■第32話『殺人鬼 vs 4騎士長レンド』
■第32話 『殺人鬼 vs 4騎士長レンド』
『アモンの名を悟られてはいけない』
ベリアルに詰め寄られているアモン。
和人は『軽く嘘の名前を言えば良いのに』と思っていたが、アモンは口を閉ざしたままだ。
何故、嘘をつかないのか。
何故、名を知られるとまずいのか。
それらの理由は不明である。
しかし、謎は多くとも、今が危機的状況であることには変わらない。
まさに、緊張感が溢れる場となっている。
そこに、ある一人の男が空気も読まずに飛び入ってきた。
その男の名は『レンド』。
彼は『4騎士長の1人』である。
和人が昼間に『騎士団のパレード』で見た男。
彼はそのときと同じく、背中に『長すぎるロングソード』を背負っている。
ジャレットと共に談笑しているレンド。
その彼の印象はと言うと……
「いやぁー!探してたんスよ!隊長ぉ!!あっはっは!」
「お、おう・・・そうかよ」
実に、能天気であった。
「いやぁーー!隊長!!マジ懐かしいッス!!いつ以来でしょうねぇぇ!?あっはっはっは!」
「お、おい・・いて、イテテ。ちょっと・・・叩くの強いって。あの、レンド君?」
豪快に笑いながら、彼はジャレットの肩をバシバシと叩く。
単純な体育会系の男。
ただのハイテンションが過ぎる男。
和人には、そういう風にしか見えなかった。
「えぇ~?・・・ほ、本当にあの人が4騎士長の1人・・・ですか?」
「あっはは・・・うん、そう。周りから脳筋って言われてるくらい、筋金入りのバカなの・・・」
和人の疑問に対し、ミルが困った顔で答えている。
「僕、騎士のイメージって、すごい精悍な存在だと思ってたんですけど・・・なんていうか・・・あの人を見てると・・・」
「うむ・・・なんじゃ?あの阿呆は・・・」
「すごい元気なニンゲンなのデス。ゴブリンよりも元気デス」
和人たちから出てくる『残念な感想』に対し、ミルが必死に否定を始める。
「あ!違う違う!ちゃんと騎士団って精悍でカッコイイのよ!?・・・あ、あいつだけだから!ああいうのは!!お願いだから、みんな信じてよぉーっ!?」
だが、それは『否定』というよりも『懇願』しているような感じだ。
それほど彼の印象は強烈なものだった。
しかし……
ここにいる『ある重要な人物』は違った反応を示している。
その重要な人物…そう、ベリアルだ。
「まさか・・・まさか、こんなところで・・・ははは」
和人たちはベリアルを前にしている為、彼の変化に気付いた。
ジャレットとレンドの2人は少し離れた位置で談笑を続けている。
ベリアルはぶつぶつと呟きながら、レンドを凝視しているのだ。
彼は、アモンに一言だけを告げ、レンドに向かって、スタスタと歩いて行ってしまう。
「イリーガル嬢。お時間を取らせてしまいましたね。お許しください」
「お、おい・・・・なんじゃあ?」
アモンは困惑した表情を見せている。
彼女にも何が起こったのかは分からない様子であったが、和人はアモンに問いかけた。
「なぁ?アモン。何が起こったんだ?」
「わ、分からぬ・・・なにやら、あのレンドという男に興味が移ったようじゃのう」
「何でだ?あいつの目的は、お前じゃないのか?」
「じゃから、分からぬと言っておろう・・・それよりも、見よ」
アモンが指さした先。
そこには、レンドとジャレットの2人を前に、丁寧に頭を下げているベリアルの姿が。
「お初にお目にかかります。僕はベリアルと申します」
「あ・・・はぁ。ご丁寧にどうも」
レンドはポカンと口を開け、目の前に居る『品の良い青年』を眺めた。
「俺はレンドって言います」
「レンドさんですか。ご丁寧にありがとうございます。失礼ですが、一つだけ質問させて頂いてもよろしいですか?」
「ええ?質問っスか?・・・ええっと、何っスかね?」
「あなたは、あの『4騎士長』の『レンドさん』ですか?」
「え?まあ・・・一応、『4騎士長』ってことになってるっス」
