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「おはー、夕海」

「ん…さっちゃん、はよ」

「どうしたの、朝から元気ないじゃん?寝不足?」


ぐてりと教室の長机に突っ伏す夕海の頭をぐしゃぐしゃに掻き回す紗智子に対し、されるがままの夕海の反応は鈍い。

あれから数週間、弾速含めた3人は依然として和気藹々とFPSに興じている。夕海自身馴染みないジャンルだったが故に遊び仲間が増えたことを嬉しく思ってもいるし、2人よりは3人で連携する方が攻撃の幅も増えて楽しい。そうは感じているのだが。


(うー…もやもや)


いつもならある程度の距離感で接してから次第に口調含めて砕けていく弾速が、紗智子ことさーちゃんの場合は殆どある程度の距離感で接する期間がなかった。

コミュニケーションをとっているのが3人しかいないチャットルームだから会話をする頻度が高いのは当然だし、友人として前々から弾速との会話でも話題にはしていたし、仲良くなりやすい状況だったじゃないかと何度も思う。そう頭では思うのだけれど、何故だか夕海は釈然としない気分だった。


「やっぱししょーも女子がいいのか、こんちくしょー!」

「なーんだ、やっぱり嫉妬か」

「はっ口に出てた!」


思わず口元を押さえた夕海を見下ろして紗智子は呆れたような、けれども生ぬるい眼差しのまま笑った。


「馬鹿だね、夕海。師匠ってばあんた大好きじゃん、私とあんたがピンチだったら迷わず私のとこ来るもん」

「え、それ大好きじゃなくない!?」

「お馬鹿、信頼してるってことじゃん。夕海の方がピンチでも持ち堪えてることが多いからそうしてんの。ってか夕海に対してのフォローめっちゃ的確だし、動きの読みが凄いと思うけど?」

「それは弾速さんの腕の問題じゃない?」


納得いかないという感情がありありと見て取れる夕海を見て、紗智子は鼻で笑った。ややオーバー気味に肩を竦めたかと思うと、真っ直ぐに立てた指先を夕海の鼻先に突き付ける。


「よーく見てなよ、師匠のレクチャーの仕方をさ」

「ううん…?取り敢えずまぁ、わかった」


完全に信用した訳ではなかったけれど、普段の紗智子の察しの良さとあまりにも自信有り気な口振りを鑑みて夕海は一先ず頷いた。


「でも私のこと大好きだったら弾速さんもーほー疑惑なんですけれども?」


思わず呟いた一言は紗智子の耳には届かなかったらしい。芽衣を見つけて大きく手を振っている背中が、夕海には何だかとても大きい存在に思えて仕方なかった。

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