6話 part3
~夜~
最後の戦闘で皆の状態と馬の怪我により進むのをやめ、屍のそばに留まるのは危険なためそこから手離れて野宿の準備を始めた
馬は隠れていたウェアウルフに襲われたらしく足をやられていた
いずれにせよ足をダメにした馬は置いていくしかない…、悔しいがウェアウルフの作戦勝ちだろう
ローブの男たちは輪をつくり、どうしたものかと話し中だ
「しっかしキレーだったっスねぇあの子、びっくりしたッス」
「まぁな、おれもだよ、…けどあんな子を連れてくるなんてホントにどういう目的だ?」
うーむ…… ……、……
「「だめだ、わっかんねぇ」ッス」
(こりゃ、考えててもしかたねーな)
「ロイっ、おれメシ調達しにそこの川まで行ってくっから」
「大量を期待するッス」こいつ、たかる気かよ…
「あいよっ、まかせんしゃい」
さて…、行くか…
~川~
近くにあった川に着く、川は澄んでいて月の光で泳いでる魚が見えるほどきれいだった
(よし、いけそうだな…て、あの子は…)
よく見れば近くに例の少女がいた、水際で空を見ている
風に揺れる髪は月の光と川の反射光でよりきれいに映り、その光景はまるで一枚の絵だ
「なーにしてんだ、嬢ちゃん」
「っ!……あなたは?」
突然の声で驚いたようだがすぐに少女は冷静を取り戻す
「ひでーな、君たちを護衛してる傭兵だよ、ジークっていうんだ。それで?何してんのこんなとこで」
おれの問いに少女はまた空を見上げてポツリと「空を…見てた…」と答えた
(空?そんなの見てて楽しいのか?)
どうでもいいこと考えてると少女は何か思い出したような顔をして
「あっ…、馬から落ちたときに…助けてくれた…人?」
(ぎこちないしゃべり方だなぁ…、人に慣れてないのか?)
「合ってるよ。その…すまなかったな、…ケガしてないか?」
受け止めたとはいえ危なかったからな、大丈夫だろうか…
「大丈夫…、受け止めてくれてありがとう」
とそっけなく答える少女は無表情で感情の色が見えない
並みの人が見れば10人中10人はキレイ・かわいいと言うだろうが少女からは年相応の女の子達のような感情は出さず、まるで遠いところを見てるように目は虚ろだ
「無表情で言われてもなぁ、笑おうぜ嬢ちゃん」とおれは二カッと笑顔で言う
「傭兵さん「ジークでいいよ」…ジークは…何してるの?」(無表情)
少女はおれのせっかくのアドバイスをさらっとスルー、質問してくるが表情のせいか全く興味なさそうに見える
「おれか?今から晩メシ用の魚をとるんだよ」
「魚?…、釣り?を…するの?」
少し表情を変えた、どうやら興味があるみたいだな…
「しねーよ、時間がかかってめんどくさい」
そういうおれに少女は不思議そうに首を傾け「じゃあ、…どうやって?」と聞いてくる
「楽な方法があるんだよ。あっ、そこはかかるから下がってな」
そういうとおれはゆっくり、あまり音をたてないようにして川の真ん中まで歩いた
(びっくりすんだろうな…)と思うとにやけてしまった
side少女
近くで川を見つけたのでそこで暇をつぶすことにした、
自分はあまりあの信者たちと一緒にいたくない、どうせあとで私を殺す人たちだ
そう考えても逃げようとしないのはもう諦めているから、もう十年も前から絶望していた私は抗おうともしない
そんな事を思っていると、急に背の高い男が現れ話しかけられている
確かこの人は落馬した私を受け止めた人だった。『ジーク』というらしい
落馬の時のことを気にかけてくれた、やさしい人のようだ
魚をとるから離れてろといい、彼は大剣を背負ったまま川の中心に立つ(なぜかにやけてる)
“魚”は見たことも、食べたこともなかったから興味がわいて、私は自然と近付いて水際に立って彼の行動を観察してると、彼は背負っていた大剣を振り上げ、おもいきり川にたたきつけた
side end
大きな音と水柱が無くなり、あとからプカーンと魚が浮いてくる、大半は衝撃で死んだり、気絶したりするのだが、信じられないほどの力で生まれた衝撃は何匹かの魚をグチャグチャにしていた
(見なかったことにしよう)
そして肝心の少女を見ると離れてろと言ったのに近くにいたらしく全身水浸しでへたりこんでいた
このとき少女は黒いローブではなく寝るための薄着をしていて……
…つまり服が水で肌に張り付いて体のラインがはっきりしているのだ
細い体だが年相応にでていてきれいなラインをしている(ナニがとは言わん)
うむ、将来は絶対美人になるな…
「って、違う違う!!す、すまん。やりすぎたっ」
必死に謝罪するおれ、こればかりはさすがに怒るかもしれない
覚悟を決めているおれが聞いたのは「ふふっ」という笑い声
えっ、と顔を上げると少女は無表情でも、怒った顔でもなく微笑んでいる
「エリーナ…」
「えっ?」
「なまえ、エリーナです。少しの間ですけどよろしくね、ジーク」
と言うと、少…エリーナは戻って行った
ジークはその背中を見ながら
(普通に喋れんじゃん……)
と驚いていた(えっ、そっち!?)