おまけ
ちょっとした過去
少しだけある少女の話をしよう
その少女はある貧しい夫婦のひとり娘としてこの世に生を受けた
肌は白く、瞳も透きとおった青、夫婦はたくさんの愛情をそそぎその子を育てていた
それから3年が過ぎ、もともと貧しかった家庭はいっそう酷さを増し、毎日満足な食事をすることもできず三人の容姿はまるで枯れ木のようにガリガリになった
それでも幼い少女は笑い、夫婦もその笑顔を見てはがんばるのだった…
だがそんな日常は続くわけもなく、少女は笑うが夫婦の顔から光はなくなりつつあった
そんな時…全身を真っ黒のローブでつつんだ一人の男が現れた…
男は言った…
「その子は魔法の才を秘めている、このまま終わりを迎えるより我らと共に神に仕えないか?共に歩むなら神はあなたたちに慈悲を与えるだろう」
そして男は懐からこぶし大の皮袋を出すとひもを緩め中身を夫婦に見せる、そこには今の自分たちでは到底稼げない額の金が入っておりこれを使えば間違えなく生きながらえることができるだろうと目の前の光景に夫婦は喉を鳴らす
「神は慈悲を与えるがそれを受け取るかはあなたたちの自由だ…考えるといい」
結局は選択肢なんか存在しない、受け入れなければ死ぬ
だがそれは娘をこの得体のしれない輩に売るということだ、神などとほざく不気味な奴に
だがしなければ娘も死ぬのだ…
夫は苦悩の末、涙を流しつつ首を縦に振った
それから娘は男に連れられてある施設で暮らすことになった
そこには自分と同じくらいの子共がたくさんいて、皆同じく魔法の才を持っていた
娘は中でも精霊と話せるという特殊体質でそれを知られると娘は『巫女』として扱われるのだった
そこでの一日は簡単で機械的だ
朝起きて、いつも同じ黒一色の服を着て、祈って聖書を読んで、食事の時も祈る、あとは意味のわからないしきたりを教えられる、周りも例外なく同じ作業を繰り返す。
施設からは出ることはなく毎日毎日同じものを見る。いつもが同じで時間というものがわからなくなるほどに
そして自分は巫女であり周りは自分を自分と扱ってくれない、初めはよく話していた友達さえ距離を置かれ会話をしようにも相手はまともに構ってくれない
・・・ちがう、私は敬ってなんかほしくない。前みたいにお話がしたい
そんな日々を送っていたある日、偶然娘は信者たちのある話を立ち聞きしてしまった…
『我らが主の復活の儀式の準備はできているのか?』
『はい、贄となる“巫女”も選んでいます』
そこからは話の内容なんて覚えてない…、だがこれだけはわかる
ここで“巫女”と呼ばれる人物は一人しかいない、そして“復活の儀式”とは聖書にあった『ある特別な少女の命と4人の血肉をささげて我らが主“ゼノ”は再来するだろう』とのことだろう
つまり自分は殺されるために此処にいるのだ、得体のしれない神様を呼ぶために存在するモノ
6歳の彼女では抵抗する力も知識もなく逃げることはできない
儀式までのおよそ十年をなにもないここで暮らしてただ死んでいく…
そして確定された『死』を胸に十年をすごさなければならない
…なんで、…なんで自分が…、
少女は絶望を胸に生き、よく笑っていた顔からは光が消え表情をかえなくなっていった。
そして現在、もうすぐ娘が死ぬ儀式が始まる…
そして少女は青年と出会い、物語が始まる
こんなんでいいかなぁ
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