表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/35

■第32話『殺人鬼 vs 4騎士長レンド』

■第32話 『殺人鬼 vs 4騎士長レンド』




『アモンの名を悟られてはいけない』




ベリアルに詰め寄られているアモン。

和人は『軽く嘘の名前を言えば良いのに』と思っていたが、アモンは口を閉ざしたままだ。



何故、嘘をつかないのか。

何故、名を知られるとまずいのか。


それらの理由は不明である。


しかし、謎は多くとも、今が危機的状況であることには変わらない。

まさに、緊張感が溢れる場となっている。



そこに、ある一人の男が空気も読まずに飛び入ってきた。



その男の名は『レンド』。

彼は『4騎士長の1人』である。



和人が昼間に『騎士団のパレード』で見た男。

彼はそのときと同じく、背中に『長すぎるロングソード』を背負っている。



ジャレットと共に談笑しているレンド。



その彼の印象はと言うと……



「いやぁー!探してたんスよ!隊長ぉ!!あっはっは!」


「お、おう・・・そうかよ」



実に、能天気であった。



「いやぁーー!隊長!!マジ懐かしいッス!!いつ以来でしょうねぇぇ!?あっはっはっは!」


「お、おい・・いて、イテテ。ちょっと・・・叩くの強いって。あの、レンド君?」



豪快に笑いながら、彼はジャレットの肩をバシバシと叩く。



単純な体育会系の男。

ただのハイテンションが過ぎる男。


和人には、そういう風にしか見えなかった。



「えぇ~?・・・ほ、本当にあの人が4騎士長の1人・・・ですか?」


「あっはは・・・うん、そう。周りから脳筋って言われてるくらい、筋金入りのバカなの・・・」



和人の疑問に対し、ミルが困った顔で答えている。



「僕、騎士のイメージって、すごい精悍な存在だと思ってたんですけど・・・なんていうか・・・あの人を見てると・・・」


「うむ・・・なんじゃ?あの阿呆は・・・」


「すごい元気なニンゲンなのデス。ゴブリンよりも元気デス」



和人たちから出てくる『残念な感想』に対し、ミルが必死に否定を始める。



「あ!違う違う!ちゃんと騎士団って精悍でカッコイイのよ!?・・・あ、あいつだけだから!ああいうのは!!お願いだから、みんな信じてよぉーっ!?」



だが、それは『否定』というよりも『懇願』しているような感じだ。

それほど彼の印象は強烈なものだった。



しかし……



ここにいる『ある重要な人物』は違った反応を示している。



その重要な人物…そう、ベリアルだ。



「まさか・・・まさか、こんなところで・・・ははは」



和人たちはベリアルを前にしている為、彼の変化に気付いた。



ジャレットとレンドの2人は少し離れた位置で談笑を続けている。

ベリアルはぶつぶつと呟きながら、レンドを凝視しているのだ。



彼は、アモンに一言だけを告げ、レンドに向かって、スタスタと歩いて行ってしまう。



「イリーガル嬢。お時間を取らせてしまいましたね。お許しください」


「お、おい・・・・なんじゃあ?」



アモンは困惑した表情を見せている。

彼女にも何が起こったのかは分からない様子であったが、和人はアモンに問いかけた。



「なぁ?アモン。何が起こったんだ?」


「わ、分からぬ・・・なにやら、あのレンドという男に興味が移ったようじゃのう」


「何でだ?あいつの目的は、お前じゃないのか?」


「じゃから、分からぬと言っておろう・・・それよりも、見よ」



アモンが指さした先。

そこには、レンドとジャレットの2人を前に、丁寧に頭を下げているベリアルの姿が。



「お初にお目にかかります。僕はベリアルと申します」


「あ・・・はぁ。ご丁寧にどうも」



レンドはポカンと口を開け、目の前に居る『品の良い青年』を眺めた。



「俺はレンドって言います」


「レンドさんですか。ご丁寧にありがとうございます。失礼ですが、一つだけ質問させて頂いてもよろしいですか?」


「ええ?質問っスか?・・・ええっと、何っスかね?」


「あなたは、あの『4騎士長』の『レンドさん』ですか?」


