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30話 迷子の迷子の---子犬とおれ

sideエリーナ


私達の中で一番強いリザに最初に現れたムキムキのお爺さん(プラスおっきな狼×2)を任せて私たちは

残りの3人と2匹の相手と対峙していた。


そして一人の獣人が(シャドットではない)エリスに話しかけてきた。


「見る目はあるなそこの娘、確かにヘルケン様は我が部族でもさらに腕の立つ方だ。さすればヘルケン様と戦っているあの女はお前たちの中で一番の腕の持ち主、全員で当たらず二つに分けたということか」

「私の生まれたところではどれも強者しか居なかったからな、戦いについての鼻が効くのは当然だ」


強者の代表は『魔王』だもんね・・・


「ほう、しかしそれは自身が強者ということではないだろう。残念ながら私の鼻はお前達3人が私達を相手に出来る程の力は匂わない」


敵は自信気にそう告げ自分達の優位を主張する。


「それ位弁えている。集団戦なら相手が連携が得意な狼ではなおさらだ」

「え!」

「大丈夫だよエリィ」


ジェスが声をかけてきたがエリスのやり取りを聞いて物凄く不安が沸いてきた。エリスは事実上『勝てません』と言ったのだ。

いつもと変わらない態度で向き合っているから勝てると思っていたのにエリスはそれをバッサリ否定した。でもそんな危機的状況になっているのにエリスどころかジェスも自信の気に満ちた顔を崩さなかった。


「ならば何故そうも自信にあふれている?」

「お喋りはそこまでにしろ!さっさと逝きやがれ魔族!」

「危ないエリス!!」


瞬間、後ろで耐えていたシャドットが怒りを爆発させエリスに飛びかかった。

その勢いはまさに疾風、咄嗟に叫んだがエリスが迎撃に魔法を使うには致命的な早さでシャドットは接近する。


その時エリスは臆することなくそれどころか微笑んで自分に迫りくる敵を見ていた。



「言っただろう?『集団戦なら』と。だからこそのコレ(・・)なのだ!」



エリスはそう言うとさっきから持っていた拳ほどの青色の小瓶に管を刺して引き抜くとそのまま口に入れて目の前に迫る敵に向かってそれを笛のように吹いた。だがその管からは音は出ず代わりに巨大で透明な丸い膜が出てきた。


「ふざけるな!!こんな子供遊びなど割ってしまえば!!」


このときシャドットは誰よりも怒っていた。魔族に肉親であるまだ幼く自分を良く慕ってくれた弟を殺され、魔族と相見えた時全力を持って仇を取るという復讐に燃えていたのだ。

しかしそれは愚行、普通の狼ならそのわけのわからない透明な玉にさえ警戒をしたに違いない。なによりこの状況で出るものに意味のないものが出る筈がない。だが怒りに我を失っているシャドットは今は怒り狂った野獣と化し、完全に警戒というものは消え失せていた。



それを見てエリスは言う。



「まず一人だ」



シャドットがつっ込んだ透明な玉は割れることなくそのままトプンと小さな音を立ててシャドットをその内へと収めた。なのに中のシャドットはその途端嘘のように動かず中で浮いたまま止まり彼の戦いは始まることなく幕を降ろしてしまった。

そしてその光景に私と他の敵は驚きを隠せない。


「シャドット!!・・だからあれほど怒りに身を任せるなと言ったのに」

「仇を討つぞ!」

「「ヴォフ!!」」


「ねぇジェス、あのシャドットって人はどうなってるの?もしかして死んじゃったの?」


念のため問いただした。エリス達は良い人だと知っている、だからこんなにあっさりと他人を殺せるのかと思わずにいられない。それにこの人たちは何か勘違いしてるみたい、聞くに多分悪い人達じゃないと思う。それにこの人たちが敵意を向けているの飽く迄私を除いたエリス達だけで私にそれを向けようとしてない、私には手を加えないとしているのが分かる。

そしてその問いにジェスは笑って答えてくれた。


「大丈夫だよ。あの人は今幻術にかかってるんだ。体に害はないよ。あの膜は一見すぐ破れそうに見えるけど唯触ったりしても壊れない。術にかかった本人が術に打ち勝つかエリスが解くまではあのままさ」


