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銀の風  作者: 那夜
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第一章 第二話 精霊と魔族、そして人

すいません。間違えて、本当の第二話を消してしまい再び書き直しました。けど、私的にこっちのほうが結構好みに仕上がった気がします。

さて、と一息つく。双子が手に入ったのは吉報だが、おそらくすぐに魔族が来てしまうだろう。風の精霊王の迅速かつ、正確な情報網は魔界の情報網には負けないが、魔界に情報網がないわけではない。とりあえずは適当なところに精霊門を開けて、と・・・。

と、ぼやぼやと考えながら飛んでいると、大陸の端まで来てしまった。

「あれ、ちょっと来すぎちゃったかな。まあいっか、ここは“あれ”に近いからね。」

と、高度を落としていく。そろそろ、足が地上から生えている木に触れるというところで上から声が聞こえる。

「おい、精霊、その人間をこっちによこせ。」

上を見上げるまでもなくその声の主がわかった。

「また君か、エチュード。僕もいろいろ忙しいんだけど。」

「ふん、そんなことを言えるのも今のうちだ。」

えらそうな声の主は魔族、それも結構上級の魔族だった。

とはいっても、しょせんやっと年が三桁に言ったただのおこちゃまだ。この近くに“あれ”があるのを忘れてる。

「その人間が前魔王様が予言した双子だとわかっているんだ。そいつらを俺ら魔族がどんなに待っていたのかお前にはわからないだろうがな。」

言ってくれる。待っていたのはこの双子を殺すためだけだろうに。

魔界に住む者にとって魔王は最強であり最凶。つまり、魔王であるものは魔界にいる誰にも負けてはいけないのだ。よって、魔王が魔王でないものに負けたら魔王の力がすべて魔王を倒した者の体に入り、魔王だったものが魔王でなくなり、魔王でなかったものが魔王となり、栄華を極める。だから、ここでまだ弱い次期魔王を殺せば魔王としての力が手に入るのだ。しかし、前魔王が死んでから魔界では偽情報が広がり、だれも信用できないようになってしまった。まあ、だからこそ、情報が錯綜し、結果精霊界が得をするのを魔界の者が気づいているのか。

「う〜ん。僕にそんなことを言われてもねぇ。僕はこの子たちを君に渡すわけにはいかないんだ。」

余裕ぶって答えると、エチュードはやはりな、と答え、戦闘準備に入る。




「おい、何をそんなに顔をひきつらせている。」

僕の顔がそんなにへんらしく、エチュードが声をかける。けど、けどね、エチュード・・・

「ぶはははは。エチュードが、やはりな。て言った。あははは。」

「な、何がそんなにおかしいんだ。俺が何を言ってもお前に笑われる筋合いはないっ。」

「だって、あのエチュードがカッコよく、やはりな。て言ってもぜんっぜんカッコ良くないし。だって、エチュードと僕の出会いは、エチュードが崖から落ちて、運良く枯れ木に引っ掛かったのをハゲワシに食べられそうになったところを僕が助けたんだよ。」

すると、エチュードは真っ赤になって慌てた。

「ううううるさい。あの時はまだ満足に空も飛べなかったんだから仕方がないだろう。」

「それだけじゃないだろう。そのあと会った時は、近くに羊がいて服を食べられてるのに気づいてないし、その次のときは、スズメ相手に真剣にしゃべって雀を困らせていたし、その次のときは・・。」

「羊のときに、俺は崇高な考えをしていて気付かなかっただけだ。そ、それに、スズメのときは、やっと動物と意思疎通をできるようになったから雀に俺と話す権利を与えただけで。じゃなくて、いいから死にたくなければその双子をここに置いてさっさと消えろ。」

それ以上恥を思い出したくないらしく、エチュードは必死になって僕の話を終わらせようとする。まあ、僕もこの双子がいつまでも安らかに寝ているつもりではないことぐらいわかっているから早くエチュードから離れたいしね。

「まあ、どうしても嫌だというなら、ここで殺すだけだがな・・・。」

と、今までと打って変わって真面目な顔で僕を見る。

「う・・うん。わかったよ・・・。君が僕を殺したいのは・・よく・・わかったから・・・。ぶはははは。も、もうだめ。あははは。そ、そうか、わかった。君を僕を笑い死にさせる気だろう。き、君の真面目な顔は殺人的な威力を持っているからね。」

と、僕は、こらえきれない笑いを何とかこらえて眼尻に浮かぶ涙を拭う。

「けどね、エチュード。もうこの戦いは僕の勝ちだ。」

「なんだと。」

と、エチュードは不服そうな顔で言う。仕方ない、ヒントをあげようか。

「あっちに何がある?」

僕は双子を抱えているせいで使えない両手の代わりに顎で方角を示す。

エチュードは顎で示された方角を見て難色を示す。やっと気づいたようだね。遅すぎるよ。

「チッ、あそこまで競争か。」

「僕が君に競争で負けたことがある?」

僕はかなり余裕だ。きっと顔にも出ているだろう。

けど、やっぱりあのとき同僚の精霊たちの言葉を思い出せばよかった。油断大敵。




「で、わしに何の用かね。若造ども。」

今、僕たちは人間の老婆の前にいる。ここはこの人の家だ。僕がここにいる経緯を教えよう。

あの後僕はエチュードが準備を終えるのを待っていた。僕はエチュードと話している間に準備は終わっていたからすぐに飛んでもよかったけど、それじゃフェアじゃないしね。ていうか、もうすでに二人の赤子を抱えていることでフェアじゃないんだけど、そこは年齢でカバーして。それに、起きそうな二人に眠りの魔法をかけなきゃいけなかったし。レースの途中で起きて泣かれて、落としたら怒られるからね。

まあ、そんなことで、僕らが向かおうとしていたのは人間界では『東の山脈』と言われている中で、もっとも大きい山。人間はこの山を『聖なる山、レクニシー』と呼ぶ。この山は、人間界で唯一人間が統治している山だ。魔界を統治するのは魔王。精霊界を統治するのは精霊神。でも、人間界を統治するのは人間ではなく、精霊たちと、魔族たち。その理由はただ一つ、人間が精霊よりも、魔族よりも、弱く、愚かだからだ。

そんな中で、強い人間がいた。それがこのレクニシーの主、賢者『ユースロー』だ。


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