セーブ 4 押しかけ仲間?
お読み頂きありがとうございます。今回話が大分長めです。
評価、感想を頂けると作者が泣いて喜びますので、よろしくお願い致します。
左目がズキズキと痛むが、構わず目を開ける。
俺は、大通りの小道に入る曲がり角に立っていた。辺りを見回すが、別段おかしなところはない。
「いつっ!」
急に頭痛に襲われ、余りの痛みにそのまま、しゃがみこんでしまった。
「おい。にいちゃん、大丈夫かい?治療院に連れていこうか?」
割腹のいいおっちゃんが、俺を心配そうに見ている。
「ありがとうございます。少し頭痛がしただけですから。」
「そうかい?あんちゃん顔色が悪いから無理すんじゃねぇぞ。」
俺は会釈をし、割腹のいいおっちゃんと別れる。このおっちゃんみたいに、いい人ばかりならいいんだけどな・・・
俺は、ズボンのポケットに手を突っ込む。
ギルドの受付用紙を折りたたんで、ポケットに入れたはずだ・・・
右のポケットにも、左のポケットにも用紙が入っていない・・・
何処かに、落としてしまったのか?だが、今は探してる暇などない。
俺は、小道に向って全力で走った。
走りながら、どうするか考える・・・喧嘩なんてまともにしたことがない俺が、
女の子を助けられるのだろうか?格闘技と言えるのかわからないが、ボクササイズなら経験がある・・・一週間だけ・・・ね。
素手じゃ敵わないから、鞘でぶん殴るか・・・中学の剣道の授業しか経験ないけど・・・絶望的である。
最悪、女の子を逃がして、俺も全力疾走で逃げる・・・これしかないよね?
「きゃああ!!!!」
やばい・・・女の子が捕まった!全力疾走しすぎて、片腹が痛い・・・こんなことならもっと痩せれば良かった・・・
俺は、痛む片腹を押さえながら更に全力疾走を続ける。
ビリリリリッ布を力任せに引きちぎる音が聞こえる。俺は女の子に覆い被さろうとしている男の後頭部目掛けて、鞘をフルスイングする。
ゴキィと嫌な音がして男は前に倒れこむ。まず一人!女の子の口と手を押さえ込んでいる男に回し蹴りを食らわし、女の子を開放することに成功する。
あれ?映像では男は3人だったはずだ?後一人は?
その時、背中に熱を感じ、壁に吹っ飛ばされる。
一瞬、意識が途切れそうになるがなんとか、堪え態勢を整える。
木箱の奥から、金髪の醜い豚・・・もとい男が現れわめき散らす。
「お前は誰なんだよ!!!!ミルフィちゃんと結ばれるところを邪魔しやがって!!!!僕をジラスト伯爵家の四男。ヨーゼフ・ジラストだと知っててやっているのか!!!!」
結ばれるってあんた・・・あんたのやってる事、レ○プじゃん・・・
「その伯爵家の息子が女の子を無理やり襲うなんて、犯罪じゃないのか?」
「その女は、平民だから関係ないんだよ!!!法律なんて金でなんとでもなる!!!」
なんで異世界の貴族で太っているのは、こんなに下衆いんですかね?殺したくなってきた。殺してもいいよね?
(いいとも~。)
「うぉっ!」
まさかの機械音声さんからのいいともコールが貰えるとは思わなかった・・・
思わず、声が出ちゃったよ。
「何、ゴチャゴチャやってんだよ!!!ぶっ殺してやる!!!」
目の前のぶ・・・もう豚でいいや・・・豚はナイフを取り出し、魔力を纏わせて俺に向けて射出する。
すると、ナイフがこれから通るであろう軌道を、黒い靄が先に通過し、俺の腹にまとわりつく。
これって、豚が狙っている場所が見えるってことじゃね?
