セーブ 7 ドワーフの少女 アイラ
夜明け前だが、目が覚め布を濡らし顔を拭く。武器、防具を装備し、見張りに立っているミルフィと交代し、その間道具の整理、確認を行う。
音声さんに、空洞のことを聞いて復習しよう。
「音声さん、1~5層くらいなら危険度は少ないんだよね?」
(はい。現段階のパーティの総合力からすると、5層までがベターだと思われます。
5層までの採掘で入手できる品は、銀鉱石、銅鉱石、鉄鉱石です。注意しなければいけないモンスターは、ゴブリンメイジ、ゴブリンシャーマン、ジャイアントアントソルジャーです。視認したら、優先で撃破することをお勧めいたします。)
音声さんが、上げたモンスターは近くの仲間を呼ぶ性質と、シャーマンは回復と状態移譲魔法、メイジは強力な攻撃魔術を放ってくるそうだ。
知恵あるモンスターがでてくると、これまで通りにはいかないってことだよな・・・
ミルフィも起きてきて、軽い食事しながら、音声さんから教えてもらった情報と、ミルフィが持ってる情報をすり合わせし情報を共有する。
俺達は、若干の不安を抱えつつ、初のハルミア大空洞に足を踏み入れるのであった。
(魔素の濃度が、通常より濃くなっています。奥で、何かが起こってるのは確かです。油断なされぬ様に・・・一層の解析を開始致します。)
音声さんは、空洞に入った途端に注意を促してきた。確かに空洞に入った途端に息苦しく感じるし、魔力感知は、何かが邪魔して感知しづらい・・・魔素の濃度が濃いせいらしいが・・・
慎重に進むこと、一時間。一回の戦闘をこなし、銅鉱石と、鉄鉱石を採掘できた。
今のところ、注意モンスターは出てきていないし、一層はそのまま通過し早々と二層に降りる。
二層になってもモンスターに変化はなく、採掘できるものは全て取り、3層へ。
3層になると、ゴブリンメイジや、シャーマン。ジャイアントアントソルジャーの注意モンスターが現れ始め、戦闘が長くなっていく。洞窟という特殊状況下の中、殺し合いをすることにより、体力と、精神がごっそり持ってかれる。
3層の採掘が終了するのを見計らって、休憩を入れることにした。
俺は、聖水を辺りに振りまき、場を清める。ミルフィに休む様に促し、俺は辺りを警戒する。
「トキムネさん・・・モンスターにも魔素の影響が出始めているようです。
モンスターが凶暴化しているように感じます。それに、遭遇する回数が多い気がするのです。・・・」
ミルフィの思ってることは俺も考えていた。いくらダンジョンといえど、今までの地上での道のりで遭遇したより軽く4倍は超えている。これは、ミルフィでも異常だという。
ミルフィの休憩も、終わり。探索を再開する。4層に降りると一本道になっており、奥が全く確認できない。しばらく歩くと、広場が見え、何かの叫び声が聞こえてきた。
「Gryurrrrrr!]
広場では、戦闘が行われており、モンスターは視認で7体。対するのは・・・一人だけ?
「ミルフィ、加勢するよ!」
ミルフィに声をかけ、クイックと、マジッククイックを発動。強化をする。
ソシテ、ウインドアローを七発だし、待機させ俺は走り出し後ろを向いたゴブリンメイジに切りつけ、ウインドアローを全弾放ち、包囲を切り崩す。
「傷つき倒れる者に、癒しの光を!癒しの光!」
盾を構え、防戦一方だった者に光が降り注ぐ。
盾を構える者はなんとか、持ち直せそうだ。俺は、盾を構える者の隣に向かい、盾に防がれて、隙ができたゴブリンに突きを繰り出し、絶命させる。
「悪いけど、加勢するね!右の奴をよろしく!俺は左を!」
「わかった!指示に従う。」
あれ?可愛らしい声だな?と思ったが、戦闘中のことを思い出し、素早く左のゴブリンを袈裟斬りで倒す。
どうやら、右の方も終わったようだ・・・。
俺は振り向き、相手を確認する。
盾の構えを解き、見えてくる姿は・・・小さな女の子と言ってもいいくらいの身長の女の子だった。
疲れたらしく、女の子の体がふらつく。俺は、女の子の体を支えようと、一歩踏みだした瞬間、彼女の頭に黒い靄が見えた。
咄嗟に、彼女を突き飛ばし刀で受けようとするが少し遅かった・・・左肩を斬りつけられ、刀を落としそうになる。
俺の前に突然現れたのは、鎧を着込んだゴブリンだった。
忌々しげに俺を睨んでくるゴブリン・・・
「Gruoooooooooo!」
女の子を殺せなかったのが余程、イラついたのか雄叫びを上げて俺を威嚇する。
剣を力任せに俺に繰り出し、殺そうとする・・・その力に、俺の右手は痺れ始め
下からの斬り上げを刀で受けた時、俺は態勢を崩された。
殺られる・・・
そう思った瞬間、横から盾でゴブリンの頭をぶん殴り吹っ飛ばす者がいた。
吹っ飛ばされたゴブリンに女の子は、止めの一撃を全力で見舞う。
グシャァ!と嫌な音が聞こえ、ゴブリンの頭は大きなハンマーの下敷きになっていた。
だが、それでも起き上がり、女の子に向って手を伸ばし、女の子の首を締め上げる
刀を鞘に収め、前傾姿勢のまま精神を統一する。それと、同時に魔力を体から刀えと流し込んでいく。
限界まで、流し込み俺は、ゴブリンの腕目掛けて一の太刀を振るう。
刀から、魔力が放たれ、刃と化す。ゴブリンの腕を、斬り飛ばし返しの刃で、首をハネる。
剣道なら、このまま残心するのだろうが、今は女の子を受け止めるのが先だ。
俺は、地面に激突寸前で、なんとか滑り込み女の子を受け止めることに成功する。
女の子を腹に乗せたまま、俺は脱力感に襲われる。初めて武器に魔力を通したが、
全力で注いでしまったせいか、頭痛がひどい・・・
「げほげほっ・・・私は・・・?」
女の子が、目覚めたようだ・・・俺と抱きつくような格好でいる女の子と目が合う
桃色の髪・・・髪で左目は見えないが右目は、青い瞳が潤んでいるように見える。
身長は140cmくらいだろうか・・・俺の腹に乗ってるのだが驚く程軽い。
俺の胸に、頭を預けているのが、恥ずかしくなってきたのか、ボフッという音が聞こえそうなくらい、顔を真っ赤に染め目w咄嗟に逸らされる・・・
そりゃ、そうだよな・・・目覚めたら知らない男の上に乗ってたなんて・・・ましては、こんな気持ち悪い男になんて・・・ね。
叫ばれる前に謝らなくては・・・
「あの・「ごめん!君を受け止めるのに抱きしめてしまって!本当にごめん!」
女の子は俺の大声の謝罪に目を、パチクリさせている。
「ううん。あの時私は、死を覚悟した・・・その時、あなたが見せた剣技。武器と扱う者が一体化したような、自然な一撃。美しかった・・・それをもっと見たいと思った。だから、あなたが助けてくれて感謝こそすれど、あなたが謝ることは何もない・・・それに抱きしめられて・・・気持ちよかったし・・・」
女の子はますます、顔を真っ赤に染め、だけど先程より強い口調で
「私の名前は、アイラ。クリエイター・・・私を雇ってくれない?」
ドワーフ少女登場です。某MMOで、自分のキャラのドワーフ少女をピンク髪のツインテールにしてキャラメイクしたのはいい思い出です。
次回は、日曜日に更新致します。