23 第十一幕 インスマスの再興
23 第十一幕 インスマスの再興
インスマスに着くと、そこは確かに廃墟の
街にしか見えなかった。見える範囲の家々は
ほぼ焼け落ちている。
「やっと着いたの?」
起きてきた真知子が車を降りて来た。
「ここはまだ街の外れなので、中心の方に行
ったら少しは建て直している家もあるみたい
だよ。僕の家はもっと東の方なので、どうす
る?君たちの目的はダゴン秘密教団の教会跡
地だよね。あそこは今のところ手が付けられ
ていないので廃墟のままだけどね。」
「そうでかね、僕たちはとりあえずそこに行
ってみようと思います。ウィリアムさんは家
にドられるんですよね?」
「そうだね、連絡をくれたら、帰りもアーカ
ムまで連れて戻ってあげるから。」
「助かります。」
三人はここで別れることになった。街の中
心へは街道が補修されていないので車では難
しいからだ。ウィリアム=オーンは一度イン
スマスを通り過ぎて北からの街道を戻るのだ
そうだ。岡本浩太もオーンも衛星対応の携帯
電話を持っていたので電波の届かないインス
マスでも連絡は取れるので安心だ。
「ここから歩くの?」
「そうだよ、ここからは歩いて20分くらい
かな。」
「そんなもんか、だったらいいわ、さっさと
行こう。」
風間真知子は車で十分睡眠がとれたので晴
れやかな顔をしているのでは、と浩太は思っ
たがそうではなかった。何か沈んだ表情をし
ている。
「どうした?何かあった?」
「浩太は気が付かなかった?あのオーンさん
って人。なんだか寂れた漁村みたいな臭いが
したわ。」
「魚臭いってこと?」
「生臭い、かな、どちらかと言うと。」
「インスマスの関係者だからね、それくらい
はあるんじゃないかな。」
「判ってて同乗したの?」
「そうだよ。彼が深き者どもだとしても、驚
かないさ。」
「あなたって動じないというのか、鈍感とい
うのか、頼りがいがあるのか、身の程知らず
なのか、謎ね。」
「君も十分謎だけどね。」
そんな話をしていると、いつの間にか二人
はある建物の前に差し掛かった。そこは大き
な建物で一軒家ではなかった。「ギルマン・
ホテル」という看板が焼け残っている。元は
ホテルだっだ。
「ここがギルマン・ホテルか。」
「跡地、ね。」
すかさず真知子が訂正を入れる。
「あと少しでダゴン秘密教団の教会があった
場所だよ。」
目的地はもう近くだった。