「ははは。そうですか・・・あなたが4騎士長ですか」
「ええ。そうっス・・・あのぉ、何スか?あ!サイン欲しいとか!?」
まるで、レンドを確認するような会話を続け、ベリアルはニンマリと微笑む。
「何という幸運でしょうか・・・まさか、こんな所で出会えるとは・・・」
その笑顔は、実に不気味だった。
『目の前にいる青年』が危険な存在ということを、レンドは知らない。
だが、その笑顔を見ただけで、4騎士長である彼は、何かを感じ取る。
「・・・あんた、只者じゃねーな?」
「ははははは。探してたんです。あなたたち『4騎士長』を」
様相が変化していくベリアル。
不穏な気配を察知したジャレットが、不意に叫ぶ。
「レンド!距離を取れ!!」
「了解!隊長ぉ!!」
2人はバックステップを繰り出し、ベリアルとの距離を取った。
ベリアルと2人が向かい合い、睨み合う。
「隊長!あいつ、何者っスか!?」
「俺も先ほど出会ったばかりで、詳しくは知らないんだ・・・だが『やばい奴』ってことだけは分かるだろう?」
「はは!?確かに!やばそうっスわ!」
ジャレットとレンドは緊張と警戒を高める。
しかし、ベリアルは2人とは対照的であった。
平然と突っ立って、ただ、向かい合う2人をじっと見据えているだけだ。
そして…
「アゼルさん・・・」
彼は小声で呟いた。
すると、どこからともなく『ヒュゥ~』という口笛に似た音が聞こえてくる。
「なんだぁ?・・・あいつ、口笛拭きませんでした?」
「油断するな!レンド!」
レンドとジャレットはベリアルと睨み合ったまま、動かずにいる。
彼らは互いに動向を伺い、硬直状態に陥っている。
その間、和人たちには『口論』が起こっていた。
「僕たちも加勢しなきゃ!ミルさん、行きましょう!ゴーフレットも!」
「ええ!」「ハイ!カズト様!」
当然ながら、和人、ミル、ゴーフレットの3名は、レンドたちに加勢しようとしていた。
しかし…
「ならぬ!!待つのじゃ!!」
彼らはアモンによって制止されていたのだ。
気持ちが焦る3人は、アモンに食ってかかるように問いかけ始める。
「ど、どうしてだよ!?」
「今は無暗に動くでない!奴が『何か』を発動させたはずじゃ!その『何か』を見極めねばならん!」
「『何か』を?・・・ソレは何でショウ?アモン様」
「分からぬ!それが分からぬから、よく観察するのじゃ!」
「ちょっと、アモンちゃん!今は2人がピンチなのよ!早く助けに行かなきゃ!」
「皆のもの!落ち着くのじゃ!危機だからこそ、今は冷静に思考する必要があるんじゃ!!」
各々が焦る気持ちをアモンにぶつけたが、彼女は額に汗を垂らしながら、必死に彼らを制止し続ける。
そして、アモンは『ある疑問』を彼らに問い返した。
「主ら・・・先ほど『笛の音』のような音を耳にしたかのう?」
「ハ、ハイ・・口笛っぽかったデス」
「そうね。確かに聞こえたけど・・・でも、アモンちゃん。何も起こってないわよ?あれって、何か意味があるのかしら?」
「それは分からぬ・・・じゃが、奴は意味のない行動など、するはずがないのじゃ。必ず意味がある。何かが発動したのか・・・・或いは、『何者か』を呼んだのか・・・」
アモンの言葉を、和人が反復する。
「何者かを・・・『呼んだ』?」
周囲を警戒し、あらゆる方角を見渡したが、何も見当たらない。何も起こっていない。
『ベリアル』と『それ以外の全員』という形で、膠着状態となっているだけだ。
だが…既に『ある異変』が起こっていた。
最初にその異変に気付いたのは、和人であった。
「え?・・・1人、多い?」
この場に『1人』、人数が増えていたことに、和人は気づいた。
その1人が、いつからその場に居たのかは分からない。
和人は『その疑問』が気に掛かった。
だが、それよりも、もっと重要な問題が、彼には見えている。
だから、和人は叫んだ。
「ジャレットさん!!レンドさん!!後ろです!!!」
『増えていた1人』は、レンドとジャレットの背後に立っていたのだ。
