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■第16話 『勝利』

■第16話 『勝利』




「!?・・・これは・・・」


僕はゴブリンのリーダーに向かって突撃した。

けど・・・その勢いは目の前の『壁』にストップを掛けられてしまう。


『壁』とは、ゴブリンたちで作られた『防御壁』だ。

僕は今、その前で立ち尽くしている。


ジャレットさんは、ゴブリンリーダーのことを『ホブゴブリン』と呼んでいた。

確かに有名な名前だ。ロープレだと、ちょっと強めのゴブリンだった気がする。



奴らは戦意を鼓舞するかのごとく、雄叫びを上げていた。



「ギャイィィィーッ!」「ギイィィィィーッ!」「グギィィィッ!」



『リーダー』である『ホブゴブリン』を守るように、ゴブリンたちは綺麗に整列している。



「こいつら・・・明らかに『防御の陣形』を組んでるよな?」



やつらの陣形や奇襲について、今までは気にする余裕がなかったけど・・・

今考えてみたら、ものすごく変に思える。



「もしかして・・・こいつらって、すごい賢くないか?」



『ゴブリン』は、単純な『ザコモンスター』だと思ってた・・・だって、それが相場だろ?

パーティーの皆の反応だって、そんな感じだった。



それが・・・


こんな意思疎通や集団行動が出来て、おまけに村まで作れっている

これじゃあ、まるで人間みたいじゃないか。



「はは・・・しかも、良く統率されてるよ」



ゴブリンたちの防御陣形の壁は、壁1枚につき6匹で構成されている。

横一列に並び、全員が盾を前に突き出したポーズ。


その壁が2層・・・つまり全部で12匹だ。



「数が多いな・・・・・行けるか?」



・・・いや、恐れるな!

ここで怖気づいていたら、何も変わらないんだ!



「そうだ・・・勝つんだ・・・・自分を信じろ!!」



僕は自分に自己暗示をかけるように呟く。

そんな僕の背中越しから、アモンはゴブリンの防御陣形を眺めている。

彼女は、余裕の笑みを浮かべていた。



「どうして、アモンはあんなに自信たっぷりなんだろう?」



あいつの考えていることは、僕には分からない。

ただ・・・アモンの更に後ろ側、そこに僕が戦う意味がある。


ジャレットさんとミルさん。そして、パーティメンバーたち。

彼らはもう満身創痍だ。僕がやらなきゃ、ここで皆終わってしまうんだ。



そうだ・・・皆のために。



「・・・僕は・・・負けられないんだ!!」




ホブゴブリンが叫び、ダガーを上空にかざした。



「ギィィィ!」



その叫びを合図に、前方の壁1枚、6匹のゴブリンが僕に進軍を開始する。

その進軍は、今までのものとは違う者だった。


今までは2~3匹の規模が小さい突撃が繰り返されていただけだった。

・・・でも、今回は違う。


ゆっくりと足並みをそろえた進軍だ。

ゴブリンたちの壁が僕に迫る。



「・・・来るか!?・・・なら、受けて立つぞ!!」



迫り来る壁に向かって、僕もゆっくりと前進を始めた。

僕とやつらは共に前進し、お互いが3mほどの距離まで接近する。


その場で全員が立ち止まり、向かい合う形となった。

僕とゴブリンたちは、少しも視線を逸らすことなく、互いに睨み合っている。



僕の正面には、横一列に並んだ6匹のゴブリンたち。

一瞬の静寂の後、ホブゴブリンがダガーを突き出し、今までで一番大きな声量で吠える。



「・・・ンンン!・・グギィィィィーッ!」



それは、やつらの『突撃の合図』だった。

6匹のゴブリンがダガーを構え、一斉に動き出す。



全員が、僕に向かって突進して来る!

でも、今の僕に『焦り』や『迷い』は無い!



「やつらを良く観察するんだ・・」



僕の『脳』が、少しでも状況を把握できるように・・・・ギリギリまで、やつらを観察するんだ。


観察するほどに・・・凝視するほどに!

僕の脳がフル稼働しているのが分かる!!