「え?まあ・・・一応、『4騎士長』ってことになってるっス」


「ははは。そうですか・・・あなたが4騎士長ですか」


「ええ。そうっス・・・あのぉ、何スか?あ!サイン欲しいとか!?」



まるで、レンドを確認するような会話を続け、ベリアルはニンマリと微笑む。



「何という幸運でしょうか・・・まさか、こんな所で出会えるとは・・・」



その笑顔は、実に不気味だった。


『目の前にいる青年』が危険な存在ということを、レンドは知らない。

だが、その笑顔を見ただけで、4騎士長である彼は、何かを感じ取る。



「・・・あんた、只者ただもんじゃねーな?」


「ははははは。探してたんです。あなたたち『4騎士長』を」



様相が変化していくベリアル。

不穏な気配を察知したジャレットが、不意に叫ぶ。



「レンド!距離を取れ!!」


「了解!隊長ぉ!!」



2人はバックステップを繰り出し、ベリアルとの距離を取った。

ベリアルと2人が向かい合い、睨み合う。



「隊長!あいつ、何者なにもんっスか!?」


「俺も先ほど出会ったばかりで、詳しくは知らないんだ・・・だが『やばい奴』ってことだけは分かるだろう?」


「はは!?確かに!やばそうっスわ!」



ジャレットとレンドは緊張と警戒を高める。


しかし、ベリアルは2人とは対照的であった。

平然と突っ立って、ただ、向かい合う2人をじっと見据えているだけだ。




そして…



「アゼルさん・・・」



彼は小声で呟いた。




すると、どこからともなく『ヒュゥ~』という口笛に似た音が聞こえてくる。




「なんだぁ?・・・あいつ、口笛拭きませんでした?」


「油断するな!レンド!」



レンドとジャレットはベリアルと睨み合ったまま、動かずにいる。

彼らは互いに動向を伺い、硬直状態に陥っている。



その間、和人たちには『口論』が起こっていた。




「僕たちも加勢しなきゃ!ミルさん、行きましょう!ゴーフレットも!」


「ええ!」「ハイ!カズト様!」



当然ながら、和人、ミル、ゴーフレットの3名は、レンドたちに加勢しようとしていた。



しかし…



「ならぬ!!待つのじゃ!!」



彼らはアモンによって制止されていたのだ。

気持ちが焦る3人は、アモンに食ってかかるように問いかけ始める。



「ど、どうしてだよ!?」


「今は無暗に動くでない!奴が『何か』を発動させたはずじゃ!その『何か』を見極めねばならん!」


「『何か』を?・・・ソレは何でショウ?アモン様」


「分からぬ!それが分からぬから、よく観察するのじゃ!」


「ちょっと、アモンちゃん!今は2人がピンチなのよ!早く助けに行かなきゃ!」


「皆のもの!落ち着くのじゃ!危機だからこそ、今は冷静に思考する必要があるんじゃ!!」



各々が焦る気持ちをアモンにぶつけたが、彼女は額に汗を垂らしながら、必死に彼らを制止し続ける。

そして、アモンは『ある疑問』を彼らに問い返した。



「主ら・・・先ほど『笛の音』のような音を耳にしたかのう?」


「ハ、ハイ・・口笛っぽかったデス」


「そうね。確かに聞こえたけど・・・でも、アモンちゃん。何も起こってないわよ?あれって、何か意味があるのかしら?」


「それは分からぬ・・・じゃが、奴は意味のない行動など、するはずがないのじゃ。必ず意味がある。何かが発動したのか・・・・或いは、『何者か』を呼んだのか・・・」



アモンの言葉を、和人が反復する。



「何者かを・・・『呼んだ』?」



周囲を警戒し、あらゆる方角を見渡したが、何も見当たらない。何も起こっていない。

『ベリアル』と『それ以外の全員』という形で、膠着状態となっているだけだ。



だが…既に『ある異変』が起こっていた。



最初にその異変に気付いたのは、和人であった。



「え?・・・1人、多い?」



この場に『1人』、人数が増えていたことに、和人は気づいた。

その1人が、いつからその場に居たのかは分からない。


和人は『その疑問』が気に掛かった。

だが、それよりも、もっと重要な問題が、彼には見えている。


だから、和人は叫んだ。



「ジャレットさん!!レンドさん!!後ろです!!!」



『増えていた1人』は、レンドとジャレットの背後に立っていたのだ。