「ウゥ~ッ…アァ~~ァ……」
どこからともなく、彼らの背後に現れた1人の男。
それは『頭に麻袋を被った男』であった。
男は小さくうめき声をあげながら、ガクガクブルブルと小刻みに揺れている。
その姿は、まさに『異常』というのがピッタリな言葉である。
再び、和人が叫ぶ。
「気を付けてくださいっ!!こいつら、例の殺人鬼だっ!!」
急に現れた『麻袋を被った男』は、実に恐ろしかった。
動きの奇怪さ、井出たちの不気味さ。
その姿を見て、普通の感性を持ち合わせていれば、恐怖するだろう。
だが、その『恐怖』という普通の反応を示さないものが、この場に1人だけ居る。
それは『レンド』だ。
レンドは、笑っていた。
「あぁ?・・・なんだ、お前?」
レンドは笑顔ではある。だが、笑っているのは口元だけ。
彼の目はクワっと見開かれ、瞬き一つせずに、麻袋の男を見据えて話しかける。
「いつの間に、俺らの後ろに――――」
しかし、会話は『悲鳴』により中断されてしまう。
「ギャァァァァ!!?」
悲鳴は、酔っ払い5人組から聞こえてきた。
「ひ、ひぃぃぃぃーーーっ!?」
「な、なんだってんだぁ!?おい!?」
「や、やべぇ!なんか、やべぇぞ!?」
彼らの内、2名が地面に倒れており、残る3人は錯乱状態になっていた。
…それもそのはずである。
地面に倒れている2人は、頭が切り落とされていたのだ。
和人たちの立ち位置は、レンドたちから少し離れた位置に居る。
その為、全貌を見ることが出来た。
そして、その一部始終を見ていた和人たちは、恐怖する。
「な、なんじゃと・・・」
「どうして!?何が起こったの!?カズト君、何か見えた!?」
「カ、カズト様・・・アイツ、危険デス・・・」
彼らが恐れたのは『首無し遺体の凄惨さ』では無い。
『別の事柄』に対して、恐怖したのだ。
首が斬り落とされた遺体よりも、恐れたもの…
それは…ある『謎』についてだ。
和人は、その『謎』についての恐怖を、無意識に呟いた。
「い、いつの間に……『やった』んだ?」
そう。
これこそ、恐れたもの。
何も見えなかった。
このような殺人を『いつやった』のか…それが分からないのだ。
誰も、見ていなかった。
誰も、気づかなかった。
これだけの人数がいるというのに…『誰も』だ。
『ベリアル』と『麻袋の男』が、『何』をしたのかが分からない。
その『謎』が『恐怖』なのだ。
麻袋の男とベリアルに挟まれ、睨み合っていたレンドたちも、遠巻きながらそれを見ていた。
そして、ジャレットが独り言のようにボソリと呟く。
「やばいな……レンド。何か見えたか?」
「いいえ。何も見えなかったッス…こいつぁ、ちょいとやばそうっスね?隊長」
2人は一言づつ語り終えると、しばしの沈黙の後、麻袋の男に向かって一斉に走り出した。
「奴が何かしてくる前に、問答無用で行くぞっ!レンドォォォ!!!」
「了解ぃぃっ!隊長ぉぉぉっ!!」
レンドは軽快に返答し、背中に背負った『長すぎるロングソード』を、一気に引き抜いた。
「っしゃあああぁぁぁぁ!行くぜぇぇぇぇ!!」
そして、彼はその勢いを保ったまま、麻袋の男に向かって一陣の風のごとく突撃する。
「アウアウアゥ~…ウゥアァ~~…」
麻袋の男は、2人の突進を微動だにせず、眺めている。
そして、彼はうめき声をあげながら、レンドに向かってゆっくりと手を翳した。
「んんっ!?」
凄まじいスピードで突っ込んでいたレンドが、何かに気づく。
そして、突進に急ブレーキをかけ、思い切り真横に飛んで、通路の石壁にドシン!とぶち当たった。
「カァーッ!いってぇ!!」
実に奇怪な行動であった。
その様子を見たジャレットが、すぐさま、レンドに問いかける。
「ど、どうした!?レンド!?」
「隊長!!よくわかんねぇけど、『何か来た』ッス!?」
『何かが来た』
レンドは迅速にそう答えた。
そして、その返答の1秒後。
更なる異変が起こる。
ドッッ!!パァァァァーーッン!!