やつらはもう、1m手前まで迫っている。

そして、6匹全員でダガーを振り上げ、僕に斬り掛かってきた!


それでも、僕は動かず、じっと振り上げられたダガーを見ていた。


そして・・・僕の脳がある解答を導き出す。

それは、実に『シンプルな解答』だった。



「これは・・・ははっ!嘘だろ!?『真正面から受ける』のか!?」



さっきまでの僕なら、真正面なんて、びびって嫌がっていただろう。

・・・それは、自分自信が嫌と言う程、分かっている。



でも・・・今はもう、違うんだ!!




6匹が僕に襲い来る順番。

そして、効率的な反撃方法。


それが見える!

そして、戦う覚悟は、もう出来ているんだ!



あとは・・・



「・・・行くぞ」



僕は肩の力を抜き、半身の姿勢で構え、腰の重心を少し下に落とした。


僕は、格闘技なんてやったことがない。

だから、それがどういう動きかは分からない。

・・・でも、何となく『合気道』みたいな雰囲気に似てるのは分かる。



6匹は、ほぼ同時に攻めてくる。

でも、『ほぼ』同時というのは、個別の動きやタイミングが違うということだ。


その僅かなタイムラグ・・・そこに『攻略』の鍵がある。



『中央のゴブリン一匹』が一番早く、僕に斬りかかる。こいつが最初に倒すべき一匹だ。

振り下ろされたダガーを左手で『パシン!』と受け流し、がら空きになった顔を右拳で打ち抜いた。



パアァァァアン!

「グゲェ!?」



・・・これで、先ず1匹目が沈んだ。



次に『左から2番目』と『右端』のゴブリンが斬りかかってくる。

先に『左から2番目』の斬撃を、半歩だけ下がって流れるように躱す。

次に『右端』が繰り出す斬撃を姿勢を低くして潜り抜け、同時に胴体に肘を打ち込む。



ズドッ!

「グェェ!?」



そのまま勢いを止めることなく、『左から2番目』のゴブリンの顔面に、左裏拳を見舞った。



ゴッ!!

「ブギァァ!?」



最初の1匹と次の2匹、こいつらとの攻防は、ほんの2~3秒の出来事だ。

僕のカウンターを喰らった『3匹のゴブリン』が、『ドサドサ』と地面に倒れ込む。


一連の反撃を終えると、僕は大きく後方にステップし、2mほど距離を取る。

残る3匹のゴブリンたちと、対峙する形の距離だ。


僕は、スゥーっと息を口から吸い込み、再び、半身の姿勢で腰の重心を下に落とした。

残る3匹のゴブリンは、額に汗を浮かべ、唸り声を上げている。



「ギ・・・ギィィ~ッ・・・」



それは『恐れ』が混じった唸り声だ。

でも、やつらは逃げだしたりなんて絶対しないのが分かる。


やつらの目を見れば分かるんだ。

やつらは諦めていない。



・・・もう一度、来る。



案の定、またも、3匹同時の突撃を繰り出してきた。

当然、向こうも必死だ。今回は、踏み込みに躊躇いが無い。


つまり・・・捨て身の攻撃で来るってことだ!



「ギィィィ!」「ギェェェ!」「ギシャァァ!」



正面と左右の3方向攻撃。


最初に『正面の一匹』が体ごとぶつけに来るかのような、捨て身の攻撃を繰り出してきた。

僕は、半身の姿勢を生かし、左足を軸にクルっと少し回転して、闘牛をよけるマタドールのように、ギリギリで突撃を受け流す。


立て続けに『左の一匹』の突進と、『右の一匹』からダガーの斬撃が、襲い掛かってきた。

やつらは、攻撃の間隔を開けないよう、立て続けの連携で攻めてきたのだ。


でも・・・僕には攻略の糸口が見えている。

『左右2匹』の『同時攻撃』。それこそ、僕が待っていた一瞬の隙だ。


先ず『左の一匹』の突進を左手で受け流し、『右の一匹』のダガーの斬撃へと方向転換させた。

つまり『左の一匹』を盾にして、『右の一匹』のダガーを防いだ型だ。



ブシャ!