「ウゥ~ッ…アァ~~ァ……」



どこからともなく、彼らの背後に現れた1人の男。

それは『頭に麻袋を被った男』であった。


男は小さくうめき声をあげながら、ガクガクブルブルと小刻みに揺れている。

その姿は、まさに『異常』というのがピッタリな言葉である。



再び、和人が叫ぶ。



「気を付けてくださいっ!!こいつら、例の殺人鬼だっ!!」



急に現れた『麻袋を被った男』は、実に恐ろしかった。

動きの奇怪さ、井出たちの不気味さ。


その姿を見て、普通の感性を持ち合わせていれば、恐怖するだろう。

だが、その『恐怖』という普通の反応を示さないものが、この場に1人だけ居る。




それは『レンド』だ。




レンドは、笑っていた。



「あぁ?・・・なんだ、お前?」



レンドは笑顔ではある。だが、笑っているのは口元だけ。

彼の目はクワっと見開かれ、瞬き一つせずに、麻袋の男を見据えて話しかける。



「いつの間に、俺らの後ろに――――」



しかし、会話は『悲鳴』により中断されてしまう。



「ギャァァァァ!!?」



悲鳴は、酔っ払い5人組から聞こえてきた。



「ひ、ひぃぃぃぃーーーっ!?」

「な、なんだってんだぁ!?おい!?」

「や、やべぇ!なんか、やべぇぞ!?」



彼らの内、2名が地面に倒れており、残る3人は錯乱状態になっていた。



…それもそのはずである。

地面に倒れている2人は、頭が切り落とされていたのだ。



和人たちの立ち位置は、レンドたちから少し離れた位置に居る。

その為、全貌を見ることが出来た。


そして、その一部始終を見ていた和人たちは、恐怖する。



「な、なんじゃと・・・」

「どうして!?何が起こったの!?カズト君、何か見えた!?」

「カ、カズト様・・・アイツ、危険デス・・・」



彼らが恐れたのは『首無し遺体の凄惨さ』では無い。

『別の事柄』に対して、恐怖したのだ。



首が斬り落とされた遺体よりも、恐れたもの…



それは…ある『謎』についてだ。

和人は、その『謎』についての恐怖を、無意識に呟いた。




「い、いつの間に……『やった』んだ?」




そう。

これこそ、恐れたもの。



何も見えなかった。



このような殺人を『いつやった』のか…それが分からないのだ。




誰も、見ていなかった。

誰も、気づかなかった。




これだけの人数がいるというのに…『誰も』だ。





『ベリアル』と『麻袋の男』が、『何』をしたのかが分からない。

その『謎』が『恐怖』なのだ。



麻袋の男とベリアルに挟まれ、睨み合っていたレンドたちも、遠巻きながらそれを見ていた。



そして、ジャレットが独り言のようにボソリと呟く。



「やばいな……レンド。何か見えたか?」


「いいえ。何も見えなかったッス…こいつぁ、ちょいとやばそうっスね?隊長」



2人は一言づつ語り終えると、しばしの沈黙の後、麻袋の男に向かって一斉に走り出した。



「奴が何かしてくる前に、問答無用で行くぞっ!レンドォォォ!!!」


「了解ぃぃっ!隊長ぉぉぉっ!!」



レンドは軽快に返答し、背中に背負った『長すぎるロングソード』を、一気に引き抜いた。



「っしゃあああぁぁぁぁ!行くぜぇぇぇぇ!!」



そして、彼はその勢いを保ったまま、麻袋の男に向かって一陣の風のごとく突撃する。



「アウアウアゥ~…ウゥアァ~~…」



麻袋の男は、2人の突進を微動だにせず、眺めている。

そして、彼はうめき声をあげながら、レンドに向かってゆっくりと手をかざした。



「んんっ!?」



凄まじいスピードで突っ込んでいたレンドが、何かに気づく。

そして、突進に急ブレーキをかけ、思い切り真横に飛んで、通路の石壁にドシン!とぶち当たった。



「カァーッ!いってぇ!!」



実に奇怪な行動であった。

その様子を見たジャレットが、すぐさま、レンドに問いかける。



「ど、どうした!?レンド!?」


「隊長!!よくわかんねぇけど、『何か来た』ッス!?」



『何かが来た』

レンドは迅速にそう答えた。



そして、その返答の1秒後。

更なる異変が起こる。



ドッッ!!パァァァァーーッン!!



