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19 第十幕 交差する運命

『燎原の炎』

                綾野祐介


19 第十幕 交差する運命


 風間真知子がミスカトニック大学附属図書

館に入ろうとしたときだった。中から出てき

た青年とすれ違った。


(どこかで見た気がする。)


 どうもそれは、すれ違った相手にも同じ感

想を抱かせたようで、出てすぐに立ち止まり

真知子の方を向いて話しかけてきた。


「あの、失礼ですが、どこかでお目にかかり

ませんでしたか?」


 使い古されたナンパの常套句のように聞こ

えてしまったので、その青年は少し照れた様

子だった。


「確かに私もそう思っていました。どちら様

でしたか?」


「僕はここに留学している岡本浩太といいま

す。あなたは?」


「私は風間真知子、今日ここに来たばかりで

す。」


「風間さん。やはりどこかでお目にかかって

いますよね。そうだ、琵琶湖大学付属病院で

ナイ神父が現れた時に、星の智慧派の一人と

して来ておられた方では?」


 隠す必要はない、と真知子は思った。


「確かに私は星の智慧派極東支部に所属して

いる者です。あの場所にいらっしゃったので

すね。岡本浩太さんといえば確かツァトゥグ

アに吸収された人の一人でしたか。」


「そうです。あなたは確か火野とかいう人と

一緒に来ていました。火野君は来ていないの

ですか?」


「彼は今セラエノです。」


「セラエノですって?あのセラエノ大図書館

ですか?確かマークさんとマリアさんが行っ

ているはずですが。」


「みたいですね。私も一緒に連れて行ってほ

しい、と頼んでいたのですが置いていかれて

しまったので、ここに来ました。」


「ここへは旧支配者たちの封印を解く方法を

探しにきたのですか?」


 隠す必要もないほど星の智慧派の目的は今

は明確になっている。


「もちろん。ただ教団の命というよりは自分

の興味でここまできました。」


「自分の興味?」


「火野君がクトゥグアの眷属、火の民である

ことはご存知ですか?」


「いいえ。名前からもしかしたら、とは思っ

ていましたが。ここで色々と調べ物をしてい

ますが日本に対しての記述がある書物はほと

んどないので日本に僅かにいるといわれてい

る火の民や風の民のことは皆目判らないので

す。まさか、風間さんというのは。」


「風の民です。」


「火野君もそうですが、クトゥグアやハスタ

ーの眷属が星の智慧派に在籍しているんです

か?」


「それでいいと神父はおっしゃいますので。」


「ナイ神父ですか。あの方の考えは僕らのよ

うな者では想像もつきませんね。」


「それは私も同じです。」


 二人は変なところで同調したようだ。


「で、あなたはここでハスターの封印を解く

方法を探すと?」


「そうですね。というよりはハスターそのも

のについてもっと知りたいと思ってきました。

風の民の使命なんて興味はなかったんですけ

ど。あなたは、ここで何を?」


「僕は不用意に関わってしまったということ

もありますけど、もっともっと知識を吸収し

て例えそれがアザトースの封印を解く手助け

になったとしても、旧支配者たちの復活を阻

止し続ける、という意思を持ってここで日々

過ごしています。あなたとは相反する立場で

すね。」


「いいえ、それは少し違うかも知れませんよ。

あなたが旧支配者たちの封印を解かれないよ

うにするために様々な書物を研究しているこ

とは結局封印する方法を探している、もしく

は封印が解けないようにする、ということで

しょうから、いずれにしても封印を解く方法

は解読するに越したことがないのではありま

せんか?だったら、私どもとは辿り着く結果

が違うだけで途中までは同じだとも言えるで

しょう。」


「では協力し得ると?」


「可能性はありますよね。」


 セラエノ大図書館とミスカトニック大学附

属図書館。二つの図書館で似たような展開が

生まれていた。


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