「ギィィ!?」




『右の一匹』のダガーが刺さり、盾にした『左の一匹』は倒れた。

しかも『右の一匹』が持っていたダガーは、『左の一匹』に突き刺さったままだ。


つまり・・・『右の一匹』は空手の状態。隙だらけということになる!



スパァァァン!

「ブゲェェ!?」



僕は『右の一匹』の顔を縦拳で打ち抜いた。

顔面を打ち抜いた威力は止まらず、そいつは『グルン!』と勢い良く空中で縦に1回転し、そのまま地面に『ビタァン!』と叩きつけられた。


これで『左右の2匹』は沈んだ。



「残りは・・一匹!」



残された『正面の一匹』がウッドシールドを構えている。

でも・・・それは意味ないぞ!!



「おおおぉぉぉぉぉっ!」



バッガァァァァァンン!!

「ブギェェェェ!?」



『正拳突き』を思いっきり打ち込み、ウッドシールドごとゴブリンを吹っ飛ばした。



「よし!・・・・残るは壁1枚、6匹だ!」



僕はすぐさま、身構えた。

残りのゴブリンたちが、立て続けに襲い掛かって来ると予想していたからだ。



「よし!来いっ!!」



でも・・・来なかった。


立て続けに、勢いよく敵の攻めが襲い掛かるという予想だった。

だが、その予想に反して、今、全く逆の状態になっている。



「あれ?・・・・来ない・・のか?」



ゴブリンたちは、固まったように動かなかった。

ゴブリンだけじゃない。ジャレットさんたちも、すっかり固まっている。


皆、動かず、喋りもしない。

まるで、『時を止めた世界』みたいだ。


・・・僕、『紋章の力』は使ってないはずだよな?




シーーーン・・・




ただ、静かだった。



でも、その静寂も5秒ほどで打ち破られる。

その静けさを破るように、ホブゴブリンが大声で叫んだのだ。



「ギィィイィイイ~~ッ!!?」



ホブゴブリンの、この叫びは・・・『突撃の合図』とは違う気がする。

何というか、まるで焦ってるような感じだ。



残るは6匹のゴブリンたちだった。

だが、今度はホブゴブリンも加わっており、7匹の突撃となっている。



「・・・来るか!?」



僕は先ほどと同じ半身の構えを取り、腰を少し下に落とした。



ゴブリンたちの攻めは必死だった。

何というか・・・ガムシャラに向かって来ていると言う感じだ。


『勢い』はあるが、『動き』はてんでバラバラだった。

統率が取れていない分、彼らの攻撃をさばくのは、最初よりも簡単そうに思えた。



自分でも、驚くほど自然に彼らの攻撃を裁き、的確に反撃を打ち込んでいく。



1匹目のダガーを躱し、首に手刀を落とす。


ズド!「ギェ・・・」


1匹目が『カックン』と力が抜けるように崩れ落ちる。



2匹目の棍棒を躱し、ローキックを右足に浴びせて怯ませる。


ベチィィン!「ギィイ!?」


2匹目の動きはこれで止まった。



3匹目は槍の突き。僕は横に避け、槍の柄に右腕を沿わせ、滑るように接近。

左ボディと右ストレートを流れるように打ち込んだ。


ドボッ!パァァン!「ブギィ!?」


3匹目は、唾液を霧のように上空に『ブゥー!』と吹き出し、倒れた。



そのまま流れるように、『ローキックで怯んでいた2匹目』に、

もう一度『止め』のローキックを左足に浴びせる。


ベッチィィン!「ギィヤァァ!?」


2匹目のゴブリンは、両足を封じられ、これで完全に立てなくなった。



彼らとの力の差が圧倒的なのは、自分でも良く理解できた。

その差は・・・ただの『弱い者いじめ』に思えてしまう程だ。



「ギ・・ウギィィ!?」「ギヒィ・・ギヒィィ・・・」「ギギ・・ギエェ・・・」



残るゴブリン3匹は、弱弱しいうめき声を上げ、武器を手から落として戦意を喪失していた。

残るのはリーダーの『ホブゴブリン』だ。



『ホブゴブリン』も武器を落としていた。

そして、がっくりと肩を落とし、小さく唸っている。


でも・・・何か様子がおかしい?