衝突音と弾けるような音が響き渡ったのだ。



その音は、5人組が居る方角から聞こえてきた。

『麻袋の男』と『レンド』の対角線上には『5人組(今や3人組であるが)』が居た。



和人たちも、悲鳴の方角を振り向き、その光景を見た。



「な、なんだ!?あれは一体!?」



和人が疑問を叫んだ。



『3人組の1人』が、吹き飛んで空中を舞っていたのだ。

彼の体はペチャンコになっており、『勢いよく投げた球に跳ねられたボウリングピン』のように、跳ねている。

『残る2人組』は蜘蛛の子を散らしたように、悲鳴を上げながら一目散に逃げて行く。



その異常な光景を、和人はアモンに詰め寄った。



「アモン!!何が起こったんだ!?あの人、まるで『大型トラック』に衝突したような感じだったぞ!?」


「わ、分からぬ!これが・・奴の能力か!?」


「分からないって・・・じゃあ、黙って見てるだけじゃダメだろ!今すぐ加勢しなきゃ!!」


「待て!それはならぬ!!」


「ふ、ふざけるな!この期に及んで何を見てろってんだ!?『見た』ところで、『何が起こった』のか分からなかったじゃないか!!」



苛立つ和人に、ミルとゴーフレットも賛同を始める。



「そうよ!もう黙ってらんないわ!このままじゃ2人が危ない!」


「アモン様、今ナラ、数の優位でワレラが有利なはずデス。先にあの2人がやられてしまうと、数の有利性が減っていきマス」



今にも飛び出していきそうな3人を前に、アモンは再び強く制止する。



「ならん!!皆!落ち着くのじゃ!より勝算が高い策を練らねばならん!無暗に突っ込むのは『無策』と言うことに他ならんのじゃ!!」


「そんなこと言ったって、策も何もないだろう!?」



和人の言葉を聞き、アモンは右目をパチリと閉じる。



「・・・まあ、そう焦るでない。策ならば・・・『ある』のじゃ!」





和人たちの談義は進む。

しかし、その間も、レンドたちの戦いは続いている。



…といっても、互いに出方を伺っており、場は硬直している状況となっていた。




レンドが麻袋の男に語り掛ける。




「おい!お前!!さっきのは魔法か!?あんなん、見たことねーぞ!?」


「ウゥゥ~・・・アァァ~ァ‥‥」


「ありゃ?・・・話が通じてねぇかな?」



麻袋の男の呻き声を聞き、レンドはポリポリと頭を掻く。



「どうやら、会話は出来ないようだな」



彼との『意思疎通』は無理と見たジャレットが、目を細めながらレンドに小声で語り掛ける。



「レンド、奴の左右から挟撃で行くぞ?」



剣を強く握りしめ、身構えるジャレットに、レンドが言葉を返す。



「いやぁ・・隊長、ちょいと待ってくださいよ」



レンドはニヤリと笑い、ロングソードを腰より低い位置に構える。



「ここは、俺にやらせてもらえないッスかね?」



レンドは自信ありげに喋るが、当然ながら、ジャレットの顔は芳しくない。



「おい!そんなこと言ってる場合じゃないだろう!?さっき、あいつの『術』を見ただろうが!?」



意見を否定したジャレットを、レンドはじっと見つめ、静かに一言を呟く。



「隊長・・・」



彼の目を見つめ返すジャレット。

レンドは視線を逸らすことなく、じっと見つめ続ける。



覗き込んだレンドの瞳には、強い意志が籠っている。



しばし、視線で押し合う2人であったが、やがてジャレットが腰を剣を納める。




「ちっ!・・・ったくよぉ!お前は何も変わっちゃいない!大馬鹿野郎だよ!勝手にしやがれ!」