つまりあれに捕まった者は後は煮るなり焼くなりなんでもござれ、エリスの気分次第ということだ。


それにエリスもそうだと微笑んで・・・


「安心しろエリィ。別に殺しはせん・・・せいぜい半殺しだ」


笑顔で悪魔のささやきをした


「は、半分殺すの?」

「やめてよ、安心するとこだったのに台無しだよ!」


エリスのこれは唐突で内容が半端ない。私が慣れない物の一つだ。



「ふふふっ。エリィは可愛いな、そう真に受けるな冗談だ。それより、これで相手は4人。これなら一人2つだ。・・・行けるなジェス」

「え・・・うん、こっちは任せて!」


声を掛け会うと二人は互いに背を任せるように立ちそれぞれの前に立ちはだかる敵を二人は考えを共有してるかのように笑って見た。その眼は絶対の自信に満ちている。



やっぱりこの二人は仲がいい。



あと思うことがあるとすれば・・・空気を呼んでまだ襲ってこないてきの人たちはやっぱり良い人達なんじゃないかと思う。



side end









「だぁ~もう!なんで着かないんだーー!?」


やつ当たりも兼ねて目の前に立ち並ぶ巨木を走りながらに両断する。

状況を考えておれはそれなりに本気でダッシュしてるつもりだ。自分が来た道は覚えてるが急いでいる為記憶を無視して直線ルートを選んでけもの道を爆走中。道を隔てる数多の巨木も大剣一振りでスパンだ。


だが何故着かない!?


おれあれから結構走ったからね!あいつ等とはぐれた時よりも走ってるから!

それなのにおれの周りには相変わらず木、木、木・・・いい加減飽きたわ!

しかしそんなおれの心の叫びも虚しく同じような風景は終わる気配がない。

走って斬って走って斬って・・・おれがやってるのは道を作る伐採作業か!?



「あーもうやめたやめた!仕方ないから一旦もと来た道に戻るか・・イダ!!」


前進を諦めて踵を返した途端目の前が真っ暗になり同時に顔面、主に鼻の頭を強打してしまった。


「いって~。ったくなんだよ・・・って木かよ」


ぶつかったのはそこら辺にあるのと変わらない木だった。おれとしたことがうっかり振り向く方向を間違えたらしい。


「こっちだったっけ?・・ってまた木か。んじゃあこっちか・・・」


ドーンと木が生えていた


「・・・・・・・じゃあこっちか」


ドーンと木が・・・


「じゃあ」


ドーン・・・


おれは見渡す限り(伸ばせば手が届く距離の)木に囲まれていた。

何故か頭がいつもよりもさえている。こんな時は気を乱さず深呼吸だ。



スゥ・・ハァ・・スゥ・・ハァ・・スゥ・・スゥ・・スゥ・・・



せーの



「どうなってるんだよこれぇええええええええええ!!?」



なんで?え、なんで?さっきまでおれは我武者羅に木を切り倒して此処まで突き進んできてたよね!それがどうしておれの後ろにあるはずの切り株とか丸太が一つもないの?無い筈ねーだろ!!


「ねーよ。どうやったらこの状況で迷子になれるんだよ。来た道すらないってもはや空間移動だろこれ。でもこの森にそんな大掛かりな術施してるはずねぇし・・・」


この森に何があるのか、はたまた今おれに何が起こっているのか皆目見当もつかない。結局現状を打開する術をおれは持ち合わせていない。パニックを起こした頭はすでに目指す方向さえ忘れてしまった。


「やっぱ道間違えたのか~。19にもなって迷子になるなんて・・・くぅ(泣)! おれ何か悪いことしたか?おれ最近こんな目にばっかあってるぞ!」


嫌ホントに。思い替えしたら次々とそんな思い出が沸いてきやがる。もうその星のもとに生まれたんじゃないかと思うくらい。

あぁ小さい頃は母さんに迷惑ばかりかけたっけ?ごめん謝るから助けて・・・。



(実際は生えている木一本一本にかけられた『まじない』によって強制的に迷わせられているのだが、エリィ達と共にいなかったジークは知る由もないのである)



「よし!そうとなればやることは一つだ!!」


自分の置かれている状況を素直に受け止めたおれは唯一の方法を見出し賭けに近い策に希望と羞恥心を抱いて上を向いて大きく息を吸い込んだ。




「「誰かぁあああああああああ!!たーーすけーーてくぅーださぁーーーーーーい!!!!」」



“たーーすけーてくぅーださーーーーーーい!!!”



