして捨てておく。


 狙撃銃タレットを確認すると、最初の10秒ほどで適当にオベリスクを攻撃したものの、反撃のビームを受けて既に粉々になっていた。少々勿体ない気もするが。気を取り直して自らもミサイルを直撃させるための囮になる。


「大丈夫、ネイビーキャットなら避けられる!!」


 飛び出すと同時に狙撃モードの多目的銃を発射。

 多目的銃の狙撃モードは射程も威力も普通の狙撃銃より低いが、代わりに弾丸の装填速度で他の狙撃銃を上回る。走りながら発砲すると、オベリスクの攻撃がこちらにも向く。目を覆うような大量の射撃が降り注ぎ、全速力で駆け抜けるネイビーキャットの背後を破壊し尽くしていく。


 狙撃銃タレットと自分自身の攻撃が命中した位置を見ると、破壊された部分を他のターミネイターが補おうとして蠢いている。弾丸の一発は内部の10m級に届いたらしく、そこではやむなく破壊された10m級をオベリスクから排除してバランスを取ろうとしている。オベリスクを崩して一斉に襲いかかろうとはしないようだ。


 後からやってきた三機のガイストの方を確認すると、『ゲッコー』はとっくに一人で逃げ出したようだ。『オルカ』のパイロットはオベリスクの射程ギリギリから精度の悪いアサルトライフル狙撃を繰り返し、反撃を複合装甲シールドで防いでいる。


 デザートベアはというと、凄まじい斉射に中破まで追い込まれているが、なんとか反撃しつつ後退している。


(こうして見ると、オベリスクって厄介ではあるけど攻撃面では殆どメリットがないな)


 歩兵ターミネイターの射撃はコーティングを容赦なく削るがガイストのバランスを崩すほどの威力ではなく、脅威なのは実質威力の落ちた30m級のビームのみ。そして歩兵ターミネイターの射程は決して長くない。


 デザートベアがやられたのは殆ど自業自得だ。

 どのような特性を持った相手かを見極めれば――。


「どうにか、なるッ」


 マイクロミサイルを三発同時に発射。

 流石に二発は兵士級による対空砲火で撃墜されるが、一発が30m級の脚部に直撃。その衝撃で一瞬オベリスクの攻撃精度が緩む。既に砲撃でそこそこダメージを与えたが、オベリスクは僅かに低くなっただけで、依然、構造物としての体を保っている。

 高速ミサイル到達まであと20秒。

 どんどん揺さぶりをかけたい。


 ふとネイビーキャットとは反対方向にいるデザートベアを見て首をかしげる。

 デザートベアは終始アサルトライフル一丁で砲撃しており、最大の特徴である四カ所の携行兵器使用可能なハードポイントを使っていない。見た感じ破損していないので使える筈なのだが、もしや銃を一丁しか持っていないのだろうか。


『サカベさん大丈夫か!! シャイタンの反対側で戦ってる誰かのおかげで命拾いしたな!!』

『ハァ、ハァ……し、死んじまう……え? 反対側にいるのはゲッコーじゃねえのか?』

『あいつならとっとと逃げたよ!!』

『……クソッ、帰ったらぶん殴ってやる!!』


 少しだけ、嫌な予感。

 今ならこちらにまでちょっかいをかける余裕はないだろうと思い、オープン回線で呼びかける。


「そこのデザートベア! その手に持つアサルトライフル以外に武器は持ってないのか!?」

『うおっ、誰だ!?』

「自己紹介は後だ! 他に銃は!?」

『そ、そりゃ何丁かあるが……今持ってるのより強いのはないぞ!?』


 案の定、持っていたようだ。

 そして、デザートベアのスペックも理解出来てない。


「だったら展開して使え! デザートベアは銃を六丁まで同時に使える筈だぞ!!」

『はぁ!? 何だそりゃ!?』

「いいからガイストに頼め! 構えられるだけ銃を構えろって!」


 数秒を置き、デザートベアの空いた片腕にアサルトライフルが、左腕のハードポイントにサブマシンガン、右腕のハードポイントに拳銃が展開される。デザートベアの腕部ハードポイントは銃のグリップを挟むような構造になっており、これによって発射が可能になる。


『ほ、本当に出来たっ!』


 戸惑う声と同時に、四つの銃口が一斉に吠える。

 先ほどの三倍以上の弾丸が発射され、オベリスクに叩き込まれる。精度は荒いが的が大きいために無駄玉はあまり出ていない。と、デザートベアを鬱陶しがるように30m級のビーム発射口からエネルギー反応。砲撃でオベリスクが破壊された分軽量化に成功したか、或いは危機を感じたためか、先ほどより反応が強い。


『サカベさん、また来るっ!!』

『遮蔽物に――』

「ダメだ、次のは威力が高い! 横に避けろッ!! あと少し持たせればなんとかなるから!!」


 こちらの声が辛うじて心に届いたか、二機のガイストは横方向に回避する。30m級の発射したビームは先ほど以上の威力で容赦なく山肌を抉ってガラス化させた。複合装甲シールドは原形を保っているが、残っていれば運が良くても二機とも大破だっただろう。


 そして、狙っていた瞬間が来る。


 雲を突き破って超加速したミサイルが遂に飛来した。

 ビーム砲撃の反動や度重なるガイストの攻撃によるバランス維持に行動のリソースを奪われたターミネイターたちは迎撃が間に合わない。オベリスクの対空砲火を一瞬で掻い潜った大型高速ミサイルは30m級に容赦なく直撃。


 轟音と爆煙、衝撃が山頂から迸った。


 爆発の威力と衝撃でオベリスク下部のターミネイターは全滅。

 上部オベリスクも支えを失って下に落下する。

 今がチャンスとマイクロミサイルと銃撃を30m級のいるであろう場所に全力で叩き込むと、そのうちのどれかが30m級のジェネレーターか何かに直撃したか、再び大爆発が起きた。もはやオベリスクを構成していたターミネイターたちは小規模拠点のそれ以下だ。


 念のためネイビーキャットを前進させ、銃をアサルトライフルモードに切り替えて念入りに破壊していく。空にゴロゴロという音と稲光が輝いた頃には、オベリスクは跡形もなくなっていた。


 そして、思わぬ副産物もあった。

 オベリスク崩壊跡は、ターミネイターの残した宝の山だったのだ。


「マテリウム結晶うっま……ガイスト二機は再生させられる量だぞ。それにエネルギー補助ユニットに、このアサルトライフル確かすげぇ使い心地いいやつだ。チャフ弾に、ブギートラップ。他にも……!」


 手早く確認し、残りの容量と相談しながら是非とも欲しいものを一通り回収する。それでも残り物が相応にあるが、素直に諦めよう。少しすると、呆然と立ち尽くしていたガイスト二機から通信が入る。


『その、なんと言えばいいか……誰かは知らないが、本当に助かった。君は命の恩人だ』

『最後の大爆発も君の仕業かい?』

「ええ、まぁ。それより……」


 期せずして、彼らに恩を売ることが出来た。

 しかもこの人たちは少々詰めの甘さがある。

 こちらのネイビーキャットは今しがた補給物資も手に入れてコンディションはいいのに対し、彼らは満身創痍。交渉を持ちかけるにはいい状態かも知れない。


「俺はどこにも所属せずにこの終末世界で旅をしている者です。この辺りの情報や組織の事情を知りたいんですが……いいですか?」


 二人は、すんなりと頷いた。

 この世界で初めて『話せば分かる』が通じた気がして少し涙が出た。

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