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ロボと日記と終末世界  作者: 空戦型


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八月の日記 二十二~二十四日

 八月二十二日



 結局眠れず、夜明け頃になってやっと仮眠程度の睡眠が出来た。

 生活リズムが乱れて頭痛がするが、それも生きている証だ。

 珍しく昼に既に日記を書き始めている。


 ターミネイトDの情報を纏める。


 ターミネイトDはターミネイター達が何らかの形で融合、強化され一つの個体になったものと思われる。


 ターミネイトD出現前には以下のことが確認されている。


 まず、大小様々なターミネイターが集合する。

 数は一千以上だったが、もしかしたら後述するオベリスクの土台の為に20m級が必須かもしれない。それらのターミネイターが落雷の可能性が高い場所に集合し、自らを部品に高い構造物を形成する。これを勝手にオベリスクと呼称する。確認したオベリスクの全高はおよそ100mだったが、これ以上大きい、または小さいオベリスクを形成する可能性は否定できない。


 オベリスク形成前に攻撃を行いターミネイターの数を減らし、経過を観察することでもっと詳細なデータが取れるだろう。ただしリスクも高いので実行する際はタレットや長距離ミサイル、狙撃銃を使いたい。


 オベリスク形成後は恐らく落雷を待つだけ。

 落雷を受けてそのエネルギーを吸収し、オベリスクを構成するターミネイターは全て分解、吸収されて一つのキューブになる。キューブになる条件が莫大な電力なのか、それとも電気以外でも可能なのかは不明。

 ただ、このような回りくどい方法をとっている以上、キューブの形態になるには相応のエネルギーが必要なようだ。


 キューブは一辺10メートル程度の正六面体で、色は黒い。

 この立方体が割れると中から謎の黒い液体と共にターミネイトDが出現する。

 出現前にキューブを攻撃した場合どうなるのかは不明。

 

 ターミネイトDはガイストを黒く生物的にしたような外見だ。全身に血管のような赤い筋が通っており、発光している。夜も発光しているのかは不明。もし光っている場合は夜にちょっと戦いやすいかもしれない。


 スペックは確認出来た範囲でも全A級ガイストの平均値を上回っている。

 しかも、自己再生能力を保有。どの程度の傷まで再生できるのかは不明だが、計測の限りでは総エネルギー量がA級ガイストと比して二十倍以上なので、かなりしぶといことが容易に想像出来る。

 更に、自分の体を変形させて超振動クローやエネルギー銃を作るなど、その場で自らの思い描いた装備を作ることが出来る可能性がある。相手の行動や武器を模倣する傾向も見られ、高い学習能力が覗える。


 自己再生、自己進化。 

 タレットや僚機の概念などを学習すれば自己増殖もするかもしれない。

 

 一方、どうやらキューブを出てすぐの間は高い思考能力を有していないのか、出現当初から暫くは突進を繰り返した他、銃を模倣した後も銃の使い方について柔軟な思考を見せる様子はなかった。

 恐らくこちらが高度な武器の運用をしていればすぐに学習していたのだろうが、見せるまでは気付かない。そこに安定した対処法のヒントがあるかも知れない。


 ただ、何も警戒せずとりあえず倒そうとした場合、ターミネイトDは加速度的に対象の戦闘技術を取り込み、手に負えなくなる可能性が高い。


 ターミネイトDについての情報は一年間この世界を生きてきて初めて見た。マサトも恐らく知らないだろう。もしターミネイターが人を滅ぼしたいならもっと早い段階でターミネイトDを生み出していて良さそうなものだが、何故今になってそのような行動を見せたのかが気になる。

 或いは、今までもターミネイトDは出現していたが何らかの理由で長く存在することが出来なかったのか? 謎は深まるばかりだが、無限の想像は無駄な想像を生む。今は場当たり的に対処していくしかない。


 残存食料、五日。

 水、二日(簡易浄水装置あり)。

 ハンドガン残弾十二発。

 Bランクのキーグローブ所有。


 今夜は眠れるといいが。




 八月二十三日



 大分体調が良くなった。

 ターミネイトDも見当たらない。

 ただし、台風直撃で行く先々の家の状態が酷く、探索が捗っていない。

 元々この世界の建物は終末化が与えた何かしらの影響か、一年という年月以上に劣化しているように見える部分がある。いい加減に探索で食料を漁るのは限界なのかもしれない。拠点が必要だ。


 しかし、拠点を作るならマサトと相談したい。

 そのマサトだが、前に続いてまた一方的に通信が届いた。


 曰く、彼は合流地点である『嘆きの塔』に到着したものの、ヤエヤマ解放戦線が居座っていたらしい。もちろんマサトは俺と違って頭が切れるので連中には見つからず、逆に偵察を行っていた。


 マサトはそこで想像を絶する光景を目の当たりにしたという。

 突如として嘆きの塔が変形し、要塞のような構造物に変化するという、想像するのも難しい光景を。


 始まりは、見たことのないガイストに乗った男が現れたこと。

 集音マイクによるとヤエヤマと呼ばれていたらしく、恐らくはその男がヤエヤマ解放戦線のトップなのだろう。男は周囲を重火器で武装した護衛に守られながら生身で『嘆きの塔』に入り、それから十数分後に異変は起きたという。


 嘆きの塔は質量以上の変形を見せ、みるみる間におよそ直径5kmの円形要塞が出来上がったという。正確には外見は城壁都市という感じだったが、その城壁に量子化の光と共に次々に砲台用途不明の装備が追加され、気付けば要塞化していたらしい。


