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■第15話 『限界』

■第15話 『限界』




静寂に包まれた灰色の世界。

僕だけが動ける世界の中で、目標を目指して一直線に走った。



「早く!あいつを倒さなきゃ!!」



時間を無駄にすることは出来ない。この力は体力の消耗が激しい。

どれだけ時間を止めていられるんだろう?

この力が尽きると同時に、僕は疲労で動けなくなる・・・・

何より、僕の生命を削ってしまうんだ。一秒も無駄にはできない。



「・・・こいつだ!」



僕は『あるゴブリン』の目の前で立ち止まった。

体格の大きい、『腕に草冠を巻いた』ゴブリン。恐らく、こいつがリーダーだ。


右手を『ギュッ』と握りしめ、拳を形作る。

早く決着をつけないと・・・この一発で!!



「これで、終わりだぁーーー!」



ピシュン!!・・・・ブオンッ・・・!



「ん!?」



僕が、拳を振り上げた瞬間・・・何か『異変』が起こった。


『遠くで風を切る音』と『ビームの剣を振ったかのような音』

そして、僕の皮膚にピリっと伝わってくる空気の振動。


・・・妙な現象だ。

何事かと思い、2秒ほど混乱してしまった。


でも『異変』の正体は、すぐに分かった。

目の前、数メートル先でその現象が起こっていた。



・・・それは、実に妙なものだった。



『矢が空中に浮いている』のだ。




ピシュン!ピシュン!・・ブォン!・・・ブォン!

ピシュン!ピシュピシュン!・・・ブォ!・・ブォォン!!



僕らを目掛けて、次々と矢が打ち込まれてくる。

だが、一定の距離で、『ブォン!』と空気を振動させる音が鳴り、同時に『ピタリ』と矢が空中で止まるのだ。

10本ほどの矢が空中で静止している。



「これは・・・そうか。わかったぞ!?これは『力の領域範囲』だ!」



矢の動きが、『球体状の領域内』に『入った瞬間』にスローになっているんだ!

つまり、矢は『半径10m以上先』から射られている!


どこかに、ゴブリンの弓矢部隊が潜んでいるんだ!

この飛来する矢の数から考えて・・・5~6匹くらいか?



「この矢の数・・・危険だ」



時が動き出したら、一気に全滅してしまう。

・・・その前にケリをつけなきゃいけない。



僕は再び、握った右拳に力を込めた。

・・・今すぐ、終わらせるために!



「行くぞ・・・でぇえぇぇやぁぁぁ!」



ボグォォ!!



『ゴブリンリーダー』の胴体、胃袋あたりに正拳突きを打ち抜く!

ヤツの腹部が『ベコン』とへこんだ!



「よしっ!!」



手応えはあった。

これで・・・・



「 ・・・・・あれ? 」



ゴブリンリーダーに大ダメージを与えたのは間違いない。

・・・でも、何かが違う。



「何が違うんだ?・・・そうか!威力だ!?」



威力が足りない!

パンチの気流が発生していない!



「何か変だ・・・ この一撃で粉砕できると思ったのに・・・ 」



僕は自分の拳を眺めた。



「前回より威力がない・・・でも、パンチは間違い無く効いている!」



僕は後ろを振り向いた。

満身創痍のジャレットさんたちの姿が見える。



ここで『こいつ』を倒さなければ、皆・・・・



「そうだ・・・威力が無くったって・・・・」



何とかしなくちゃいけない。

迷うな!僕ならやれる!



「一発で倒せないなら・・・何発でも打ち込んでやる!」



再び右拳を固く握りしめ、ゴブリンのリーダーと対峙した。





そのときだった―――――



遠くから、何か妙な音が聞こえてきたのだ。



「・・・ぇぇ・・・」



甲高く、か細い声・・・かな?

気のせい?・・・いや、空耳か?




