繰り返す。リリアさんはなりたくて団長になったわけではない
そんなルイスの思いをよそに、リリアさんは15歳の時に無事婚約した。
相手は子爵家の長男だった。
そしてルイスの思ったとおり、リリアさんは18歳の時に無事婚約破棄をした。
婚約破棄については色々あったが結果としては無事に婚約破棄できて良かったという意見でクロフォード家の意見はまとまっている。
まぁ婚約破棄の話は別にするとして、リリアさんが婚約破棄してからしばらくして当時の魔術師団長バッシュ・ハンプトンが病に倒れた。
通常は副団長が団長になればよいのだが、魔術師団副団長のマイクは貴族出身ではなく平民出身だった。
魔術師団は実力主義で、平民でも才能があれば重用されていた。
その最たる例がマイクだったが、王国の軍部にはいまだ古い考えのものが多く、マイクが団長になることには、反対意見が多かった。
バッシュ・ハンプトンは熱心なグランの信奉者だった。
困ったバッシュは隠居していたグランに団長をしてもらえないか頼んだ。
グランは最初は断っていたが、病を押してバッシュ本人がたのみにくるのを、見ると助けてやりたいとも思った。
思ったが今さら老体が団長になるわけにはいかないと思い、困ったグランは国王陛下に相談することにした。
「魔術師団については余も頭を悩ませていた。
グラン、お前の息子のルイスか、孫のレイリーに魔術の才能があれば良かったんだが。」
「なに、団長は世襲制ではありません。
ルイスとレイリーには魔術の才能はありませんでした。」
「お前の魔術の才能が引き継がれなかったのは残念だ。」
「……孫娘のリリアには魔術の才能はありますが。
まぁあのこは女の子ですから。」
「そうなのか?
リリア嬢は確か先日ナルア子爵家の長男と………。
いや、この話はやめておくか。
リリア嬢は息災か?」
「陛下、婚約破棄の話は気にしないでください。
結果としては婚約破棄できてよかったと思っています。
元々皆、あのこには政略結婚は向いていないんじゃないかと思っていたんです。
本人も特段気にせずのんきにしていますよ。」
「そうなのか?
ふーむ。
グラン、さっきリリア嬢には魔術の才能があるといったがどの程度あるんだ?」
「うーむ。
あまり大っぴらには言えませんが、レイリーに魔術の才能があるかと思って色々教えていた時にリリアも側で聞いていましてね。
レイリーには魔術の才能はありませんでしたが、レイリーに教えたことをリリアが簡単に吸収してしまいましてね。
私も女の子でも護身くらいできた方がいいかとおもい、面白半分に色々教え込みました。
女の子が魔術の腕をあげすぎてもよくないかと途中で教えるのはやめたんですが、独学で色々学んでいたようで気がついた時にはもう手遅れで。
いまや魔術師団の団員となんら遜色はない程度には使えますよ。」
「なんと!
それほどか!」
「はぁ、正直私が把握している限りでは魔術師団の団員と遜色がない程度であろうというところで。
本人もあまりよくないことだという自覚はあるようで、全部の手の内を私に見せていないのではないかと思うのです。
色々聞いてものらりくらりとかわされますが、もしかしたら私並みの腕があるのかもしれません。」
「なんと!!
お前並みだと!!?
よしわかった!!
リリア嬢を魔術師団長にしよう!!」
「………は?」
「は?ではない!!
グラン・クロフォードの孫娘なら反対するものは軍部にはおらん!
なに、魔術師団については事実上副団長のマイクがとりしきってくれている!
形式上団長には貴族位が必要というだけだ!
その点リリア嬢なら十分条件を満たしている!
それに団長という責任のある立場におけばリリア嬢の実力もわかるであろう!
反対はするなよグラン!
これは余の意思、勅命じゃ!!」
その後あわててグランや、事情を聞いたルイスやレイリーが取り消しを願ったが盛り上がってしまった国王の気持ちは変わらなかった。