 更に集音マイクで会話を盗聴した所、以下の事が判明した。


 ヤエヤマの乗るガイストは『ブレイヴァン』という非常に特別なガイストで、ヤエヤマにしか操れない。


 これまでヤエヤマ解放戦線がシャングリアの『セラフィム』に壊滅させられなかったのはこの『ブレイヴァン』のおかげだが、この二機が本気で衝突すると余波で周辺が消し飛ぶため、気軽に使える戦力ではない。


 名の通り解放戦線のトップであるヤエヤマは、ターミナル――俺たちが『嘆きの塔』と呼んでいる構造物――を『解放』し、操る方法を知っているが、やり方を知っているのはごく一部の限られた人間だけ。


 『解放』された『嘆きの塔』は、解放者の思い描く形を取る。ヤエヤマ解放戦線のターミナルは要塞で、シャングリアのターミナルは刑務所(敵対組織のことなので悪く言っている可能性は否めない)。


 『解放』された『嘆きの塔』はどの勢力も拠点として扱っており、最初に『解放』を行ったのは実は第三の勢力であるソゾロギだと噂されている。


 今現在、ヤエヤマ解放戦線とシャングリアはターミナルを奪い合っており、ターミナルの数ではシャングリアが優勢だがヤエヤマも挽回しつつある(戦意高揚の為の偽装情報の可能性は否めない)。


 ただ、マサトが偵察に専念できたのはそこまで。

 間を置かずに拠点に次々にガイストがやってきて警戒が厳しくなったため、切り上げたという。

 『解放』された『嘆きの塔』の防御機構の詳細だけは分からなかったが、少なくともヤエヤマ解放戦線のガイストは迷いなく射程圏内に入り、その上で攻撃を受けていなかったそうなので解除、ないし識別が可能なのだろうと推論していた。


 最後に、マサトは二勢力の衝突に巻き込まれそうなので一旦南下することと、傍受のリスクと通信範囲の問題からこれ以上はメッセージを送れないことを告げて通信を切った。


 ちなみに、俺はターミネイトDから逃げて真反対の北に猛ダッシュしてきた。

 今から合流しようとすればターミネイトDのいた方角、そしてそれを乗り切ってもヤエヤマ解放戦線の新たな拠点の近くを通るのでリスキーなことこの上ない。断腸の思いで合流は諦めた。


 なんというか、散々だ。

 台風直後のせいか食べられる虫も全然見つからなかった。


 残存食料、四日。

 水、二日(簡易浄水装置あり)。

 ハンドガン残弾十二発。

 Bランクのキーグローブ所有。


 俺も冬になる前には南に行きたい。

 北の冬でサバイバルは辛すぎる。




 八月二十四日



 ターミネイトDとS級ガイストが戦ったらどうなるんだろうか。

 仮にセラフィムがS級ガイストだと仮定すると……絶対無理だ。

 セラフィムがあの全方位無差別攻撃をした際に使用したエネルギーはターミネイトDの出力を優に上回る。あれをただ一機を破壊するために用いれば粉みじんだろう。総エネルギー量が違いすぎるし、空間歪曲のこともある。これは勝負にならない。


 しかし、冷静に考えるとあんなエネルギーを戦闘毎に消費していてセラフィムはエネルギー消費でダウンしないのだろうか。たまにふらっと戦線に出てきてあの大火力一発で戦闘を終了させていれば使い道としては上等かもしれないが、ヤエヤマが所持するというブレイヴァンとは果たしてどんな戦いを繰り広げるのやら。もしくは互いにガイストの大飯食らいを理由に決戦を避けているのかもしれない。


 道すがら、激しい戦闘の痕跡を発見した。

 敵が誰だったのかは確認出来ないが、そこには複数の砕けたイミテイターの遺体が転がっていた。生きているかどうかも分からないのに遺体とは、と毎度思うが、ある意味動いてなかった方が怖いかもしれない。


 キーグローブを二つ回収。

 両方ともC級だ。

 ないよりマシなので拝借する。


 イミテイターの遺体が複数転がっているというのは余り見たことのない光景だ。ターミネイターの行動と時を同じくしてイミテイターにも行動の変化があったのかもしれない。これは頭の隅に置いておこう。


 コンテナ漁り中に、コンテナが空いた状態で放置されたガイストがあったので調べてみたら、中身が『トータス-HH』だった。個人的使い勝手ワースト1の代物だが、一応何かあったときのために登録だけしておいた。


 『トータス』はC級最重量で、最も装甲が堅牢で、最も鈍足なガイストである。C級屈指の同時武装展開量による砲撃は最初に操縦した時こそ圧巻だったが、とにかく鈍足が全力で足を引っ張りまともに回避もできないし、移動も遅い。


 しかもこの『トータス』、よりにもよってどんなに頑張っても他のガイストに追いつけない速度の部分を上げたHHタイプであり、ほぼいらない速度上昇と引き換えに自慢の装甲を削るというコスパ最悪な改変がされている。最初にコンテナを開けたヤツも目頭を押さえたことだろう。


 他には目立った成果はなし。

 サバイバル中久々に蛇を見つけたので焼いて食べた。

 一年前は近づくだけでもびびっていたのに、人は変わる。


 残存食料、四日(サバイバルで消費なし)。

 水、三日(簡易浄水装置あり)。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブ、C2B1所有。


 このトータス、コクピット抉ろうかな。

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