「・・ぇぇ・・ぇぇ・・・」



耳を澄ませると、確かに聞こえる。

何か分からないけど、本当に小さな囁き声のようなものが・・・



「・・・ぇぇ・・・・ぇ・・・」


「いや、気のせいじゃない・・・この音は・・・どこから?」




音がどんどん近づいてきている。

一体どこから近づいているんだ?


周りは、僕以外が静止した世界なんだ。動いてるものは無い。

しかも、音は『上』から聞こえるような気が・・・・



ん?・・・『上』?




「あっ!?・・・上っ!?」


「止ぁめぇぇぇぇぇぇいい!!」



僕はすかさず『バッ!』と上空を見上げた。

「やめい!」と叫びながら、『何か』が落下してきたのだ!


『何か』は僕の頭上、数センチの距離。つまり、もう目の前まで来ていた。



「げぇっ!?ぶつかる!!?」


ボフンッ!!ドシャッ!



その落下してきた『何か』は・・・巨大な尻だった。

尻は僕の顔面に『ボフッ!』とぶち当たり、僕はそのまま、後頭部から地面に『ドシン!』と沈み込んだ。



「ブヘェアアア!!!?」



尻に押しつぶされ、自分でも意味不明な奇声が喉から絞り出される。


首が『グキッ!』と嫌な音を上げ、激痛が走った。

・・・でも、顔には『柔らかな感触』が。



「い・・・いへぇ・・・・・く、くぶぃ《くび》、が・・・」



顔が尻に抑え込まれてしまっているため、喋ると声が篭って『もご』つく。



「この愚か者めが!無駄に力を使うなと言うたであろう!?」



一体、何故こうなったのか、全く分からない・・・

でも、僕の顔に乗っている『見事な尻の持ち主』だけは分かった。



この声は・・・『アモン』だ!

アモンが空から降ってきて、尻で僕を押し潰したんだ。



「ア、アムォン・・・モゴモゴ・・・ぬぁ、ぬぁんどぇ《なんで》、ふぉふぉ《ココ》に居ふんだよ」



尻に潰されたまま、もごもごと話す。



「わひっ!?・・・な、なんじゃ!?」



彼女は僕の顔から『ササっ』と尻を上げ、素早く立ち上がった。



「・・・??・・なんじゃ今の感覚は?・・ニンゲンの体とは妙じゃ??」



アモンは『見事なお尻』をさすりながら、少し顔を紅潮させていた。

彼女は、頭のうえに巨大な『?』マークを浮かべている。


ものすごく首が痛い。

でも、あの尻の感触・・・それを思うと、なんかプラマイ0に思えてしまう。



「・・・和人よ。いつまで寝とるか。これくらいのダメージなど、毛ほどもないじゃろう?」



アモンはお尻を2回『ぱんぱん』と払った。



「そんな、すぐに立てるかっての・・・首が・・・いってぇ~・・・」



僕は首を軽く『グルグル』と回し、痛む首の筋をほぐした。


落下してきた人に頭から押し潰されるって・・・普通は死ぬよな?

