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21 第十幕 交差する運命(3)

『燎原の炎』

                綾野祐介


21 第十幕 交差する運命(3)


 そんな二人、というよりは本来岡本浩太一

人を訪ねて来た日本人がいた。


「結城さん、お久しぶりですね、どうされた

んですか?」


「久しぶりだね、浩太君。こちらは?」


「彼女は風間真知子さんといって、実は星の

智慧派の方です。それと風の民の一員でもあ

ります。」


「はじめまして、風間です。結城さんですか、

彼から話を聞いたことがあります。確か陽日

新聞の方では?」


「ええ、元陽日新聞の結城良彦です。今は綾

野機関の一員なんですよ。」


「綾野機関、って綾野先生が何かやり始めた

んですか?」


「そうなんだ。実はどうもこの世界にどっぷ

りと嵌ってしまって、相談しようと綾野先生

を訪ねたらちょうどイギリスから戻られたと

ころで、いろいろと話をした結果、行動を共

にすることにしたんだよ。『綾野機関』って

いう名前は僕が勝手に付けただけでまだ正式

ではないしメンバーも今のところは二人だけ

なんだけどね。特に僕は無理やりだから。」


「何かするなら必ず連絡ください、とお願い

していたのに。」


「いや、多分君にはここでもっと知識を得て

欲しいというのが綾野先生、ああ、先生と呼

ぶのはおかしいね、綾野代表の意思なんじゃ

ないかな。だから僕をここに越させたんだと

思うよ。勝手に動かないように釘を刺すため

にね。」


 浩太は不満だったが今の自分がどれだけ綾

野の役に立てるのか、確かに自信がなかった。


「ところで、さっき星の智慧派って言わなか

ったか?」


「そうですよ、彼女は星の智慧派の一員に間

違いありません。」


「その彼女と一緒に君はここで過ごしている

のか?}


 まだまだ知識が足りない結城にしても星の

智慧派と綾野たちが相反するものだというこ

とは既定の事実だと思っていたのだから不思

議に、或いは不審に思うのは当たり前だった。


「なかなかご理解いただけないとは思います

が様々な稀覯書を読み解くには多くの人に携

わってもらった方がいい、というような、ち

ょっと複雑な判断の元で僕は彼女と一緒にこ

こで日々解読、判読に勤しんでいる訳です。」


「なんだかよく判らないが、綾野代表は知っ

ているのかい?」


「綾野先生には、ああ、やっぱり僕も綾野先

生と言ってしまいますね。もういっその事、

綾野先生で統一したらどうでしょうか。」


「それもいいかもな。」


「綾野先生にはお知らせしていません。僕だ

けの判断です。もちろんアーカム財団にも知

らせていません。但し、彼らは当然掴んでい

るでしょうね。ただ、稀覯書の解読が進むの

なら見てみないふりをしている、もしくは最

後に星の智慧派には解読結果が渡らないよう

に妨害するつもりで見逃している、といった

あたりでしょうか。」


「そこまで判っているのなら、僕からは何も

言わないし綾野先生にも報告しないようにす

るけど、人類の未来を色恋沙汰で見誤らない

ようにすることだね。」


「そんなことでは、」


「いいよ、深くは聞かないし問い詰めたりす

るつもりもないから。」


 黙って聞いていた風間真知子が割り込む。


「何、何?どういうこと?」


「君には関係ない話さ。」


「もしかして馬鹿にしてる?」


「そんな訳ないだろう。頑張って二人で協力

して稀覯書解読を進めろってことさ。」


 二人の痴話げんかに巻き込まれないように

結城良彦は席を外すのだった。

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