閉店の多い洋服店
昔々、あるところに一軒の洋服屋がありました。
その街にはたった一軒の服屋でした。にもかかわらず、そのお店の服は全く売れません。
在庫は溜まっていく一方でした。
とうとう在庫処分に困った服屋はある日、
「閉店するぞ~」
さすがに街に一軒しかない服屋です。閉店となると穏やかではありません。
人々は我先にと服屋に殺到しました。
そして服は飛ぶように売れました。
すると気を良くした服屋は店を閉店することなく、逆に大量の服を仕入れました。
そして再び、
「閉店するぞ~」
今度は前回の半分の人々が来ました。
前回ほどではありませんでしたが、とりあえず売れました。
そして三度大量に仕入れ、
「閉店するぞ~」
しかし、さすがに三度目。とうとう人々は、
「またいつもの閉店セールか!」
結局、誰も来ませんでした。店には大量の在庫の山。
在庫を抱えた服屋は結局、そのまま本当に閉店してしまいました。
しばらく後、いつまでもお店を再開しない服屋の前を、一人の老人が通りかかりました。
そして服屋の知り合いに尋ねました。
「ところで、あの服屋は一体いつになったら閉店するのかね?」