衝突音と弾けるような音が響き渡ったのだ。
その音は、5人組が居る方角から聞こえてきた。
『麻袋の男』と『レンド』の対角線上には『5人組(今や3人組であるが)』が居た。
和人たちも、悲鳴の方角を振り向き、その光景を見た。
「な、なんだ!?あれは一体!?」
和人が疑問を叫んだ。
『3人組の1人』が、吹き飛んで空中を舞っていたのだ。
彼の体はペチャンコになっており、『勢いよく投げた球に跳ねられたボウリングピン』のように、跳ねている。
『残る2人組』は蜘蛛の子を散らしたように、悲鳴を上げながら一目散に逃げて行く。
その異常な光景を、和人はアモンに詰め寄った。
「アモン!!何が起こったんだ!?あの人、まるで『大型トラック』に衝突したような感じだったぞ!?」
「わ、分からぬ!これが・・奴の能力か!?」
「分からないって・・・じゃあ、黙って見てるだけじゃダメだろ!今すぐ加勢しなきゃ!!」
「待て!それはならぬ!!」
「ふ、ふざけるな!この期に及んで何を見てろってんだ!?『見た』ところで、『何が起こった』のか分からなかったじゃないか!!」
苛立つ和人に、ミルとゴーフレットも賛同を始める。
「そうよ!もう黙ってらんないわ!このままじゃ2人が危ない!」
「アモン様、今ナラ、数の優位でワレラが有利なはずデス。先にあの2人がやられてしまうと、数の有利性が減っていきマス」
今にも飛び出していきそうな3人を前に、アモンは再び強く制止する。
「ならん!!皆!落ち着くのじゃ!より勝算が高い策を練らねばならん!無暗に突っ込むのは『無策』と言うことに他ならんのじゃ!!」
「そんなこと言ったって、策も何もないだろう!?」
和人の言葉を聞き、アモンは右目をパチリと閉じる。
「・・・まあ、そう焦るでない。策ならば・・・『ある』のじゃ!」
和人たちの談義は進む。
しかし、その間も、レンドたちの戦いは続いている。
…といっても、互いに出方を伺っており、場は硬直している状況となっていた。
レンドが麻袋の男に語り掛ける。
「おい!お前!!さっきのは魔法か!?あんなん、見たことねーぞ!?」
「ウゥゥ~・・・アァァ~ァ‥‥」
「ありゃ?・・・話が通じてねぇかな?」
麻袋の男の呻き声を聞き、レンドはポリポリと頭を掻く。
「どうやら、会話は出来ないようだな」
彼との『意思疎通』は無理と見たジャレットが、目を細めながらレンドに小声で語り掛ける。
「レンド、奴の左右から挟撃で行くぞ?」
剣を強く握りしめ、身構えるジャレットに、レンドが言葉を返す。
「いやぁ・・隊長、ちょいと待ってくださいよ」
レンドはニヤリと笑い、ロングソードを腰より低い位置に構える。
「ここは、俺にやらせてもらえないッスかね?」
レンドは自信ありげに喋るが、当然ながら、ジャレットの顔は芳しくない。
「おい!そんなこと言ってる場合じゃないだろう!?さっき、あいつの『術』を見ただろうが!?」
意見を否定したジャレットを、レンドはじっと見つめ、静かに一言を呟く。
「隊長・・・」
彼の目を見つめ返すジャレット。
レンドは視線を逸らすことなく、じっと見つめ続ける。
覗き込んだレンドの瞳には、強い意志が籠っている。
しばし、視線で押し合う2人であったが、やがてジャレットが腰を剣を納める。
「ちっ!・・・ったくよぉ!お前は何も変わっちゃいない!大馬鹿野郎だよ!勝手にしやがれ!」
「へへっ。ありがとうございます。隊長」
「やばくなったら、すぐに加勢するからな」
「へいへい・・・っと」
ジャレットが見守る中、レンドは堂々と、麻袋の男に向かって歩き始めた。
「よぉ。あんた、強えーだろ?」