「ギァィィ、ギィィィ・・・」


「・・・何だ?・・・何か唸ってる?」



ホブゴブリンは、一定の音程で小さくで唸り続けている。

これは何だ?・・・僕を威嚇しているのか?



「ギャアイィ、ギアィィ・・ます」


「・・・ん?」




気のせいかな・・・?


「今・・・何か喋ったような?・・・・」


まさかな・・・あり得ない。




「ギィアィィ・・・・降伏いたします。どうか、お慈悲を・・・」


「・・・んん!!?」



はいぃぃぃ!?気のせいじゃない!!喋った!?

このゴブリン・・・喋ったよ!?



「ちょ・・ちょっと待て!・・・お前、喋れるの!?」


「ひぇぇっ!?・・・な、なんと!?」



ホブゴブリンが、両手を拝むように合わせた。



「わ、わたくしめの言葉が分かるのですか?!」


「あ・・・ああ。自分でも信じられないけど・・・分かる・・・みたい?」



信じられない・・・本当に。

僕は今、ゴブリンと会話してるのか?

・・・これは夢なのか?



今度は、ホブゴブリンが地面に膝をつきはじめた。



「なんと・・・これも魔王様のお導きか・・・・あなた様にお願いがございます。ぜひ、お聞き願えませんか?」



やばい、どうしよう・・・?

ゴブリンと話すなんて想像もしたことなかった。



「ええ?・・・お、お願いって言われても・・・」



ホブゴブリンのやつが、地に膝をついたまま、僕をまっすぐ見つめてる。

でも、どうしたら良いんだ・・・さっぱり分からんぞ?

とりあえず、何か言いたいことがあるみたいだけど・・・聞いてみる?



「あの・・・な、何だよ?・・・願いって?・・・」


「我々の願い・・・それは・・・」



ホブゴブリンの目がギラリと光る!

そして、彼は叫んだ!



「我々は!あなた様に降伏いたします!」


「・・・・え?」



何かと思ったら・・・降伏宣言?



「どうか!・・・どうか、お慈悲を!」



ホブゴブリンが膝をついたまま、首を大きく垂れた。

ホブゴブリンに続くように、他のゴブリンたちも同じく、全員が僕に平伏し始める。

これは土下座とは違うぞ・・・なんつーか・・宗教みたいだ。


「どうか・・・どうか!お助けください!」


ホブゴブリンが僕を拝んでくる。


「どうか、お助けください」「どうか、お慈悲を」「どうか・・どうか!」


ホブゴブリンに続くように、一斉に他のゴブリンたちも、拝みの合唱を始めた。

僕の周囲に平伏したゴブリンたちが、一斉に合唱している。



ジャレットさんは、その出来事を茫然と眺めていた。


「な・・・なんだこりゃ?一体どうなってるんだ?」


ジャレットさんの反応からみても分かる。

このファンタジーな異世界でも、特殊な光景らしい。



アモンは腕を組みながら闊歩し、僕の隣に立った。


「ふむ。終わったか・・・しかし、練習台にもならぬ奴らじゃったな。まあ、『力の片鱗』を和人が理解できたから良しとするかのぅ」


アモンは満足げに、隣で「キヒヒ」と笑っている。

いや、一人で満足されても・・・


ジャレットさんたちも驚いてるんだけど・・・これって何?