でも、『首が痛い程度』で済んでいる。自分の頑丈さを、改めて実感できるよ。



「アモン・・・お前なぁ!常識ってもんを知らないのか!?下手したら僕は死んでるぞ!?」


「常識じゃと?・・・何を言っとる。『この程度で、主は死なぬ』というのは、常識じゃろう?」



ダメだ・・・・会話にならん。

こいつに常識は通用しないんだった。



「一体、何しに来たんだよ?街で待ってるって言わなかったか?」


「随分と戻りが遅かったのでな・・・よもや、ゴブリン如きに苦戦しておるとはのぅ」



アモンは、僕とパーティーメンバーの顔を、『ジーっ』と順繰り見渡し、最後に大きく溜息をついた。



「ハァ・・・・・全く。主ら、揃いも揃って未熟よのう。『卵』にすら、なれぬのか?」


「う、うるさい!こっちは必至なんだ!今は取り込み中なんだよ!!嫌味を言いに来ただけか!?」



アモンは右頬に人差し指を当て、少し上目で考える仕草を見せる。



「いいや?『紋章の発動』と、『時のエネルギー』を主から感じ取ってのう。まさかと思うて来てみたら・・・」



アモンが『じとっ』とした目で僕を見つめてくる。

ひたすらに、『じ~~っ』と見つめてくる・・・・



「・・・くっ!ああ!力を使ったよ!・・・悪いかよ!?」


「何故使ったのじゃ!?この愚か者が!我は、あれほど『人前では使うな』と言ったではないか!!」


「使っちゃだめかよ!?それくらい僕たちはピンチだったんだ!それに、お前は・・・・」



アモンは右手人差し指で、僕をピッ!と指さし、僕の言葉は中断される。



「もう一度、言うぞ?人前で『紋章の力』を使うでない・・・それに、主は今日、既に『一度』力を使っておる。『素体が貧弱』な主には、最早、『限界』が来ておるのじゃ」


「・・・え?限界?・・・・なんだよそれ?」



なんだか・・・その『限界』って言葉。

嫌なイメージしか湧かないぞ?



まさか・・・



「・・・もしかして、僕はもう死ぬのか?」


「そうではない、早とちりするでない」



アモンは、僕に刺した指を今度は上に向け、左右に指を振っている。

『チッチッ』てやる仕草だ。なんか小馬鹿にされてる。



「じゃあ、どういうことなんだ?」


「ふむ・・・・先ほどゴブリンを殴打しておったが、威力が足りなかったじゃろう?」


「ああ、そうだ。何か変だった・・・一発で倒せると思ったのに」


「やはりのう・・・」



アモンは、顎に右手人差し指を添え、右目をパチリと閉じた。



「それは肉体が許容している力が、もう枯渇しつつあるということじゃ。再びフルスペックで使用するには、主の肉体の回復を待たねばならん」


「力が枯渇ってのは・・・どういうことだ?『MP切れ』とか『ガス欠』に近い感じか?」


「厳密にいえば、主の細胞の代謝を上回るエネルギー消費が発生しておる。つまり、肉体の代謝と再生が追いついておらぬのじゃ」


「細胞だって??・・良く分からんけど。仮に、そのまま使い続けたらどうなるんだ?」


「そうじゃのう・・・ふむ。これ以上の力の行使は、主の肉体の崩壊が始まり、それこそ『死ぬ』。今も力を発動しておるから、エネルギーを消費しとる」


「げぇっ!?そ、それじゃあ、今すぐ時を戻さなきゃ!・・・・ていうか、とっととゴブリンやっつけて、力を解きゃ、もっと早く終わってないか!?お前、話をややこしくしただろ!?」


「うるさいのう・・・早う戻せ。『時の力』に頼らず、違う力の存在に気づけ。馬和人バカずとめ」


「なにぃ!!?こ、この!?・・・まあいい、時間を戻すぞ!」



時を戻すイメージ。再生ボタンを押すことを思い浮かべようとした・・・

でも、本当に戻して良いんだろうか?