二本目が射出され、黒い靄は俺の頭にまとわり付く。
俺は刀を抜き放ち、一本目を躱し、二本目は弾く。
そのまま、豚まで突進し、刀の峰で豚の顔面を横一文字に打つ。
「ぶきいいぃ!」
豚は断末魔を上げて、気絶した。
俺は女の子の方に振り向くと、努めて優しく声を掛けた。
「大丈夫?怪我はしてないですか?」
女の子は、破れた上着でなんとか体を隠しながら
「大丈夫です。助けて頂きありがとうございました。」
と応えてくれた。
俺は女の子を見て、慌てて後ろを振り向くと、上着を一枚脱いで女の子に差し出す。
「これ・・・嫌かもしれないけど、君みたいな綺麗な女の子がその格好じゃ・・・
」
だって・・・そうでもしないと、女の子の凶暴で自己主張の強いメロンが、半分以上見えてて、おじさんどうにかなっちゃいそうだから!!!マジで!!!
女の子はおずおずと、俺の服を受け取り、着替える。
「あ・・・・」
女の子の声が聞こえて、慌てて振り向くと、女の子は服を頭だけ通して、くんかくんかしていた。
「ウボォ。」
俺は奇声を上げて慌てて回れ右をする・・・見えちゃったよ・・・凶暴なメロンの先にあるサクランボまで・・・
しばらく待つこと・・・(掛け算一の段から七の段まで数えてしまった)
「お待たせしました・・・」
女の子が声を掛けてくれた。
「改めて、助けて頂き本当にありがとうございました。私は僧侶をしております
ミルフィ・ローゼッタと申します」
「気にしないで下さい。俺の自己満足の為ですから。無事で本当に良かったです。
俺は、瀬能 時宗といいます。」
「トキムネさんですね・・・素敵な痛っ」
ミルフィさんが痛みでバランスを崩しそうになるのを、慌てて抱きとめる。
「はぅ・・・」
抱きとめられたミルフィさんの顔は、ゆでタコみたいに真っ赤だ。
そりゃ、会ったばかりの男に抱きしめられたら恥ずかしいよなぁ・・・俺は、ミルフィさんを支えて上げて立たせると、ミルフィさんの前でしゃがむ。
「無理するといけないから、おぶっていきますよ。あ・・・こんな事があったばかりだし嫌・・・ですよね?」
失敗した・・・ミルフィさんの事、もっと気遣うべきであった。男に触られるなんて嫌だろうし。
「嫌じゃありません!!!こちらからお願いしたいくらいです!!!」
「あっはい。」
ミルフィさんが俺の首に手を回し、背中に体を預けてくる。
背中にメロンがメロンが・・・いい匂いいい匂い・・・
俺は立ち上がり、いやらしくないように、お尻に手を添える。
「あんっ」
今、耳元でその声はダメだって・・・桃やわらけー。
俺は、無言のまま、大通りを目指すのであった。
ミルフィさんは、中央の通りにある教会の一室を借りている旅の僧侶なのだそうだ。俺は頭の中で、円周率を何度も数えながら教会に向かった。
途中、ミルフィさんから、「ああ・・・」とか「脳まで痺れるような素敵な匂い・・・」とか聞こえたような気がするけど、聞こえない~。
教会に着き、シスターに事情を説明し、ミルフィさんのことをお願いする。
今は、中央通りの宿屋にいることを伝え、教会を出た。
教会の帰り、頭の中で音声さんに呼びかける。
(なんでしょうか?)
元の機械音声に戻ってるのが残念だが・・・
「音声さんが、豚と戦った時、手伝ってくれたんでしょ?ありがとう。俺じゃ助けられなかったと思う。それと、音声さんの声、可愛かったよ。」
(!!!!!!!)
恥ずかしさが爆発したような声にならない声が、俺の頭の中で響き渡る。
俺は嬉しくなってしまい、笑ってしまった。
音声さんは、その後しばらく返事してくれなくなってしまったが・・・
宿屋につき疲れはしていたが、アリッサと宿屋のご飯を食べて仲良く一緒のベッドで寝る。(俺は、全力で断ったんだが、アリッサが泣き出してしまった為)
アリッサの頭を優しく撫でながら、俺は眠りに落ていった。
翌朝、二人で仲良く起床し、顔を洗い食堂に向かう。
食堂には、ミルフィさんがいて、開口一番、俺に爆弾を投げつけた。
「トキムネさん、私をあなたと一緒にいさせて下さい。」