セーブ 3 認識の甘さと異能の発動
遅くなり申し訳ありません。若干グロい表現があります。ご注意くださいませ。
グロい表現があるときは前書きにてお知らせ致します。
『何故、儂を解析できるんじゃ!儂の魔力障壁はそんな簡単に突破できるはずはないのじゃ!』
と言っても・・・ねぇ?
頭の中で考えて見ると、再び、機械音声が流れてきた。
(精霊 ファルシア は、あの少女の眷属です。魔力回路の基礎パターンを、解析すれば後は、少しの工夫でどうにでもなります。)
この機械音声さんは、何処から聞こえてくるのだろう?素朴の疑問が沸いてきた。
(・・・・)
あぁ、まだ内緒ってことなのね?
「ファルは、彼女の眷属なんでしょ?魔力の流れが似ているからなんとかできたんだよ。」
俺ではなく、機械音声さんがね。
『もうすぐ夜になるのぅ。今日はあまり動かずに、あの木の下で休み、夜明けと共に、町を目指す方がいいのぅ」
俺達は街道沿いの木の下に移動し、警戒しつつ休むことにした。ファルが寝るまでの
間、魔法のことを聞き勉強したら、覚えたスキルが、風の矢Lv1 魔力結界 何故か、魔力操作がLvが上がり、Lv2になっていた。
夜、俺の腹の上で眠るファルを、指で優しく撫でながら、元の世界を想い眠りについた。
朝、起きてそのまま街道を歩く。昨日の夜にわかったことだが、元の世界から持ち出せたものは、財布(6,536円)タバコとライター、充電の切れたスマホであった。うん・・・役にたちそうにありません。
順調すぎるほど、順調に昼過ぎには、無事町に着いたのであった。
ファルは、一度腕輪に戻ってもらい、町の門を潜り町に入る。
『この町は、ハウエル新王国の、中央より外れた町でアルシュタッドというのじゃ。国が興ってから日が浅いせいか、貧富の差が激しい。中央の通り以外は通らぬことじゃ。ここでは、冒険者の登録と、旅の準備。それに宿をまずは探すのがよかろう。』
俺、この国の通貨もっていませんが・・・?
『お主の持っておる、自動火起こし装置と、タバコとかいう嗜好品。これは珍しいものだから、高値で売れるであろう。』
ほむ・・・なんかこの世界に来てからタバコを吸いたくない・・・受け付けなくなってるから売ってもいいやね。近くの道具屋さんに入って、買取をお願いしてみる。
待ってる間、道具のレクチャーをファルに受けていると、見た目12歳くらいの女の子が商品の拭き掃除をしている。
危なかっしいな~と見ていると、女の子は薬品の入った瓶を落とし割ってしまった。
「この野郎!掃除もまともにできねぇのか!!!」
店主は激怒し、女の子を棒で殴りまくる。
「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
女の子は泣きながら、謝り続ける。俺はいてもたってもいられず、店主が振りかざす棒を握り、彼女をかばった。
「小さい女の子に対して、いくらなんでもやり過ぎでは?」
「お客さん、奴隷をどう扱おうと、うちの勝手でしょう?お客さんとは関係のない話ですよ!」
『よせ!トキムネ!堪えるのじゃ。』
慌てて、ファルが念話を入れてくるが、俺は堪えきれなかった。
「女の子が割った瓶は俺が買取ますよ!それと、彼女を半日貸してもらえませんか?」
「ほほぅ・・・」
店主はあくどい顔になり俺を見てくる・・・あ、これ吹っ掛けられるな・・・
「タバコとかいう葉巻みたいなものは、一つ1万リルだ。火起こし器これは、2万リル。こいつが割ったポーションが2千リル。こいつの半日は5千リルだ。差し引き、2万3千リルになるがいいか?奴隷は、明日の朝返してくれればいい・・・」
俺は、ポーションを一つと、トレジャーバックを購入し、女の子と店を出た。
店を出て、女の子にポーションを飲ませる。これで、なんとか痛みは引くはずだ。
「お兄ちゃん、ありがとう・・・」