「アウアウアウゥ~~…」
「やっぱ、話は通じねぇのか?」
歩きながら語り掛けるレンドに、麻袋の男がゆっくりと手を翳す。
「ウゥゥ~アァ~…」
「話は通じなくても分かるぜ?あんたは強い・・・・だからよぉ?」
麻袋の男が、手から『見えない何か』を発射する。
だが、レンドは臆することなく、叫びながら男に向かって突進していく。
「俺と、ちょっと遊ばねぇかぁーーーっ!!?」
叫びながら『見えない何か』に突進していく最中、レンドは考えた。
『恐らく、コイツは魔法を使ってやがる。それも、見えねぇ魔法だ。何かは分からねーけど、感覚としては『風の魔法』に近いものだ。風の魔法は迫り来る衝撃が見えるが、こいつの術は何も見えない。だが、特性が似ている・・・そこに突破の糸口がある。『風の類』に間違いはないんだ』
見えない何かが、レンドに迫る。
気配や感覚で、それが分かる。
レンドは、ニヤリと笑った。
「へへ・・でもよぉ」
そして、『見えない何か』がレンドに着弾し、弾ける音が響き渡る。
バッフゥォオオオオンンン‥…!!
しかし…その音は今までとは違う音だった。
例えるならば、台風の風。
台風の強力な突風が、一瞬だけ吹き荒れたような感じのものだ。
そして、直撃したと思われたレンドは、無傷で立っている。
「・・・当たらなきゃ、意味ねーっスよ?」
レンドはロングソードを振りぬいた姿勢だった。
それを見て、ベリアルが珍しい表情を見せる。
「何と!?素晴らしい!!?『あれ』を『切った』のですか!?」
ベリアルは喜んでいた。
レンドが着弾のギリギリで見えない何かを切ったのだ。
そして、彼は言葉を続ける。
「しかし、おかしいですね・・・ただの剣などで切れるはずがない。『風』を『剣で切れるはずがない』のと同じ・・・さてはあなた、何か『技』を使いましたね?」
「生憎だけど、あんたらの術が秘密なように、俺も秘密を明かすつもりはねーっスよ」
「ははは!素晴らしい!・・・・まあ、構いませんよ?あなたの技の予想は着きます」
「へぇ~!?随分、自信たっぷりっスねー・・・まあ、口だけなら何とでも言えるんスよね」
「あなた、風の魔法を剣に掌らせてるんでしょう?」
「・・・・あぁ?」
ベリアルの言葉を聞き、レンドが苛立ちの色を見せる。
「恐らくアゼルさんの術を『風魔法の類』と考え、剣に風魔法を付与し、気流同士をぶつけるように相殺した。違いますか?」
「・・・何だと?」
苛立つレンドに構うことなく、ベリアルは説明を続ける。
「とても賢明な判断です。『火』も『水』も、この術を防げません。火炎魔法では、炎で風を止めれるはずも無く、逆に風で勢いを増した炎が、あなたを包み込み、焼き殺す。水魔法では、水ごと風圧で押し込まれてしまい、風で水圧が増した水礫が、あなたをハチの巣にしてしまう」
「はぁ?何言ってんスか?あんた・・・」
「『炎』も『水』も、『重力』や『気流』などの『運動エネルギー』によって動きが生じる流体ですからね。風には逆らえません」
「はっはっは。あんた意味わかんないっスよ?まあ、俺は風魔法を対策したことがあってね。あんたの考えは、多分合ってるよ?でも、俺はあの『見えない術』を『切った』んだ」
「確かに!だから、素晴らしいのです。あなたは本当に期待通りの人だ」
「へへ、照れるねぇ。そんなに褒めんなって・・・だからよぉ、これってもう、あんたらの『負け』ってことじゃないっスか?」
ベリアルの講釈を黙って聞いていたレンドだが、彼の説明を理解出来ずにいた。
だが、彼には、たった一つだけ揺るぎない『事実』がある。
それは、『謎の術』を『相殺』したということ。
