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21. 飛翔(1)

 眠ることのできないキーファが朝日の昇る時間よりも早くベッドをでた。

 アリューシャがいなくなって丸一日以上が経っても何の情報も得ることができなかった。


 準備を整え革袋を肩から提げると意を決して部屋から出る。



 トントン


「……なんだい?」


 扉を開けたカサンドラも寝間着にはなっておらず、制服を羽織っていた。

「どうした? キーファ?」


「俺、ねえさんに言われた事、ちゃんと考えた」


「そうかい」


「その上で、姐さんに頼みたいんだ。アリューシャを助ける」


「あたしは信用できると思ってんのかい?」


「姐さんが裏切り者なら俺にそんな考え植え付けない方がいいだろ?」


「信を得ようとしてるのかもしれないよ?」


「それも考えたけど……疑いすらしない俺を後ろからやったほうが楽だ」


「違いないね」

 カサンドラが満足げに笑う。


「あんたが助けを求めるとは意外だったね。あんな事話したし助けに行くなら一人で向かうんじゃないかと気を揉んでた」


「俺もそう考えてた」


「まあ、あんたみたいなグランツのドラゴンが気合い入れて乗り込んできたら、ポゼサーの集団でもひとたまりも無いけどさ」


「……だけど俺は確実にアリューシャを助けたいんだ」


「そうだね。それでいいんだ。あたしはあんたのそういう賢いとこを買ってんだよ。そうは見えないんだけどね」


 褒められたのかけなされたのかわからずキーファがしかめ面をする。


「褒めたんだよ」カサンドラがぽんぽんとキーファの肩を叩いた。

「じゃあ、行くかい?」


「いや、待ってくれ。あと一人……協力を得たいヤツがいる」





「…………なんだよ?」

 のっそりと扉を開いて不機嫌そうな顔を見せたのはジャンだ。


「こいつならOKだってことかい?」

 起きたばかりで目の座っているジャンを前にカサンドラが気難しい顔をする。

「バカだから?」


「それもある」


 ジャンがカチンときて二人を睨みつけた。

「朝っぱらから嫌がらせかよ!?」


「悪かったよ、ジャン。キーファが話があるんだと」


「ジャン……団長室では悪かったな」


「何のことだよ? そんな昔の事は忘れたよ」


 とぼけているジャンにキーファがフッと笑った。


「まさかそんな用事で来たのか?」


「いや、話があってさ。アリューシャを助け出すのを手伝って欲しい」


 ジャンの顔色が変わる。

「アリューシャの居場所がわかったのか!?」


「まだ今はわかってない」


「じゃあどうすんだ!?」


「手がかりがあるんだ」


「手がかり!? わかった! すぐに着替える!!」


 奥へ引っ込んだジャンを尻目にカサンドラがそっとキーファに話しかける。

「……ジャンに頼む理由は? 感情論は無しだよ?」


「ジャンはあのイエロードラゴンの女が現れた時一緒にいた。裏切り者ならあの時アリューシャをさらってた」


「なるほどね」


「それに……ジャンはそんなヤツじゃない」真っ直ぐな瞳でキーファがカサンドラを見た。


「そりゃあ……」



「うわぁぁぁ!!」

 急いで支度をするジャンが部屋の中央に置きっ放しの鉄アレイに躓き派手な音を立てテーブルに突っ込んだ。


「……そうだね。あたしもジャンは違うと思うよ」カサンドラが声を出して笑った。





 準備を終えた三人が通信室から更に奥へと続く廊下を進む。

「アリューシャの手がかりって何なんだよ? つーかどこに行ってんだ?」


「鳥見台だよ」


「鳥見台?」


 鳥見台にいる軍書鳩は決められたルートを飛んでいくように教えこまれている。それがアリューシャ捜索の何の役に立つのかとジャンが頭を捻る。


「……ツイールがいるんだ」


「ツイール!?」

 驚いたのはカサンドラだ。


「ああ」


「まさかアリューシャに石を持たせてるのかい?」


「……そうだよ」


 カサンドラがそれを聞いて笑い出した。

「あんたやるね。そんなに大事かい?」


 キーファは答えないが、その代わり少しだけ耳の先が赤くなる。


「ツイールって何だよ!?」

 割って入ったのはジャンだ。


「え!? ジャンは知らないのかい?」


「知らねえ」


「よし、じゃあ鳥見台に行きがてら説明してやるよ」


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ルーセント・ムーンの獣」ルーセント・ムーンシリーズの第一作。現代と異世界の間で心が揺れ動く女子大生の冒険ラブファンタジーです。こちらもよければご覧ください。
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