「アモン・・・時を戻しても、こいつらを倒せるのか?・・・僕は、皆を守るために力を発動させた。皆を守れないと意味がないんだ」



僕の顔をジーっと眺めた後、アモンは呆れた表情で、またも溜息をついた。



「ハァ~・・・まだ理解しておらぬか。主はゴブリン如きとは次元が違うのじゃ。我と融合した存在なのじゃぞ?」



つまり、何が言いたいんだ?・・・さっぱり分からん。



「ええっと・・・もしかして、魔法が使える・・・とか?」


「愚か者!違うわ!・・・結局、説明せねばならぬのか。少しは、自分で考えて欲しいものじゃのう」



うんざりしながら、アモンは説明を続ける。



「つまり、強化されたのは『肉体』だけではない。『脳』も進化するということじゃ」


「え?・・・・・『脳』?」


「 クハハ! そうじゃ。感謝せいよ?和人。馬鹿な主に、我の叡智が授けられておるのじゃぞ?」


「なんだそれ・・・頭が良くなったってこと?」


「それも、厳密には違うのぅ。『頭の良さ』と『脳の良さ』は別ものじゃ」


「ちょっとまってね?・・・・・・・・うん。円周率も『3.14』までしか浮かびませんが?何か?」



『脳が良くなった』ってどういうこと??全く変わった感じがしない。

難しい数式が解けそうな気配も無いし・・・こいつは何が言いたいんだ?



「・・・和人よ。主は既に、片鱗を『見た』のではないか?」


「『見た』って・・・何を?」


「やつらの『行動』をじゃ・・・見たのじゃろう?」


「行動?・・・・あっ!」



『行動』って、もしかして・・・



「それ・・あの格闘技のことか!?」


「クハハ。やはり、見えておったか」


「ああ。確かに見えた!いや・・・浮かんだ?って言えば良いのか・・・あれは一体何なんだ?」


「あれは・・主の脳が最適な回答を計算して生み出した『行動パターン』じゃ」


「計算した?・・・」


「うむ。つまり、主の脳が『相手』と『自分』の無数にのびる行動パターンのフローを計算したのじゃ。敵のクセ、武器、地形、主の身体能力、これらのあらゆる事象から情報を読み、瞬時に戦闘の『シミュレーション』を行った。そして、導き出された最適な回答を、主の肉体へ電気信号を流し、伝達したということじゃな」



相手の動きと、自分の動き・・・?

さっきの格闘術は、僕の脳が勝手に『シミュレーション』したものってこと?


なんだか、すごい難解だ・・・

アモンの説明聞いてると、なんか僕の脳ってパソコンみたいだな。



「『相手の動き』を『僕の脳』が『シミュレーション』して、僕に『反撃の動き』を見せたってこと?」



アモンは満面の笑みを浮かべ、エッヘンと仰け反った。



「うむ!その通りじゃ!どうじゃ~?すごいじゃろ~?」



仰け反ったポーズが、ただでさえ『でかい胸』を余計に目立せている。

このやろう・・・脳の栄養は、全部その胸に行ってるんじゃないのかよ。



でも・・・本当にすごいかも。



「ああ!・・・すごい!本当にすごいよ!」



確かにすごい。

でも・・・この力でやつらを倒せるんだろうか?


皆がやられてしまう前にケリを付けなきゃいけないんだ。

じゃないと、皆が・・・・



「なぁ、アモン。この能力だけでこいつらを倒せるのか?・・・いや、皆を守れるのか?」


「まあ、やってみれば分かるわい。これ以上の説明は時間の無駄じゃ。ほれ、時を動かせ。主の体が悲鳴を上げてきたぞえ」


「え?・・・・うげぇ!?な、なんだこりゃあ!!?」



紋章で黒く光った僕の両手が・・・

何と言うか・・・不思議な状態だ。



まるで『肉』で出来た『砂』みたいになっている。

僕の手から、肉の砂がポロポロと零れ落ちる。

このままだと・・・崩れて手が無くなってしまう!?



「クハハハッ!・・・我も『消滅』が近いかのう?」



アモンの姿にも異変が起こっている。

アモンの向こう側が『透けて見えている』のだ。幽霊みたいに半透明になってきている。

・・・アモンが消えてしまう!?



「アモン!?・・・くっ!・・・時よ!動けぇーーっ!」



迷っていられない!僕もアモンも死んでしまう!

今、僕らが死んでしまうと、残された皆は・・・



僕は間髪いれず、『時間の流れ』を元に戻した。


時間が正常に流れはじめる。

そして、僕がゴブリンリーダーに繰り出したパンチ。その轟音が森に響き渡った。



ボッ・・ゴォォン!


