おまけ 勇者
時間的に15話辺りです。
「ほんと、ファンタジーなんだなぁ此処って」
俺は黒川純。この世界で言うならジュン・クロカワ。つい先月くらいまで日本に住んでた17歳の高校3年生だった。
その俺がなんでこんな所にいるのかというと、異世界から“勇者”として呼ばれたのが原因だ。
道端を歩いてたら突然目の前が光って真っ白になったと思ったら目の前には杖を持った俺と同じくらいで腰まで伸ばした白髪のものすごい美少女がいた。・・・あとその時は気付かなかったけど彼女の後ろには中世の騎士と似てる人たちがズラって2・30人くらいた。
開口一発目で「勇者よ、我らをお助け下さい」だぜ?突然のことで驚いてたけどちゃんと意識を持ってたら絶対吹いてたな。
普通の人たちだったらパ二ックになってただろう。でも俺はそうならなかった。
召喚?勇者?俺が?この見た目だけはちゃんとしてて実はいつもパソコンにかじりついて運動音痴なこの俺が?クラスの女子から“顔だけ良くてあとはキモい”って言われてた俺が!?
頭の中は歓喜で一杯だった。
だってこれあれだろ?ネットとかでよくある異世界召喚もので俺tueeeってやつじゃん!!
しかも俺を呼びだした術者によると元の身体能力は召喚されたことで格段に上がってるらしく、試しに人通り動いてみたら、体に羽がついたように軽くてまるで別の生き物に生まれ変わったかと思った。
召喚の後、王様と面会したときこれでもかって思うくらい礼儀正しくそしてカッコよく!振る舞ってやったらすっげー高評価だったぜ。
なに?性格が変わった?毎日妄想して、就職先の面接対策した高3舐めてんじゃねぇ。
あっちの要求は今この国と戦争してる魔族を一緒に倒してくれだってさ。最初はどうしようかと迷ったけど、勝った暁にはそれ相応の位をくれるし、良ければ娘(召喚の時目の前にいた美少女)をもらってくれないかだって。勿論即okした。
最初の訓練で一般の騎士達と戦わされたけど初めてにしては結構いけた。連戦で10は超えた。
今では俺とまともにかち合える者は王宮騎士でもそういない。
そしてファンタジーの醍醐味っていったらやっぱり魔剣!!
なんでもその魔剣(いや聖剣か)は時代の英雄や勇者しか使えないようで、選択の間といわれる所に深く突き刺さっていた。
内心抜けるかドキドキだったけどあっさりと抜けた。周りも聖剣が抜けたことでスッゲー驚いてた。
まぁこれでやっと勇者黒川が誕生ってえわけだ。
で、この聖剣ヒュペリオンがこれまたチートってやつ?
持った瞬間俺の身体能力はさらに倍、魔法もバンバン使えるようになった。
しかもこの剣の名前を叫んで振り切ったら大きな光の斬撃が出るんだぜ!!
1回だけ使用したさ
~回想~
「ヒュペリオン!!!」
シュゥゥゥゥン・・・・・・ズドォォォオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!
