表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/35

■第07話 『力と代償』

■第07話 『力と代償』







「う・・・う~ん・・」



「お?起きたかのぅ」



「・・・ハッ!?」





飛び上がって起きるのは、一体、何度目だろう?

・・・・もうこんな目覚めは体験したくない。



でも・・・今までと違って、ちゃんと覚えてるぞ。

僕は『力』を使ってゴブリンと戦ったんだ。



そのあと、激痛と眠気が襲ってきて、そのまま気を失ってしまった・・・・





「ぼ、僕は・・・・どうなった?」



「落ち着け。もう8割ほど回復しておるはずじゃ」



「え?・・・あ、あれ?そういば・・・痛みがほとんどない」





軽く体を捻って確認してみたけど、少しズキズキするくらいだ。





「どれくらい、気を失っていたんだ・・ですか?」



「1時間ほどかのぅ。とりあえず、もう動けるじゃろう・・・それと、無理に敬語を使わなくても良い。普通に話せ」



「うぇ!?・・・あ、ああ。分かった・・・」





さっきは恩人に対してとか言ってた癖に・・・





「どれ、試しにそこの木に拳を振るってみよ」



「ええ?いきなりかよ・・・・そんなことしたら、手を痛めるだろう・・・」





ジトっとした目で本が睨んできた。また小うるさいこと言われそうだ。

意味不明な説明聞いたり、説教めいたことを言われる前に、とにかくやった方がマシかも。





「わかったよ!・・・いくぞ!?でえぇやあああぁぁーー!!!」





ボッゴォオオオン!





正拳突きっぽく木にパンチを繰り出した。

殴った部分がへこみ、幹がミシミシと音を立てて揺れている。





「いってぇぇ・・・おお~!なんか木がへこんでる!?すごい!!」



「フォフォフォ。良い結果じゃ!体が成長しておるようじゃのう」



「本当にすごいな!?・・・でも・・・さっき、ゴブリンに打ったパンチの方がすごかった気がする」



「先程のやつか?あれは限界点を突破したものじゃ。『紋章』で我の力を全開放しない限りは、人体の限界点を超える行動は出来ぬ」





延々と回りくどい説明を聞いてたけど、なんとなくわかってきた・・・

この力には、何か『制限と法則』があるんだ。





「それって、今の状態が通常状態にあたるけど、通常でも人間的にはかなり強くって・・・」



「む?」





本が少し驚いた顔をしてるぞ。



馬鹿にしやがって・・・

それくらい僕にだって予想はつくっての。





「さっきの『紋章』ってやつでリミッターが解除されて、とてつもない力を発揮できるっていうこと・・・で、合ってる?」



「ほほお~。主の知能でも理解できたか!これは喜ばしいことじゃ!クハハハ!」



「お前・・・完全に僕のこと馬鹿にしてるよな」





空中に浮いた状態で、本がゲラゲラ笑い転げている。

相変わらずムカつくやつだ。



確かに、これはすごい力だけど・・・絶対に何か裏がある。



こいつは何か誤魔化す時、僕を馬鹿にして逆上させようとする。

きっと、僕に冷静に考える機会を与えないつもりなんだ。



・・・・見てろよ。





「いや~、本当にあの力はすごいな!あれなら、どんな化け物もイチコロだよ!」



「そうじゃろう。そうじゃろう。フハハ」



「こんなに便利な力が『使い放題』だなんて、僕は本当にラッキーだ!」





この僕の適当な発言に本が食いついてくるかが勝負だ。

こいつは厳密な説明を好むから、必ず訂正しにくるはず・・・





「む?『使い放題』とはちと語弊があるのぅ」





よし!掛かった!

ここからだ!





「え?違うの?・・・それってどういうこと?」



「力とはエネルギーを消費することによって生じるものじゃ。そのため、限りがある」



「へぇ~・・・それってつまり・・・あれだけの力を『タダで使える訳がない』ってことだよな?」





本の笑いがピタっと止まった。どうやら図星だったみたいだ。





「・・・何かリスクがあるんだろう?」



「クハハ・・・勘の良いやつじゃな。そうじゃ。あの力を使うには代償が伴う」





やっぱりな・・・

そんなにうまい話がある訳ないと思ったよ。





「『代償』ってなんだ?・・・それ、隠す気だったのか?」



「隠すつもりはない。主に順を追って説明するつもりじゃった。そこまで気づいたならば、もう良いかの」





な~にが、『隠すつもりは無い』だよ。

さっきも僕を騙したクセに・・・





「『代償』は・・・主の『生命』じゃ」



「!?」







ある程度予想はしてたつもりだ。

例えば、血を使うとかさ・・・・



でも・・・

予想の思いっきり上だなんて・・・







「・・・『生命』・・だって?・・・あはは・・・僕に命を使わせて、殺すつもりなのか?」



「その逆じゃ。契約主が消滅すれば、我も消滅する。そのような愚かな真似はせぬ」







こいつは・・・本当に信用できない!