“すけーてくぅーださーーーーーーーい!!”



“くぅーださーーーーーーーい!”



“ーーーーーーーい・・・”




帰ってくるのは期待する肉声ではなく自分『達』が発した声が向こうの山に当たって帰ってくるやまびこだけ。逆に孤独感が際立ってしまった。


「ふっ、来るわけ・・・・・ないよな。なんだか目から熱いものが出てるぜ・・・」

「本当やで。これから自分等はどうなってしまうんやー(泣)」

「どうなるって、決まってるだろう。誰とも会わずにこの不思議な森をさまよい続けるのさ・・・死ぬまでな」

「嫌やーー!誰とも会えずに孤独死なんて耐えられへん!」


子犬の泣き声に似た悲鳴が上がる。自分は言ってないがかなり共感が沸く。おれと同じ境遇のかわいそうな奴がいたのだろう。


「泣きごと言うなよ。辛いのはお前(・・)だけじゃ・・・・・」

「そうやな。くよくよしてても仕方あらへ・・・・・」



そして気付いた大きな疑問



・・・あれ?


おれは何を言ってるんだ?誰に言ってるんだ?


そもそも『おまえ』って言葉は話す相手がいないと使えないと思うんだが


・・・というか“~やで”とか“~や”ていう変な口調をおれは使ったことなどない。



「「うーん・・・・ん?」」



後ろから同じ疑問の声が聞こえて振り返り・・・おれはいつの間にか後ろに立っていた人物と初めて顔を見合わせた(・・・・・)



「「おまえ(アンタ)は誰だ(や)?」」


一先ず孤独死は避けられたようだ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・



「なるほどなるほど。話をまとめると・・・

お前の名前は『カトル』。この不思議森改め獣人達の隠れ里に住むウル族(天狼を祖とする)。

此処にいるのは昨日仲間と採集に出ていたところを謎の怪物に襲われた。

付き添いで数人の戦士がいたがおそらく全滅。

(おれがあの時見たのがそうかもしれねぇな・・・)

なんとか逃げれたがその時に足をけがして身動きが取れなかったと」


それに目の前の幼い獣人カトル(因みに9歳)は頷いて続ける。



因みに容姿を上げるなら背丈はジッちゃんぐらい。茶色い獣毛はまだそれほど生えておらずそこらの人間の子と変わらない。しかし狼型の獣人の証である獣耳と尻尾は小さいながらもツンと生えている。顔は大きな青色の瞳を持ち活発に遊びまわる悪ガキのようだが可愛い気がある。



なんつーか・・・和む。



「そや。誇り高き森の狩人ウル族の戦士や!

でもってジークの兄ちゃんの方は・・・

とある理由で此処にいない4人の仲間とこの森に踏み込んだ。

あろうことか仲間と離れ一人で散策に出た。

異変に気づいて仲間の所に戻ろうとしたけど案の定この森に掛けられてる『まじない』に囚われて迷子になったと。

・・・いい年してだらしないのぅ」


ムカッ、こいつ言いやがったな。


「うっせい。歳は置いといてお前もおれと大差ないからな。そんなこと言ってっと置いてくから、頑張れよ」


そう言って立ち上がるとカトルは目の色を変えて足の傷はどうしたと問いたい勢いでおれに迫ってきて

立ち去らんとするおれの足をガッチリと両腕で抱きとめた。


「嘘やウソ!アンタがこないな所におってホンマに助かったわ!だから行かんで、置いて行かんで、一人にせんといてーや!!(泣)」



その姿はまさに『必死』を形容していた。

絶対に離さないと子供にも拘らず尚も腕に力を込めしかしおれを見上げる顔は泣きそうでまるで雨の日に道端に捨てられた子犬のようだ。それに捨てられた子犬というのもあながち間違えていない表現だ。カトルはその謎の化け物という恐怖に怯えながら一人で一夜を過ごしたのだ。そこに現れたおれが唯一の希望になっているのだろう。


それを見て物凄く罪悪感を感じるおれ。勿論冗談だった。最初から身捨てようとは思ってないし身捨てても後味が悪すぎる。それにカトルはおれが迷子という現状を解決してくれる糸口になるはずだ。こっちだって抱きとめてでも逃す気はないのだ。


