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11 第七幕 火の民の役目(3)

11 第七幕 火の民の役目(3)


「どうだ、何か判った事はあるか?」


 火野将兵が一人部屋で夕食を食べていると

ころに火の民の東京での拠点である警備会社

「シーセキュリティ株式会社」の将兵がバイ

トをしていた時の上司だった早野稔が訪ねて

きた。


「今のところは特に。ただ、上手くいけばプ

ロヴィデンスの教団図書館辺りには派遣して

貰えるかも知れません。地道に信頼を得て待

つしかないでしょう。」


「そんなのんびりしていて大丈夫なのか?お

前が裏切り者だという意見も最近は出ている

ようだぞ。」


「そうなのですか。僕は説明を尽くして星の

智慧派に入ったつもりなのですが。」


「星の智慧派に取り入って火の民を捨てよう

としている、とな。」


「そんなこと、あるはずが。」


「まあ、そう言うな。長老たちは村を出ない

から、外との接点がない。外で自由にしてい

るお前たちを妬んでいるだけだろう。」


「外で自由にしている火の民は早野先輩を含

め大勢居ると思いますが。」


「俺は自由じゃないさ。ただ、お前の場合は

特殊だから、特にそういわれても仕方ない、

と諦めろ。お前が火の民を捨てていないこと

は俺はちゃんとわかっているから。」


 実際にはどこまでこの人は自分を庇ってく

れているのだろう、と考えると、普段の付き

合いからむしろ、積極的に「将兵は星の智慧

派に寝返った。」という噂をまき散らしてい

る気がした。そういう人だった。


 

 火野将兵が自らの立場、目的、希望の中で

どうしたらいいのか迷いが生じていたとき、

また将兵の元をナイ神父が訪れた。


「まえに話していただろう、セラエノに行く

気があるか?」


「もちろんです。でも僕なんかが行ってもよ

ろしいのでしょうか?」


「構わない。そこでお前がクトゥグアの封印

を解く方法を見つけても我には何も問題はな

い。我とクトゥグアは別に敵対している訳で

はないのでな。」


「そうなんですか。確かンガイの森を焼かれ

た、とお聞きしていましたが。」


「あんなことは些事だ。向うも我に敵対しよ

うとしてあのような行為に出たわけでもない

しな。」


「そういうものなのですね。で、私はどうし

たらよろしいのでしょうか?」


「今でもよければ、いま直ぐに送ってやる

こともできるが?」


「少し準備もありますので、明日でもよろし

いでしょうか。」


「わかった、明日またこの時間に。」


 それだけ言うとナイ神父は漆黒の闇へと沈

んで行った。信用できるわけではないが、連

絡役兼見張り役として訪ねてきている早野に

は伝えないと行けない。彼の伝え方ひとつで

火の民に居られなくなってしまうからだ。将

兵は「それもアリか。」と思っていた。自分

一人が全てを背負う必要はないはずだ。まし

てや火の民から疑われているのなら、火の民

の為に一生懸命になる義理はない。


「セラエノに行くの?」


 風間真知子だった。


「聞いていたのか。」


 彼女が聞いていたことはナイ神父も知って

たうえでの事だろう。


「私は連れて行ってもらえないのかしら。」


「君は風の民だけど、ハスターの封印を解く

ことには興味ないだろうに。」


「それた、そうなんだけど。なんだか、最近

変な夢を見るのよ。」


「夢?」


「そう、夢。夢の中であなたはクトゥグアに

なってて、私はハスターなの。二人で宇宙を

駆け巡っている夢。」


「夢ねぇ。それで、その夢とセラエノに連れ

て行くことと、どう繋がるのかな?」


「だから、なんだか、私もあなたについてい

く方がいいのかなぁ、って。なんとなくよ、

なんとなく。」


 多分真知子は頭では考えていない。感じて

いるだけなので言葉では表現できないのだろ

う。


「だったら、明日この時間にここに来るとい

いよ。神父に頼んでみよう。」


「ありがとう。私もハスターの事、少し勉強

しないと全く知らないの。」


「自分の一族の事だから、知っておいた方が

いいのは、いいけど。まあ、君が僕のように

封印を解く使命を帯びている、って訳じゃな

いんだから、気楽にやるといいよ。」


「ううん、違うの。私は、やっぱり使命は帯

びているんだと思う。そんなことを父が言っ

てた。私じゃなきゃダメなんだって。そんな

話を真顔でする父が怖くて詳しい話も聞かな

いで逃げてきたの。今では少し後悔している

わ、私が家を出てすぐに父は事故で亡くなっ

てしまって、もう二度と話す機会もないんで

すもの。」


 能天気に見えていたが、彼女は彼女で悩ん

でいたのだ。


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