「お兄ちゃんね・・・この町に着いたばかりなんだ。おすすめの宿屋知ってるかな?」
「あい!アリッサ知ってるよ!こっち~」
うんうん。女の子はこうでなくちゃ。
俺は、慌ててアリッサの傍に駆け寄り、手を繋ぐ。
アリッサは、握られた手をしばらくぼーっと見ていたが、嬉しそうに握り返してくれた。
『全く、甘甘じゃな・・・』
誰かさんの小言が聞こえたが知らん。
途中、アリッサに、串焼きなるものを買って上げ、無事宿屋に到着。
宿屋でひと部屋借りて、アリッサの分の食事をお願いする。
「アリッサ。お兄ちゃんは少しお買い物行ってくるから、ここで待っていられるかな?」
「あい!」
俺は、アリッサの頭を優しく撫でて、女将さんにお願いする。
元々、女将さんもアリッサの事を知っていたようで快く引き受けてくれた。
冒険者ギルドは宿屋から近い場所にある。中央の通りを少し行ったところだ。
俺は冒険者ギルドに向っていくと、一人の司祭服を纏った水色の髪が綺麗な女の子を見かけた。女の子は、食料の入った網籠を両手に持ち重そうに歩いている。
一見すれば、普通なのだが、女の子の背中には、事故の直前に見た黒い靄がくっきりと映っていたのだ。
女の子は大通りの手前の小道を左に曲がろうとしている。
その時、俺の頭に無声映画のような映像が流れだした。
小道を曲がり、真っ直ぐ行った所に、人気のない少し開けた場所がある。
そこには、木箱が山積みに置かれ、女の子はそこに連れ込まれ、男3人に暴行され、嬲られ、最後は背中を刃物で切られ絶命する。女の子が涙を流しながら、死んでいくのを俺はただ立ち尽くしみているだけ・・・
なんて、悪趣味な映像だ・・・
俺は頭を振り、その映像をかき消し、冒険者ギルドに向かった。
小道に入る曲がり角に差し掛かった所、空間に綻びがあるのに気づいた。
他の人間には気づかないのだろうか?
俺は恐る恐る、綻びに手を差し伸べると・・・綻びから白いクリスタルが飛び出し
淡い光が周り包み込んだ。
(時の綻びを確認・・・解析完了。異能選択の刻を取得しました。セーブを発動致します。)
光が止むと、そこには青いクリスタルが浮かんでいる。先ほどまでは白かったはずだが・・・?
それに左目がズキズキと痛む。俺は左目を押さえながらギルドえと向かうのであった。
冒険者ギルドに入り、まずは、掲示板を眺める。俺、この世界読み書きできねぇ。
そう思っていると、文字が読めなかったはずが、次第に文字が日本語に変わっていく。
(言語理解を取得・・・日本語に翻訳完了、日本語にて表示されます。文字を書いた場合、日本語で書いた文字がアルディア語に自動的に直されます。)
機械音声さん・・・あんたパネぇっす。
俺は、意を決して受付カウンターに行き、冒険者登録をお願いする。
用紙に簡単な記入事項を登録・・・・できねぇ。
俺はどうすればいいんだ?出身国日本で通るのか?通りませんよね~。
用紙だけ貰い、ギルドを後にする。
妙な胸騒ぎがする・・・俺は女の子が曲がった小道を大急ぎで曲がり全力で走り出す。ギルドで受付やら説明やらで一時間くらいは経過しているはずだ。
嫌な感じがする・・・俺は目印の木箱まで着くと息を整えようとして失敗する。
血の匂いが辺りに充満している。
木箱の裏を覗くと・・・女の子だったモノがそこに転がっていた。
服は切り裂かれ、レイプされた後がある。背中を切り裂かれ、さらには首も切られている。
彼女の顔は苦しみに歪んだ顔のままだった。目には涙が流れた後がある。
俺は彼女の涙を拭い、目を閉じてあげた。
急速に自分に対して、怒りがこみ上げてくる。
ここは何処だ?異世界だろう。現代の常識が異世界で通じるとは限らないだろ!
俺は甘すぎた。あの時、彼女を追っかけていれば・・・
「うああああああっ!!!!」
俺の左目が輝き出し、辺りを眩しいくらいに光で包み込むと、俺の視界は暗転した。