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父親は娘を心配するもんである

カホ視点 

前話のすぐあと



雛菊プラトリーナとの会話を終えて紅茶を楽しんでいると、今度は宿の主人がやってきた。さて、どういう風の吹き回しなのだか。

カホール殿は私が娘の旅立ちに反対しているのはご存知でしょう」

「ああ。まあ、当然の反応だとは思うよ。可愛い一人娘を危険な目に合わせたくないというのは親として当たり前の感想だ」

そしてその心配を子供がお節介に思ったりするのも様式美というものだ。冒険者ってのは不安定な職業だが、それは逆に言えば一攫千金が狙えるものでもあるということである。若者が少々過剰なまでに己の可能性を信じるのもよくあることだ。

「私としてはどちらの意見も全くわからないではないから、二人ともが納得できる解決を得られればいいと思っているけれど」

主人は僅かに表情を曇らせる。まずますどういう心境でいるのかよくわからない。しばらくの沈黙の後、主人は密やかな声で言った。

「…雛菊プラトリーナは、本当は私の娘ではないんですよ」

これには私も少し驚いた。まさか突然そのような重い話題をぶっこまれるとは思わなかったので。

「…というと、養子か、兄弟の子供とかかい」

「血の繋がりはないんです。…私はこの店を始める前、相方と組んで冒険者をしていたんですがね…」

これもしかして長話になるやつ?他人の身の上話とか正直さっぱり興味がないんだけどな…。まあ、大人しく聞くけども。

彼の話をさっくりまとめると、冒険者を辞めようとしていたところで妖精族の不幸な母親に出会い、赤ん坊を託された。母親は死亡し、彼はそこから離れた馴染みのない土地で宿屋を始めた、ということらしい。ちなみに相方の病が冒険者を辞めるきっかけで、相方は辞めて五年ほどで死亡したらしい。

妖精族フェアリー小人族わたしたちと時間の流れが違うことは知っています。しかし、この年になるとあの子が成人する頃に己がどうなっているかが不安で…」

「…と、言われても、妖精族といってもフェアリーとケットシーは大分違うと思うしなあ。私の一族は身体的な成熟と成人を別枠で見ているし」

なにしろ恋人を見つけなければ身体的に成熟して…性別が分化することがない。故に、精神的に一人前になった時に成人の儀に挑むことが許される。だから、中には成人する前に身体が成熟する者もいる。私の反対だ。

フェアリーがどうかといえば、私は詳しくないのでわからん。が、己の半身のような植物に身体的成熟と寿命を依存するようなのもいるらしいというのは聞いた覚えがある。雛菊プラトリーナは多分違うが。

「そうですか…」

「彼女と同種のフェアリーに相談する…というわけにもいかないのか。何か面倒事でも控えていそうだし」

「そう…ですね。せめて、その頃にはあの子の本来の親の知れる物があの子の手に渡るようにしなければいけませんね…」

「自分で話さないのかい」

「あの子はもはや私の娘同然なのです。本当は父親ではない、などと告げるのは…」

まあ、わからなくはない…ような。母親は死んでるわけだし、父親もどうだかなあ。本来の家族がどうなっているかなんて、わかったもんじゃない。

「まあ、あなたの好きにすればいいんじゃないか。当事者が後悔しない道を選べばいい。…彼女がどう思うかはわからないが」

私の口を出せることではないし、そこまでお節介をする必要性も感じない。だってただの常連客だからね。根無し草みたいなものだから頼られても困るし。

「そう…ですね。後悔しない道を…選べれば良いのですが」

そういう不吉フラグな台詞言うのやめてほしいんだけど。この様子だと私にははしょっただけでやっぱり色々面倒な事情を抱えてるなこの人ら。とても関わりたくない。面倒事は避けて通るのが私の流儀だ。面倒くさいの嫌い。

なにかしら彼の中で区切りがついたのか、そこでどうやら話は終わった。故に私は紅茶を淹れなおして味わいなおすことにした。次こそ邪魔が入らないでほしいものである。場所が何処であろうと、紅茶の時間(ティータイム)というのは、私が一息つくための安らぎの一時だ。気軽に横槍を淹れないでほしいものである。

そもそも、基本的に私は他人にあまり興味がない。人の身の上話を聞かないのは単純に面倒事を避けるためだとか、己の事情を聴かれないためとかもあるが、一番は特に興味がないからである。聞いたところでだから何?っていうか。大体知る必要性もないし。





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