「グゴォォオオオオ!!」



衝撃で『ガサガサ』と木々が揺れる。

殴られたゴブリンのリーダーが絶叫しながら、後ろに2メートルほど吹き飛んだ。



ジャレットさんたちの『時』も、動き出している。



「・・・・はっ!?・・え!?な、なにが起こった!?・・・『ホブゴブリン』が吹き飛んでいる!?」



これで、時間は正常に動いた。

でも・・・ここからが問題だ。


最も危険なのは、あの『停止していた矢』だ。

止まっていた『10本の矢』も、当然、動き出す。




ヒュンヒュン!ヒュ!ヒュ!ヒュン!・・・




無数の風を切る音が、一斉に飛び交う。


だが・・・矢の軌道が、僕には見えている。

驚いた。こんなものまで、脳が計算しているのか。


僕の脳が導き出した回答。

『見えた軌道』、『矢が狙う先』は・・・・『中央の二人』だ!?



『ミルさん』と『アーチャー』めがけて、10本の矢が飛んで行く。




「やぁめぇぇろぉぉぉぉ!」



・・・させるかっ!死なせないぞ!

・・・全部撃ち落としてやる!!!




ドンッ!


僕は、地面を思い切り蹴り上げ、矢の雨に向かって突っ込んだ!




「ぬぁぁぁぁぁぁ!」


ベキッ!ベキッベキッ!ベキン!



次々と、矢をガントレットで弾き落とす!



「1、2、3、4、5、6!・・7、8!!」



矢を撃ち落としながら本数を数える。

8本まで撃ち落とした。


だが、飛んできた矢は10本・・・



「8本!?・・・足りない!!あと2本は!?」



最悪なことに・・・僕は2本を打ち漏らしてしまった。



2本の矢は、僕のはるか後方へと飛んでいく。

無情にも『崩れ去った円陣』に向かって・・・



その射線上には・・・・

『ミルさん』と『弓矢使い』の姿が。



「おい・・・嘘だろ?」



僕の脳が勝手にシミュレートしている。



「・・・やめろ・・・やめてくれぇぇ!!」



2秒後には・・・彼らの頭に矢が突き刺さってしまう!!



「うわぁぁぁぁぁーー!?やぁぁぁめぇろぉぉぉぉーーっ!!!」



ガキィン!

ズド!ブシャァ!・・・



矢じりが肉に突き刺さった『不快な音』が、僕の鼓膜を揺らす。



「う・・うぅ・・・ちくしょう・・・ちくしょう!・・・」



守れなかっ・・・た?

僕は・・・こんな力を・・持っているのに?




僕は、彼らを見ることが出来なかった・・・

地に膝をつき、ひたすら自分の頭を地面に打ち付ける。



ドカ!ドカ!と頭を打ち付け、僕は自分に呪いの言葉を浴びせ続ける。



「クソ!クソォ!!・・・僕は無力だ!・・クソだ!・・・役立たずだ!」



後悔の念に包まれ・・・すべてを諦めかけた。



でも、僕は大切なことを忘れていた。

僕らのパーティーには、『彼』が居てくれたということを。



「何をしている!?カズトォォ!ぼけっとするなぁぁ!!」



ジャレットさんが叫んだ。


円陣には、ミルさんとアーチャーの無事な姿が・・

ジャレットさんが矢を撃ち落とし、彼らを守ってくれた!


剣で矢を一本はじき落とし、もう一本は自らの腕で防いだらしい。

彼の右腕には矢が突き刺さっていた。



「カズトォォ!早く立ち上がれ!戦闘中だぞぉおお!」



彼は本当に素晴らしいリーダーだ。

出会って間もないと言うのに、僕に勇気と希望を与えてくれる。



「こいつらは俺に任せろ!・・・諦めるなっ!最後まで戦えぇぇぇ!」



ピシュン!と再び飛来する弓矢を、彼は剣で弾き落とした。

そして、地面に転がっていた味方の盾を拾い上げ、皆を守るよう、防御の姿勢をとる。

その姿は・・・本当に恰好よかった。


自分の身を挺してまで、仲間を守るあなたの姿は・・・

あなたは、本物のヒーローだ!




