リリアさんはなりたくて団長になったわけではない
リリア・クロフォードは伯爵令嬢だ。
クロフォード家は元々は男爵家だったが、リリアの祖父グラン・クロフォードの代で伯爵の爵位を賜った。
グランは伝説の魔術師で北の帝国との戦争の際、多くの民の命を救い、多大な武勲をあげたそうだ。
グランは魔術の腕だけでなく、剣術の腕も素晴らしく、人格も素晴らしく領民からも部下からも信望があつかった。
国王陛下からも信望があつかったがそれを、鼻にかけることもなく、常に謙虚な態度の無口な男だったそうだ。
軍部にグランの信奉者は多かったが、グランは老兵は去り行くのみと40歳の時に当時20歳になったばかりのリリアの父にあたる長男ルイスに家督をゆずり隠居してしまった。
伝説の魔術師グラン・クロフォードの息子ルイス・クロフォードへの周囲の期待は重かったが、ルイスには魔術師としての才能はなかった。
ルイスには魔術師としての才能はなかったが、ルイスは物事を客観的に把握する才能はあった。
ルイスは早々に魔術師になるのは諦め、文官の試験をうけて文官になった。
ルイスの息子で、リリアの兄、レイリー・クロフォードにも魔術師の才能はなく、レイリーも早々に文官の試験をうけて文官になった。
ルイスもレイリーも文官が性に合い、二人ともそこそこ順調に出世していた。
リリアはレイリーの2つ下の伯爵家の長女として産まれた。
小さい頃から変り者であったが祖父母や両親、兄に可愛がられながらなに不自由なくすくすく育った。
『この子は結婚に向いていないかもしれないな。』
一風どころか二風、三風変わっている愛娘を見て、父親のルイスは考えた。
『……まぁいっか。』
家督はレイリーが継げばいいし、リリアが無理して結婚する必要もないので、ルイスは特に難しく考えていなかった。