・・・これはもう『アモンちゃんに質問タイム』を発動するしか無いか。


「あの・・・アモンさん?」


「なんじゃ?」


「あのですね・・・・どうして、僕は『ゴブリン語』が分かるんですかね?」


「そんなもの、最初から言っておろうが?主には『この世界の言語』が組み込まれたのじゃ。勿論、こやつらの言語も入っておる」


「そ、そういうこと!?・・・・モンスターたちの言語も含むのね・・・」


「うむ、そうじゃ。素晴らしいじゃろう?」


「う、うん・・・すごいけどさ・・・ていうか、こいつらって会話出来たんだな?」


「当然じゃろう?『意思疎通』出来るのは、ニンゲンだけじゃと思うたか?」



僕とアモンの前で、何故かホブゴブリンが『ぶるぶる』と震えていた。

彼は怯えながらも、恐る恐るアモンに話しかける。


「お、おお・・・何と・・あなた様も、我々の言葉が分かるのですか?」


だが、話しかけられた途端にアモンの様子が変わってしまう。


「・・・なんじゃ?」


アモンの緑の澄んだ瞳が、赤色に光る。


「下等なゴブリンが我に話しかけるとは、不愉快よのう・・・」


一斉にゴブリンたちが凍り付いた。

僕にはわからない何かを、ゴブリンたちは感じているらしい。

ゴブリン全員が恐怖で縮こまり、震えている。


「ヒ、ヒィ・・・お許しください・・どうか・・」


ホブゴブリンが顔を地面にめり込ませるほど平伏し、ひたすらに慈悲を乞う。

僕に降伏した時とは違った雰囲気だ。何と言うか・・・・『恐怖に対する命乞い』という感じだ。


「お、おい。アモン・・・止めろ。許してやれよ」


僕はアモンの肩に手を置いた。

彼女は振り向き、僕の顔を一度見てから、再びゴブリンたちを睨みつける。


ゴブリンたちは命乞いすることすら止め、完全に固まってしまった。

まるで、蛇に睨まれた蛙だ・・・


僕はアモンの肩に置いた手で、今度は彼女の手首を握った。


「おい!決着はついたんだ。もう降伏してるんだぞ?・・・彼らはもう、戦う意思はないんだ。これ以上行くと、ただの『理不尽な暴力』だぞ」


アモンは、自分の手首を掴んだ『僕の手』を、数秒間眺めた。


「そうか・・・そうじゃな」


アモンの瞳が、再び澄んだ緑色へと戻る。


「・・・・フン。まあ良いわ。許してやろう」


恐怖で固まった緊張の糸がプッツリと切れたのか、ゴブリンたちは一斉にアモンに平伏した。


「ハハー!ありがとうございます!」


ゴブリンたちは、アモンをひたすら拝み、感謝の言葉を、まるで呪文のように唱えている。

なんか、傍から見たら宗教みたいだ・・・でも、これでゴブリンに関しては解決出来たはず。


それよりも、パーティーの皆が気になる。

・・・皆、無事で居てくれると良いけど。



ゴブリンに拝まれるアモンを後に、僕は皆の許へと駆け寄った。


「ジャレットさーん!」


「あ、ああ・・・カズト」



ジャレットさんの顔は疲弊しきっていた。

ミルさんは倒れた者たちの手当てを行っている。



「皆は無事ですか?」


「ああ、大丈夫だ。アーチャーと剣士も、さっきぶっ倒れちまってな・・・今立ってるのは、俺とミルだけだ・・・」


「え!?それじゃあ、皆は・・・」


「おいおい!待ってくれ・・・無事だよ。他の奴らは全員、気を失っちまってるってだけさ」



気を失ってるだけ・・・?

そうか・・・そうか。良かった!



「ハァ~~・・そうですか、良かった」



心の底から安堵の溜息が出てくる。

でも、ジャレットさんは落ち着かない様子だった。



「カズト・・・一体何が起こったんだ?」



ジャレットさんは、僕の顔を見てから、後ろのアモンに視線を移す。

アモンを取り囲み、まるで礼拝するかのように平伏すゴブリンたち。

アモンは、まんざらでもなさそうにニコニコしている。



「あの、ジャレットさん。何て言ったらいいか・・・とりあえず、ゴブリンたちはもう悪さはしないと思います」


「そ、そうか。そりゃあ良かった・・・」



ジャレットさんは引きつった笑顔で、頬をポリポリと掻いた。



「でも、おれが聞きたいのは、そうじゃない・・・分かるだろ?」


「え?」


「勿論、君に命を助けられたのはありがたい。礼を言うよ・・・でも、それより気になることは・・・」



彼は、僕とアモンを指さした。



「君は・・・君たちは一体何者なんだ?」



目を見れば分かる・・・僕らは、彼に疑われている。



「あれだけのゴブリンと、たった一人で戦えるなんて・・・・いや、戦いではない。奴らを圧倒していた!」


「ちょっと・・・ジャレット」



ミルさんが、ジャレットさんを嗜めるように声を掛けるけど・・・

ジャレットさんの興奮は収まらなかった。



「あんなのは、『ゴールドクラス』・・・いや!あの一方的な展開は、『プラチナクラス』の者じゃないと、出来ない芸当だ!?」



・・・え!?そうなの!?

