第8話 油断・進化
暫く投稿遅れます。
流石竜といった所か。
通常の人間ならば失明して、暫くは動けない筈なのに、もう視界が回復している。
さて、警戒されてしまった。もうあの手は使えないだろう。ならば、もう一つの手を打つまでだ。
フローは、竜の回りをぐるぐると走り始めた。竜もフローの速度に慣れ始めている。時々、フローに攻撃をしていくが、間一髪で避けていく。
オレはそこで、ある鎖をストレージから取り出した。長さが10m程しかないそれを、足下から竜の身体に巻き付けていく。すると、竜の身体の大きさに合わせるように、鎖はどんどん長くなり、全身に巻き付いた。
竜は鎖に行動を阻害され、上手く動く事が出来ていない。そこでオレは、またもある液体をストレージから取り出し、矢に塗りたくる。
そして、その矢を竜の瞳を狙って、全力で放った。当然その矢は、鱗の纏っていない瞳に深く突き刺さった。
「ガアアァァァアアアアア!!」
悲痛な叫び声を上げて、竜は暴れだす。鎖は、何とか抑えつけようとしているが、強力な竜の力には叶わず、敢えなく砕け散った。
だが、それで良い。先程の束縛鎖は、矢を目に打ち込むための布石に過ぎない。矢に塗られてあった液体は、この園で取れた、高レア度の毒草を液体にした物だ。
当然、その分効果は通常より高く、竜にすら効く毒薬となった。
簡易ステータスを覗くと、HPがゆっくりとだが削れて行っている。この調子でデバフを付けまくっていこう。
毒薬に続いては、麻痺毒だ。毒で動きが悪くなった竜に、麻痺毒を塗った矢を放つ。鱗に当たると弾かれるので、狙う場所には注意が必要だ。
竜が丁度口を開けた瞬間に放った矢は、寸分違わず口に入った。すぐに矢を吐き出す竜だが、塗られていた麻痺毒は違う。
経口摂取で体内に入った毒が、身体をゆっくりと蝕んでいく。次第に身体の自由が効かなくなり、鈍っていた攻撃の回数すら減っていく。
さてさて、次は地球に存在しない特殊な毒。その名も『散魔毒』だ。この毒は対象の魔力をゆっくりと減らすという物だ。通常のモンスターならば、一瞬で尽きる程強力な筈なのだが、この園のモンスターは異常に強く、10分でやっと尽きる程だ。
その園でも、一番強いと思われるこの竜のMPは半端ではなく、尽きるのにどれ程の時間が掛かるか分からない。
だが、やらないよりはマシだろう。オレは、動きが鈍った竜の鼻先に散魔毒を塗った矢を放つ。
これは肌に触れただけでも効果を発揮するので、取り扱いには注意が必要だ。だが、竜にその心配は無用である。
鱗を貫いて、軽く肌に触れた矢は、毒を広がらせる。直ぐに全身に散魔毒がひろがり、竜から大量の魔力が溢れ出してくる。
正直気休めだが、MPの自動回復が止まっている。これなら安易にブレスを撃ってくるのは控えるだろう。
土台は整った。後は橋をミデン逹が作り終るまで、耐えるだけだ。このまま竜の周りを走り続けて、ミデン逹に注意が行かないようにすれば良い。
それからオレは、走り続けた。その間にいくつかスキルを獲得したが、ゆっくり見ている暇はなかったので、良く分からない。
それでも、スキルを獲得したりレベルが上がったりすると、行動が辛くなくなって行ったので、回避系に関するスキルだと思う。
まあ、一発でも食らえば消し飛んでしまうような攻撃なので、体力もだが精神的な疲れが大きい。
そんな疲弊しているフローに、救いの手が差し伸べられた。
「マスター!橋が完成しました!」
「分かった!今行く!」
永遠にも感じられる程、濃い時間を過ごしたオレは、竜に背を向け高速でミデン逹の居る崖の方へと駆け寄る。
だが、背後から猛烈な威圧を感じた。その威圧に、フローは足が止まってしまった。それと同時に、アドレナリンで感じていなかった疲れがどっと溢れ出す。
それを竜が見逃す筈がない。竜は嗤い、あるスキルを発動させた。
《重力操作》。そう表現するのが一番正しいだろう。オレの身体は浮き上がり、竜の居る方へ、まるで自然落下をするように向かっていく。
咄嗟の事にオレは対応出来ず、なされるがまま、竜に向かっていった。
竜は嗤いながら、凶悪な爪を構える。直線上に置かれたその爪は、どんなモノでも切り裂きそうな程、鋭かった。
何とか身を捻って回避しようとするが、足場はなく、ただ暴れるだけだった。
「やめろ………やめろぉぉおお!」
抵抗虚しく、オレは爪へと一直線に落ちていった。竜はタイミングを合わせるように、オレが爪の届く範囲に来ると、爪を縦に薙いだ。
「ッッッグハァッ!」
毒で狙いがずれたのか、胴ではなく左腕が切り取られた。死ななかった事に、安堵しつつも、腕を切り取られた痛みが襲ってくる。
今まで合った指先の感覚が失くなり、左肩を灼熱の炎に燃やされる感覚がある。今まで味わった痛みの中で、比べ物にならない程痛く、涙が出てこないのが不思議な位だ。
他の事を何も考える事が出来ない。せめて見た自分のHPバーは、物凄い勢いで削られており、助かりそうもない。
遠くでミデン逹が呼ぶ声が聞こえるが、良く聞き取る事が出来ない。
(クソッ、最後の最後で油断した。これではミデン逹を守るどころか、神々のクエストも達成できない。)
そんな心とは裏腹に、意識は朦朧となり保っている事事態が辛い。意識を離してしまえば、死に至る事は確かなのだが、もう限界に近い。
身体は左腕を失くし、そこから絶えず血を流している。そして、竜の脇を通り過ぎると同時に重力が切れ、草原の方へと投げ出された。
地面に身体を打つ感覚に、オレは物凄い勢いで流れるログを眺めながら意識を手放した。
ーーー
『反逆者の楽園』を発見。ステータスポイント100ptが送られます。
称号[選定者]の効果により、1000ptに増えました。
称号[選定者]を確認。『反逆者の楽園』への侵入権限の獲得、成功しました。
『反逆者の楽園』の主が居ない事から、『反逆者の楽園』の支配権限の獲得、成功しました。
身体の重度の損傷を確認。この事から危険と判断。修復を始めます。
血液が不足のため疑似血液を取り込み、成功しました。
続いて左腕の補修に入ります。全疑似上位精霊を合成、疑似帝王精霊に進化しました。主に適応化させます。成功しました。
左腕に適応させます、成功しました。
精霊を適応させた事に応じ、主の種族が『半人半精霊』に進化しました。
称号[反逆者の楽園の支配者]を獲得。
称号[■■を憎む者]を獲得。
称号[死の縁に立つ者]を獲得。
称号[精霊を取り込みし者]を獲得。
称号[精霊を統べる者]を獲得。
スキル《精霊魔術》を獲得。
スキル《精霊視》を獲得。
スキル《魔力視》を獲得。
ユニークスキル《帝王の威圧》を獲得
ユニークスキル《帝王の風格》を獲得。
アルティメットスキル《■■への■■心》
メニューがアップデートされました。
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学校が明日から始まってしまう。・゜・(つД`)・゜・