・・・・むしろ疑って掛かるべきだ!







「はっきり言って、お前を信用できない・・・・なぜ黙ってた?」



「まずは力の存在と、操り方を教える必要があったからじゃ」



「お前が言うことは全部嘘に思える・・・それすらも嘘じゃないのか?」



「落ち着くのじゃ。まずは話を聞くが良い」



「結局、まずは話を聞けってか・・・まあ、良い。でも、僕が信じるかどうかは別だからな」



「今の主の体では、力の負荷に耐えられず壊れてしまうのじゃ。そうじゃのう・・・」





本がふよふよと空を漂いながら、何か考え込んでいる。





「うむ。この『例え』ならば分かるかのう?」



「・・・・『例え』?」



「うむ。ダムに溜まっている水が我の力。そのダムから水を放出するのが主の体。今の主は水道の『蛇口』のようなレベルじゃな」



「それがどうしたっていうんだ?」



「『蛇口』だとダムの水圧に耐えられぬじゃろう?・・・じゃが、『蛇口』から『水門』へと強化できたならば 、力の負荷に耐えられるようになる」



「・・・つまり、僕の体が強くなるほど、負荷に耐えらえるようになり、命の消費が減るのか?」



「クハハ、そうじゃ・・・じゃが、重要なのは『紋章』に頼らぬことじゃ。命には限りがあるからのう」



「勝手なこと言いやがって・・・」



「主の望み通り、成長すればよいのじゃ。主自身の能力を強化し、『紋章』に頼らぬ戦いをすれば良い・・・まあ、安心せい。通常時でも十分『超人的』なはずじゃからのう」



「くっ!・・・・『蛇口』のままか『水門』になるかは、僕自身の『成長次第』ってことか・・・」



「その通り。これは主が願ったものじゃ。我はその願いに答えた。力には代償が伴うものじゃて」



「ああ、そうかよ!僕は確かに願ったよ!・・・けど、僕にこの力で何をしろってんだよ!?」



「自分で言っておったではないか?弱者を救う救世主や英雄になりたいと。そのための苦悩と成長なのではないか?」





ウグッ!?・・・・

確かに・・・・言ってたな。





「この力を、己の命を削ってまで、『守るべき弱者たち』に使えるかの?果たしてその理想がどこまで続くかのぅ?これは見ものじゃわい。クハハハ!」



「お、お前・・・やっぱ、性格悪いやつだな・・・・」



「主が消滅すると、我も消滅するのじゃ。せいぜい頑張るのじゃぞえ?」



「白々しいこと言いやがって・・・僕が命を削って力を使い、『消滅』とやらに近づいてもか?」



「じゃからこそ、先ずは己を鍛えよ。文句ばかり言うのもいい加減にせい」





さっきは力を使えって言って、今度は力を使うなって言って・・・

本当に、初回起動のチュートリアルをやっただけだったのか?





「文字通り、『命がけ』のチュートリアルは集中できたじゃろう?クハハハ!」



「クッ!?・・こ・・・この野郎・・・」





人の考えを読めるのかお前は!?

ゲラゲラ笑いやがって・・・





「まあ、もうよいじゃろう。そろそろ街へ向かうとするかの」



「・・・え!?」





・・・何だって?

今・・・こいつ、『街』って言ったのか?





「なぁ・・・今なんて言った?・・・・・街があるのか!?」



「うむ。そう遠くはない。主のその恰好も何とかせねばのう」



「僕の恰好・・・?」





そういえば、寝間着のままだったな・・・しかも血まみれだ。

https://twitter.com/nrny9wZXq85mJ1M


こちらでツイッターをやってます

新しいアップデートや修正の予定など、こちらでご報告させて頂きます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