勝機を確信するには、十分な『事実』である。
『技を打ち破られた』ベリアルたち。
この事実に、レンドは彼が気圧されると思っていた。
だが‥‥彼はまだ、余裕に満ちた笑顔で立っている。
「何っスか?その笑顔は。まぁ~だ、強がってんの?」
「いいえ。強がりではありません。ただ、ここまでは期待通りですが、この後はどうかと思いまして・・・」
「・・・なんだと?」
「期待通りの人じゃないと、この後、死んでしまいますので・・・心配なのです」
「へっ・・・言うじゃねぇかよ。こっちだって、まだ秘策はあるんだぜ?」
ベリアルだけではなく、レンドも笑っていた。
彼は騎士であり、武人なのだ。
純粋な強者との闘いに、彼は高揚していた。
だが、そんな彼に、ベリアルは冷水を浴びせるような言葉を告げる。
「そうだ!ヒントを上げましょう。あなたには、すぐに死んで貰いたくないですから」
「はぁ~っ!?」
真剣勝負の最中、素っ頓狂なことを言い出したベリアルに、レンドは困惑した。
だが、構わずベリアルは言葉を続ける。
「どうか、あの『術』を『ただの風魔法』とは思わないでください」
彼の言葉を聞き、しばらく、レンドは黙り込んでいた。
そして、沈黙を破るように、小さな音が鳴る。
…ブチッ。
レンドのこめかみの血管が、憤怒により切れた。
ベリアルの助言は、彼のプライドを著しく汚したのだ。
「てんめぇ~・・・『命を掛け合ってる相手』に『技の一端』を『教える』だぁ!?」
レンドの顔は怒り心頭である。
しかし、ベリアルは彼の心境を理解できない。
彼にとっては、そのような感情は欠片もない。
もし、ベリアルに『プライド』について聞いてみたら、彼はこう返答するだろう。
『そんなものは、全くの無駄である。むしろプライドや拘りなどは、目的の達成を阻害するだけの、邪魔なものに他ならない』
‥‥と。
だから、ベリアルはレンドに質問をした。
「おや?どうなさったんですか?顔が急に怖くなりましたね」
ベリアルには、彼の怒りが理解できなかったため、素直に聞いただけなのだ。
だが、レンドから見れば、挑発しているに等しい言葉だ。
「おいおい・・・マジで・・・あんたら、俺をキレさせたいってことッスか?」
「キレる?あなたの言ってることが理解できません。ただ、僕たちはもう少しだけ、あなたの実力を見たいだけです」
ベリアルの『この余計な一言』に、レンドはキレた。
「なめてんじゃねーぞぉぉ!?てめぇぇぇぇ!?」
「あはは。『4騎士長』がどれほどのものか、もっと見せてください」
間髪入れず、彼は麻袋の男に向かって飛び込んでいく。
――――彼らの死闘を和人たちも見ていた。
「す、すごい!あのレンドって人!!本当にすごいぞ!?」
「でしょう!?ああ見えても、あいつは4騎士長なのよ!」
「確かニ・・・あのニンゲンなら、勝てるカモしれまセン」
レンドの健闘に喜ぶ3人であったが、アモンだけは難色を示している。
「・・・いや、無理じゃな」
迷う素振りも無く、否定するアモンに、和人が問いかけた。
「無理って、どうしてだよ?」
「奴の能力が、ただの『風魔法』のハズがないのじゃ。そんなに簡単な相手ではないわい。その考えを捨てねば・・・レンドとかいう阿呆は負ける」
「負けるって・・あんなに押してるのにか?」
「うむ、そうじゃ・・・」
アモンは片目をパチリと閉じ、ヒソヒソと和人たちに囁いた。
「やはり、この策で行くしか無いのう・・・和人よ。チャンスは一度じゃぞ?全ては主に掛かっておる」
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