「へへっ。ありがとうございます。隊長」


「やばくなったら、すぐに加勢するからな」


「へいへい・・・っと」



ジャレットが見守る中、レンドは堂々と、麻袋の男に向かって歩き始めた。



「よぉ。あんた、強えーだろ?」


「アウアウアウゥ~~…」


「やっぱ、話は通じねぇのか?」



歩きながら語り掛けるレンドに、麻袋の男がゆっくりと手を翳す。



「ウゥゥ~アァ~…」


「話は通じなくても分かるぜ?あんたは強い・・・・だからよぉ?」



麻袋の男が、手から『見えない何か』を発射する。

だが、レンドは臆することなく、叫びながら男に向かって突進していく。



「俺と、ちょっと遊ばねぇかぁーーーっ!!?」



叫びながら『見えない何か』に突進していく最中、レンドは考えた。



『恐らく、コイツは魔法を使ってやがる。それも、見えねぇ魔法だ。何かは分からねーけど、感覚としては『風の魔法』に近いものだ。風の魔法は迫り来る衝撃が見えるが、こいつの術は何も見えない。だが、特性が似ている・・・そこに突破の糸口がある。『風の類』に間違いはないんだ』




見えない何かが、レンドに迫る。

気配や感覚で、それが分かる。



レンドは、ニヤリと笑った。



「へへ・・でもよぉ」



そして、『見えない何か』がレンドに着弾し、弾ける音が響き渡る。




バッフゥォオオオオンンン‥…!!




しかし…その音は今までとは違う音だった。



例えるならば、台風の風。

台風の強力な突風が、一瞬だけ吹き荒れたような感じのものだ。



そして、直撃したと思われたレンドは、無傷で立っている。




「・・・当たらなきゃ、意味ねーっスよ?」




レンドはロングソードを振りぬいた姿勢だった。

それを見て、ベリアルが珍しい表情を見せる。



「何と!?素晴らしい!!?『あれ』を『切った』のですか!?」



ベリアルは喜んでいた。

レンドが着弾のギリギリで見えない何かを切ったのだ。


そして、彼は言葉を続ける。



「しかし、おかしいですね・・・ただの剣などで切れるはずがない。『風』を『剣で切れるはずがない』のと同じ・・・さてはあなた、何か『技』を使いましたね?」


「生憎だけど、あんたらの術が秘密なように、俺も秘密を明かすつもりはねーっスよ」


「ははは!素晴らしい!・・・・まあ、構いませんよ?あなたの技の予想は着きます」


「へぇ~!?随分、自信たっぷりっスねー・・・まあ、口だけなら何とでも言えるんスよね」


「あなた、風の魔法を剣に掌らせてるんでしょう?」


「・・・・あぁ?」



ベリアルの言葉を聞き、レンドが苛立ちの色を見せる。



「恐らくアゼルさんの術を『風魔法の類』と考え、剣に風魔法を付与し、気流同士をぶつけるように相殺した。違いますか?」


「・・・何だと?」



苛立つレンドに構うことなく、ベリアルは説明を続ける。



「とても賢明な判断です。『火』も『水』も、この術を防げません。火炎魔法では、炎で風を止めれるはずも無く、逆に風で勢いを増した炎が、あなたを包み込み、焼き殺す。水魔法では、水ごと風圧で押し込まれてしまい、風で水圧が増した水礫が、あなたをハチの巣にしてしまう」


「はぁ?何言ってんスか?あんた・・・」


「『炎』も『水』も、『重力』や『気流』などの『運動エネルギー』によって動きが生じる流体ですからね。風には逆らえません」


「はっはっは。あんた意味わかんないっスよ?まあ、俺は風魔法を対策したことがあってね。あんたの考えは、多分合ってるよ?でも、俺はあの『見えない術』を『切った』んだ」