「ギィィィ!」「ギェェ!」



僕とアモンの前方では、ゴブリンたちがバタバタと走っている。

陣形を組み直しているみたいだ。


その時間稼ぎのためか、2匹のゴブリンが、僕とアモンをめがけて突撃してくる。



「アモン、ちょっと下がっててくれ・・・」



僕のこの台詞に、アモンが面食らったような顔で、目をぱちくりとさせた。



「ほ?・・・下がる?・・どういうことじゃ?」


「どういうことじゃ、って・・・・お前、一応、普通の女の子なんだろ?」


「うむ・・・そうじゃ」


「だからだよ・・・それに、お前に死なれちゃ、僕も死ぬんだろ?」


「む?・・・そうか・・・そういうことかえ」



アモンは僕からスイっと視線を外し、少し左側をぼんやりと眺めた。

でも、すぐにいつもの調子で小馬鹿にした高笑いを始める。



「・・・クハハハッ!その通りじゃ!・・・我が死なば、主も死ぬ!我らは融合した存在じゃからのう!」


「ああ。分かってるさ・・・だから、下がっていて欲しいんだ」


「むぅ!?・・・なんじゃその余裕は!?調子に乗るでない!この馬和人バカずとめ!」


「うるさいな~・・・こんなときくらい、黙って見送れないのか?僕だって男なんだぞ?」


「男じゃと!?オスじゃから、どうだというのじゃ!?」



何か知らないけど、アモンがぷりぷりと怒り出してしまった・・・

こいつ・・そういや、プライドも高かったんだ。



「あ~・・お前に期待するのが間違いだったか・・・」


「フンッ!・・・・まあ、せいぜい頑張るが良い」


「ああ。それじゃあ・・・行ってくる!」



鼻息荒いアモンを後に、僕は襲い来るゴブリンたちに向かって走り出した。

そのとき、アモンを少しだけ振り返って見たんだ。


・・・・彼女は、ぼそりと呟いていた。



「我が・・・和人に・・・守られる?」



アモンは何とも言えない複雑な表情をしていた。

でも・・・・これだけは分かる。彼女は少し笑顔だった。



僕は、向かってきた2匹に先制するよう、先に懐へと飛び込んだ。

瞬時に、やつらは挟撃する形で、左右に分かれる。



「ギイィーー!」「グギーーー!」



左右から振り下ろされるダガー。

でも・・・それはもう攻略済みだ。



「それは・・・さっきと同じ手だろう!!」



僕は一歩だけ下がり、やつらのダガーを空振りさせた。

ダガーを振りぬいたゴブリンたちの体勢が少し崩れる。

・・重要なのは、その一瞬の隙だ。



「せいぃぃ!」



パ!パァーーーン!



わずかに見えたゴブリンたちの顔面に、素早く正拳突きをねじ込む。



「グェ・・・」「ギィ・・・・」



2匹はうめき声を上げ、そのまま地面に『ぐらり』と倒れ込んだ。


でも、こいつらの時間稼ぎは成功したみたいだ・・・

ゴブリンリーダーの前に、ズラっと横に並ぶゴブリンたち・・・まるで壁のようだ。

そして、リーダーの前には『壁が2層』ある。



「そうか・・・リーダーを守るってことだな?」



やつらは僕を睨み、「ギィギィ!」と全員で威嚇の声をあげている。



『時を止めて安全に突っ込んだ』ときとは違う・・・今回、奴らは動く。

しかも、密集して防御している・・・その渦中に入るんだ。



でも・・・もう覚悟は出来ている!



「行くぞぉぉぉぉ!」



僕はもう一度、ゴブリンのリーダーに向かって突撃した。

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