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15 第八幕 セラエノの邂逅(4)

『燎原の炎』

                綾野祐介


15 第八幕 セラエノの邂逅(4)


 セラエノ大図書館には異形の司書がいる。

司書と言っても人間ではない。円錐型の生物

(生物と言えるかどうかは定かではない)が

管理をしている。彼らは図書館を訪れる者た

ちの目的に合った本や断片、石板などの場所

を案内してくれる。但し、言語などで意思疎

通を図ることはできない。一方的に案内する

だけだった。


「司書たちに探させてみようか。」


「あの変な生き物にですか。」


「彼らはこのセラエノ大図書館の蔵書たちす

べてを把握している筈なんだが、うまくこち

らの希望が伝えられないので必ず目的のもの

が見つかるとは限らないんだよ。『ネクロノ

ミコン』は僕もマリアも探してみたが見つか

らなかったので彼らに頼んでみたけど今まで

案内はしてくれていない。ここには無いのか、

それともこちらの意思が伝わっていないのか

判別が付かないんだ。」


「それで、試しに僕が頼んでみろと?」


「そういうこと。」


 火野は半信半疑で『ネクロノミコン』を探

していることを円錐型のものに向かって念じ

てみた。するとどうだろう。頭の中に何かの

イメージが入ってきた。星の智慧派極東支部

で見たラテン語版『ネクロノミコン』とは違

うもののようだ。


「そう、それだ。」


「なんだ?彼らと意思の疎通ができたのか?

僕はここに来て何年も経つけど、そんなこと

は一度もなかったが。」


「彼は曲りなりにもクトゥグアの眷属の末裔

なんだから、あなたや私とは違うのかも。あ

なたの大伯父さんも普通の地球人だったから

苦労したんじゃないかしら。」


「そうかも知れない。なら彼のような火の民

がここに居てくれたほうが色々と調査が進み

そうだな。」


 火野将兵は二人の会話を聞いてはいなかっ

た。円錐型の司書となんとか意思を疎通させ

ようとしていた。


「こっちだそうです。」


 司書が動き出した。三人が続く。マークが

いつも居る閲覧室を出て奥へ奥へと進む。


「こんなところにも通路があったんだな。」


 マークも通ったことがない通路をまだ奥へ

と進む。迷路のようなので元の部屋に戻る術

は司書についていくしかない。


 いくつかの扉を通り三人と一匹(?)は奥

へと進む。やがてある部屋の前で止まった。


「ここは?」


「ここは誰かの部屋のようですね。開けてみ

ましょう。」


 火野将兵がドアを開けると中はベッドなど

が置いてある生活感のある部屋だった。机や

本棚がある、書斎兼寝室のようだ。


「まさか、ここは大伯父の部屋なのか?」


 マークはラバンとは入れ違いにここに来て

いたので生活していた部屋も含めて引継ぎが

全くできていなかった。すべて一から見つけ

なければならなかったが、準備ができていな

かったことを怒っても仕方ない。文書を読み

解くのに忙しくてそんな余裕がなかったのだ

と思った。


「ここがもっと早く見つかっていたら調査や

解読が進んでいただろうね。」


 残念そうにマークがつぶやいた。


「そんなことより『ネクロノミコン』を探さ

ないと。」


 三人がそれぞれに本棚を探す。『ネクロノ

ミコン』は見つからなかった。


「ここじゃないのか。」


「でも、さっきはラテン語版ではない『ネク

ロノミコン』のイメージが頭に入ってきたの

ですが。」


「そうなのか。だったら、ここにあるはずだ

ろう。」


 三人はさらに丁寧に部屋の中を探すのだっ

た。






 

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