「確かに!だから、素晴らしいのです。あなたは本当に期待通りの人だ」


「へへ、照れるねぇ。そんなに褒めんなって・・・だからよぉ、これってもう、あんたらの『負け』ってことじゃないっスか?」



ベリアルの講釈を黙って聞いていたレンドだが、彼の説明を理解出来ずにいた。

だが、彼には、たった一つだけ揺るぎない『事実』がある。


それは、『謎の術』を『相殺』したということ。

勝機を確信するには、十分な『事実』である。



『技を打ち破られた』ベリアルたち。

この事実に、レンドは彼が気圧されると思っていた。


だが‥‥彼はまだ、余裕に満ちた笑顔で立っている。



「何っスか?その笑顔は。まぁ~だ、強がってんの?」


「いいえ。強がりではありません。ただ、ここまでは期待通りですが、この後はどうかと思いまして・・・」


「・・・なんだと?」


「期待通りの人じゃないと、この後、死んでしまいますので・・・心配なのです」


「へっ・・・言うじゃねぇかよ。こっちだって、まだ秘策はあるんだぜ?」



ベリアルだけではなく、レンドも笑っていた。


彼は騎士であり、武人なのだ。

純粋な強者との闘いに、彼は高揚していた。



だが、そんな彼に、ベリアルは冷水を浴びせるような言葉を告げる。




「そうだ!ヒントを上げましょう。あなたには、すぐに死んで貰いたくないですから」


「はぁ~っ!?」




真剣勝負の最中、素っ頓狂なことを言い出したベリアルに、レンドは困惑した。

だが、構わずベリアルは言葉を続ける。



「どうか、あの『術』を『ただの風魔法』とは思わないでください」




彼の言葉を聞き、しばらく、レンドは黙り込んでいた。

そして、沈黙を破るように、小さな音が鳴る。




…ブチッ。




レンドのこめかみの血管が、憤怒により切れた。

ベリアルの助言は、彼のプライドを著しく汚したのだ。




「てんめぇ~・・・『命を掛け合ってる相手』に『技の一端』を『教える』だぁ!?」



レンドの顔は怒り心頭である。

しかし、ベリアルは彼の心境を理解できない。

彼にとっては、そのような感情は欠片もない。



もし、ベリアルに『プライド』について聞いてみたら、彼はこう返答するだろう。


『そんなものは、全くの無駄である。むしろプライドや拘りなどは、目的の達成を阻害するだけの、邪魔なものに他ならない』


‥‥と。



だから、ベリアルはレンドに質問をした。



「おや?どうなさったんですか?顔が急に怖くなりましたね」



ベリアルには、彼の怒りが理解できなかったため、素直に聞いただけなのだ。

だが、レンドから見れば、挑発しているに等しい言葉だ。



「おいおい・・・マジで・・・あんたら、俺をキレさせたいってことッスか?」


「キレる?あなたの言ってることが理解できません。ただ、僕たちはもう少しだけ、あなたの実力を見たいだけです」




ベリアルの『この余計な一言』に、レンドはキレた。




「なめてんじゃねーぞぉぉ!?てめぇぇぇぇ!?」


「あはは。『4騎士長』がどれほどのものか、もっと見せてください」




間髪入れず、彼は麻袋の男に向かって飛び込んでいく。




――――彼らの死闘を和人たちも見ていた。



「す、すごい!あのレンドって人!!本当にすごいぞ!?」

「でしょう!?ああ見えても、あいつは4騎士長なのよ!」

「確かニ・・・あのニンゲンなら、勝てるカモしれまセン」



レンドの健闘に喜ぶ3人であったが、アモンだけは難色を示している。



「・・・いや、無理じゃな」



迷う素振りも無く、否定するアモンに、和人が問いかけた。



「無理って、どうしてだよ?」


「奴の能力が、ただの『風魔法』のハズがないのじゃ。そんなに簡単な相手ではないわい。その考えを捨てねば・・・レンドとかいう阿呆は負ける」


「負けるって・・あんなに押してるのにか?」


「うむ、そうじゃ・・・」



アモンは片目をパチリと閉じ、ヒソヒソと和人たちに囁いた。



「やはり、この策で行くしか無いのう・・・和人よ。チャンスは一度じゃぞ?全ては主に掛かっておる」

https://twitter.com/nrny9wZXq85mJ1M

こちらでツイッターをやってます

新しいアップデートや修正の予定など、こちらでご報告させて頂きます


もし続きが読みたい!など、気に入って頂けましたら・・

ブックマーク登録や、リツイートなど、よろしくお願いします。

フォローも出来ればお願いします・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