ちょw、これ○クスカリバーww
~回想終了~
目の前でいた50匹くらいの魔族が大きな光の波に飲み込まれて塵になった。何人か味方がいたけど仕方ないだろ?思い出したら笑えてきた。
言い忘れてたけどもう戦場は経験済みだ。
生まれは平和ボケよろしく日本だから喧嘩もすることなかったけど、あいにく生まれ変わったこの体と聖剣、それにあの状況では俺の命を脅かすような敵はいなかった。
初めて殺した感想?・・・さぁどうだろうね。
「どうしかいたしましたかクロカワ様?」
「ちょっとね、前の魔族の拠点の戦を思い出してただけさ」
俺専用に用意された部屋に王女様と2人きりだ。名前はシェルフィー、ほら名前からして美女じゃん。
王女っていうから偉そうだと思ってたけど、意外と可愛くてさ。いつも一緒にいる。戦場でも彼女の魔法は活躍し『アドリアの聖女』と呼ばれてる。うん納得。
彼女も俺に惚れ込んでいる。まさに両思い、ラヴラヴだ。いつもは専用の侍女を連れていてなかなか二人きりになれないから貴重な時間なのだ。
因みにその侍女も姫様専属というだけあって唯者じゃない。何度かシェルフィーを担いで彼女を巻こうとしたことがあるがその度に先回りされてしまう。というか彼女自身戦場でも僕達と一緒に立って戦ってくれるパーティーの一人だ。こういう人に限ってかなりの実力者だから経験不足の僕ではたぶんまだ勝てないと思う。
「あのときのクロカワ様はとても素晴らしかったです!!」
「そうでもないさ、シェルフィー達のおかげだ」
「まぁ、クロカワ様ったら♪もうあなたは誰よりも強いでは「いやまだだよ」あ・・・」
あー、そういえばこの世界って強いのは魔装具とか魔族だけじゃないらしい。
以前隣国の騎士団長が来た時、調子に乗ってちょっかいかけてみたことがあった。
ほら『騎士団長』って名前からして強そうじゃん?この国の奴はそれほど強くなかったからきっとそいつも同じだと踏んでたんだ。
でも結果は惨敗、攻撃は掠りもしなかった。常人では反応できない速さでもそいつはヒョイヒョイかわしたんだ。それでムキになってヒュペリオンまで使って挑んだでも結果は一緒。しかもアイツは自分の獲物すら抜かなかった。最後は「ふん」って鼻で笑いやがった!!
これ以上にないくらい屈辱だったね、魔法も使おうとしたけど魔力を練った瞬間無力化された。
なんだよあのバケモノ、魔族よりよっぽど強いじゃないか。
あとで聞いたらその男は“加護持ち”という存在で今までアイツは負けたことがないらしい。俺を呼んだ術者もそうだっていうしね。ある人は“人の皮を被ったバケモノ”って言ったくらいだ。
最終的な目標『打倒クソ騎士』が決定した瞬間だ。
その後やつ当たりを込めて遠征中に聖剣使ってうさ晴らししたらすっきりしたけどね。
「そう焦らなくともいずれは超える壁です。私はクロカワ様を信じています」
「ありがとう、頑張るよ」
「はい(真っ赤)」
コンコンッ
「どうぞ」
「そろそろ出発です。したくなさい、クロカワ。・・・王女様もおいでのようで」
入ってきたのは黒い甲冑を着こんだ長身の男性、行動を共にしている元傭兵のデュランだった。なにをして剥奪されたか知らないが元3階級という破格の階級保持者だったらしい。
この紫長髪のイケメンいつもは冷静で紳士のようだが戦いになると笑いながら相手を切り刻む変態だ。
この時点で何をして傭兵をやめたのか多少の考えはついた。
その実力は確かで、今では俺×聖剣とサシでやりあえる一人で同時に他の奴よりも強いということで彼に鍛えてもらってる。
・・・ときどき舐めずり回すような目で見るのはやめてほしい。
腰に刺してる剣は同じく魔剣で刃の根っこに大きな目玉が着いてる悪趣味な装飾が施されている。凄く興味があるけどデュランの戦闘狂とその剣の装飾からして碌なものではないと思いスルーしている。
一度彼に前に来た隣国の騎士に勝てるかと聞いたが勝率はとても低いと言われた。そしてあの男が元2階級の伝説の傭兵だと聞かされてさらに驚いた。
「もう?次はどこ?」
「前戦と程遠くないところです。カタロスといいます。あそこは魔族だけでなくドワーフなどの種族も共存してると聞きます」
ドワーフか・・・そういえばこの世界はいろんな種族がいるって聞いたけどまだ見たのは人間と戦場で見た魔族くらいだな。人間は言うまでもなく地球の人と大して変わらないけど魔族はそれぞれが個性的だったな。全身紫で二本足で立つ牛男だったり、リザードマンっていう人型爬虫類がいて周りの奴らが言う絵にかいたような容姿だったが戦っていた中には人間と全く変わらない姿をした魔族もいた。
なんというか・・・ねぇ?
「まぁ、あの魔族と共存する種族がいるなんて信じられません。ですが魔族に手を貸すなど愚かなことを。等しく断罪を受けるべくですね」
「・・・そうだね」
ま、別にどうでもいいけど。俺はただハッピーエンドを迎えれたらそれでいいさ
うーん、よくいるかませ犬?
王女の最後のは別に彼女自身の意志ではなく国の意志のようなものです。
生まれさえよければ・・・みたいな。