1/2
妖怪 せびき
突発的妖怪の様な何かです。
妖怪さん、許して下さい。
眼下には小さな車が道路を行き来している。
都会の喧騒が五月蝿い。ネオンが星の光を掻き消して眩しい。眼が痛い。
体が思い。
全身の血管の中溶けた鉛を入れられたかの様に重く、酷く気分が悪い。
何かを考える事が最早しんどい。
明日も今日と同じ、疲れるだけの日々。
何も楽しくないし、自分が今、何をしているのだろう?と思う…いや、もう思うのも疲れた。
もう、休もう。
ここから飛び降りれば楽にはなる。
そうして私はビルの屋上から夜の街のアスファルトの地面に繰り出した。
「サセナイヨ」
グイッともの凄い勢いで襟を掴まれビルの屋上に背中から繰り出す事に成った。
「……イタイ。」
涙が出た。超痛い。
ナニコレ?
自分を引っ張った相手を睨もうと首を動かすが……そこには誰も居なかった。
これが現代妖怪として名高い、急ぎ過ぎる人間を背中から引っ張って止める『せびき』である。