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『さーちゃん、ウエス…いや、左サイドから敵が回り込んでるから警戒して』

『は?へ?左サイド、あ!いたいたいた!ちょっぴよったし!やばっ』


【さーちゃん killed by ウエスタンボーイ】


『俺の奢りだ、釣りはとっときな…って。あーもうこのやられたときのこの決め台詞むかつくー!!!』

『まぁま、切り替えていこう。反応はよかったけど敵の方の狙いが上手かったかな?撃ち勝てそうにないときは物陰に隠れてヘルプ呼んでも大丈夫だよー僕かゆーJIさんでフォローに行くから』


何試合か重ねるうちに紗智子の扱いを心得てきたらしい弾速はやんわりとアドバイスを伝えつつ、宥めるように穏やかな声音で言葉を紡ぐ。

夕海はいつもより彼が慎重な言葉選びをしていること、努めて穏やかであるように心掛けていることを感じ取った。紗智子はどうやらヒートアップしやすい性質であるらしい。だがやんわりと宥められれば瞬時に気持ちが凪ぐようで、その苛立ちの熱は持続しない。切替の速さは夕海も知るところではあるが、弾速の適応力には少し驚いた。自分が知らなかった一面だ。


(しかし教えるのが上手なのかさっちゃんも上達したな、私もうかうかしてられない…というか弾速さん初めましてのさっちゃんに何故そんな気さくなんだ。私の見立て間違ってたかなぁ…もう私は師匠の心がわからないよ!)


『ちょ、ゆーJIさん!前前前!』


ぼやっと画面を眺めていた夕海に焦ったような弾速の声が聞こえる。

我に返って画面に焦点を合わせると、銃口をこちらに向けた敵と視線がかちあった。


「やば!」


ザッ!


何かを切り裂くような音が聞こえ、眼前に迫った敵はその場でくずおれた。ナイフを片手にした弾速のプレイキャラクターが見え、夕海はほっと息を吐く。


『はー間に合った…ゆーJIさん生きてるー?連日やってるから眠いかな』

『あ、今日眠そうだったしそうかも。私が無理矢理付き合わせたようなもんだし、悪いことしたかな。おーい起きてるー?』


交互に自分へ向けてかけられる言葉に、何故だか夕海は疎外感を感じてしまった。幼い頃にも感じた覚えのある気持ちだ。付き合いの浅い子に親友と思っていた子の一番仲良しを盗られたときと同じ、そんな気分とよく似ている。弾速と紗智子の仲よりも弾速と私、紗智子と私の方が仲が良いのだと叫びたくなる。


(いやいや、どっちも大事な友達なんだからみんな仲良くなって問題ないじゃん!私は子供か!もう二十歳過ぎているよ!)


自分の気持ちを否定するように緩く首を振って夕海はばちんと勢いよく自分の頬を叩く。


≪ゆーJI:ごめん!電話鳴ったから気をとられてた、迷惑メールだったわ≫

『あ、よかった。ゆーJI生きてたー…でも眠いんだったら無理しなくていいからね?』

≪ゆーJI:きゃっさーちゃんったら優しいだいとぅき(はーと)寝たら申告するんでもーまんた≫

『いや、ゆーJIさん。寝たら申告って、それもう反応できないやつじゃん!』

『ぷっく、確かに…てかとぅきは古いって言ったじゃん』


笑いを堪えた紗智子と小さく笑声を零す弾速に、夕海のささくれ立った気持ちが僅かに和む。


(寝不足で苛立ってたのかな。仲良きことは美しきかなだよ、私)


気を取り直してマウスを握る夕海。


この後めちゃくちゃ敵にふるぼっこにされた。気合はいれても精神的にはしょんぼりな夕海であった。

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