「わ、悪かった。冗談だってジョーダン」

「グスッ・・・ホンマに?」

「ほんまほんま。だから一旦放せ。一緒にいてやるから。誇り高いウル族が泣いてどうする」

「ヒグッ・・・分かった。放す」


なんとか言いくるめおまけで頭を撫でまわして子犬を泣き止ませる。罪悪感と言う名の毒がおれの心を壊す前の応急処置だ。


「とにかくだ、日が暮れる前におれかお前の仲間と合流するぞ。おれの仲間はそこまで遠くにはいないはずだしお前の仲間だって探しに来てくれてるだろうさ。だからお前は道を教えろよ、あいにくおれの眼には相変わらず木しか見えん」

「こ、これだけやっといて木が見えるっちゅうのも凄いもんやで。アンタホンマに人間?ここら辺の木ほとんどその剣だけで斬り倒してきたんやろ?軽い広間になっとるで」


見えないがそれ程切り倒したのかおれ。引かれる程ってどんだけやっちゃったんだろうか。


「誉めるな、照れるだろうが」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」


何故か変な空気が流れた。



「まぁ心強いに越したことはないからえぇけど・・・でもジークの兄ちゃんの目が見えないのは不都合やな。よし、『まじない』を払ったるからこっち来てや」

「マジか!?スグよろしく!!」


これ異常にない提案におれはまさに一瞬でカトルに飛びついた。それにカトルはのけぞるが直ぐに持ち直して負けじと顔をおれの眼前に突き出して・・・




ペロンッ




とおれの顔を一舐めした。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



思わず言葉を失うおれ



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・キャッ」(byカトル)


何を思ったのか両手を頬にやって乙女のように恥ずかしがりやがった。

それを見たおれはと言うと・・・






ガシィ!!





その顔へアイアンクローを決めた。




「イダダダダダダダ!?」

「何してくれとんじゃこの犬っころがぁああ!!人のこと舐めやがってバカにしてんのかぁあああ!!」

「誤解や誤解!!いや確かに舐めたけども人としては舐めとらんって!!試しに周り見てみぃや!『まじない』が解けてジークの兄ちゃんが見る光景も元に戻っとるはずや!」


何?それを早く言え。


カトルを掴んでいた右手を放す。


「あっホントだ。ありがとな!・・・ったく誰だよこんな酷ぇことしたのは」


言われて周りを見渡すと根元から切り倒されて木の後がおれより後ろへ大きな曲がりまくっているが一本道を作っていた。『まじない』のせいで方向性が失われているのが分かる。

誰の仕業か・・・勿論おれ自身である。



「・・・・・・・・・・・そやな」←痛みから解放されたが下手にツッこんではいけないと踏んだカトル

「ごめんごめん。ついついカッとなっちまった。まぁ気を取り直して仲間探しに行こうぜ。ほら乗れよ怪我治ってねぇんだろ?おぶってやるよ」


そう言っておれは屈んでカトルに背を向けた。


「お、おう・・・・・・・」


背中に乗ったカトルは何故かおとなしくなった。


「どしうた?」

「なんや・・・・・・ワイのアンちゃんみたいな背中やなぁって」

「あんちゃん?誰だそれ」

「あぁ。兄ちゃんのことや。いつもワイのこと構ってくれて、ほんで強ぉて・・・心配しとるやろーな」


さっきまでの元気は見る影もなくぼそりと呟くカトルの声は心なしか震えているようだった。


「すぐに会えるさ。だから元気出せって。あーあと道案内してくれよ。どっちにしろおれが迷子なのは変わりないからな。お得意の鼻で見つけてくれ」


辛気臭い空気を変えようと話を振るとカトルは予想外の反応を取った。




「あ!アンちゃん達の匂いや!!」




早ぇなおい!!


しかしカトルの言葉はなおも続いた。




「あとワイらを襲った化け物と人間の匂いや!!」



「・・・・・・・」



この時頭によぎった思いは間違いであってほしい




何を今更ですが


これまで何度も各話の修正・付け足しなど少し話がズレル様なことをやっています。書いてると何かと事情が変わった来るもので・・・


それが気に食わなかったらすいません。

あと修正するべきところがあれば教えて下さい。

因みに自分は今までリゼをリザと勘違いしたまま執筆しておりました(修正中)


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