・・・知らなかった。



「そ・・・そうなんですか・・・?」



「ああ、そうだ・・・それに!」



ジャレットさんは、アモンとゴブリンたちを、バッ!と指さした。



「君はゴブリンたちと会話出来るのか!?そして・・・あのは何者なんだ!?」



『教祖様ごっこ』を楽しんでいたアモンも、さすがにこちらの騒動に気づいたようだ。

彼女はゴブリンたちに『待て』という合図を送り、僕の横まで歩いてきた。



「どうしたのじゃ?主ら、何を興奮しておる?」



アモンは『かわいらしい笑顔』を見せた。

ぱっと見、アモンは美しいお嬢様にしか見えない。

ジャレットさんとミルさんも、少し困惑している様子だ。



「き、君たちは・・・モンスターテイマーだとでもいうのか!?」



ジャレットさんの額から汗が流れ落ちる。

彼の質問は止まらない。



「ゴブリンとの会話なんて・・・上級職であるモンスターテイマーですら出来ないと言われているのに・・・それに、カズトのあの『力』・・・もしや!?」


「あっ・・・・ジャレット!?」



ミルさんが、ジャレットさんの言葉を遮るように彼の名を呼ぶ。



「・・あ・・ミル?・・・」



ジャレットさんが、呆けた感じでミルさんを見つめると、彼女は首を横に『ふるふる』と振った。



「・・・・・ははっ。そうだな」



すると、彼は『フッ』と笑い、いつもの軽い笑顔に戻った。



「ふっ・・・そんなことは別にいいか。俺たちは、彼らに救われた。カズトはおれたちの命の恩人だ」


「ええ、そうよ。私たちは、あのままだと死んでいた・・・でも、彼らのおかげで、こうして生きてるんだもの・・・それでいいじゃない?」


「ああ・・・そうだな・・・それだけで充分だ」



ミルさんの顔は、相変わらずフードを目深に被っていて見えない・・・でも、声は涙声になっている気がする?

僕には、彼らが何を言ってるのか、さっぱり分からない。でも、『力』という単語が出てから、アモンはずっと苦々しいような顔をしていた。



彼らが『それ以上は聞かなくても良い』と、追及を止めてくれた途端に、アモンが『ほっ』と吐息を漏らす。



あのアモンが焦るなんて、何かあるとしか思えない。

アモンが言っていた『人前で力を使うな』って言葉・・・あれが関係してるんだろうか?



今の僕には状況が理解できないけど、実の所、僕も『ほっ』としていた。

アモンだけじゃなく、僕にとっても、これ以上質問されるのは好ましくない状況だったから。



だけど、ジャレットさんがまたも真剣な顔で、嫌な質問で詰め寄って来る。



「だが、せめてこれだけは伺いたい・・・・失礼ですが、あなた方は『何者』で『どこから来た』のですか?」



『何者で』『どこから来た』だってさ・・・・うん。

まあ、これって一般的な質問だよね?言われてみれば当たり前の会話だよ。




例えば、普通に働いててもやるだろう?


『わたくし、○X会社の営業を担当しております。源和人みなもとかずとと申します。よろしくお願いします』


―――なんて普通に言うよね?





でもさ・・・僕とアモンにとっては『一番まずい』質問だよね?




どうしよう?どう言い訳したらいいのかな?

ちょっと、言い訳考えてみよっか?




ちょっと待ってね・・・




・・・・うん。




思いつくわけねぇぇぇぇぇ!!




あああああああぁぁぁぁーーっっ!!!

まずい質問キタアアア!?

助けてぇぇ!アモーーーン!!

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