24話 報告→おれは化け物
~ジーク宅~
あの戦いの後おれはすごい剣幕で追ってくるたくさんの追手を振り切り先に帰ったエリィ等が待つ自宅になんとかたどり着つくことが出来た。試合が終わって外に出たら二桁を超す人達に囲まれたから一瞬ビビったよ、連中の何人かは目が血走ってたから下手な魔物よりも迫力があるんだよ。
え?試合の決着?そんなのすぐやめたに決まってるだろ。あれでもお互い力を全然出してないんだ。
大体、加護持ちどうしがまともにやりあったら被害(今回の場合は主におれによる)が馬鹿にならん。
それに相手がこの国最強の騎士、分かった瞬間やる気が抜けたよ。
まぁ要するにメンドクサそうだから逃げただけなんだけどな・・・とりあえず報告するか。
「おかえりジーク、スカウトはどうだった?」
「おかえり。かっこ良かったよジークっ」
oh エリィの笑顔が心にしみるぜ
「それどころじゃねぇよジェス、おれが戦った・・・おまえらを襲った奴とんでもねぇ野郎だったぞ」
「私から見たらお前もとんでもないぞ?それでおまえはわかった風だったが一体奴の正体は何だったのだ?」
「ギルドに所属してる奴で知らない奴はいないさ。
奴の名前は『ユーヴェルト・クアトス』。
この国の騎士団長で、おれと同じ『加護持ち』、元ギルドランク2だった男だ。
“不敗騎士” “神眼” “百発百中”(ナニが?) 二つ名どころじゃねぇよ。この国が誇る生きた伝説だ。おまえらよくはち合わせた時に捕まらなかったな」
やってらんねぇよと息と一緒に吐いたおれの言葉に魔族組がまるで石になったかのように動きを止める。そして徐々に体の硬直が取れプルプルと体を震わせながらジェスが聞き返してきた。やっと自分たちの置かれた状況を理解したか。
「ユーヴェルト?騎士団長?元ギルドランク2?・・・オレトオナジカゴモチ?」
「あれ?言ってなかったっけ?あと言葉はあってるけど言い方おかしいぞ」
「すごい、ジークって加護持ちだったんだ」(エリィ)
「「っ!!」」
「おいおい、いくらおれがスッゲー奴だって分かったからってそんなに驚くこt・・・どうした?
なんでそんな目でこっち見る?」
気づけばおれとジェス&エリスには距離が生まれていた。こっちが一歩踏み出せばあっちは同時に一歩下がる。何度やってもこの距離は変わらない
ナニコレ面白い。
そのやり取りはおれにとって冗談のつもりが向こうはマジだった。さすがにダメかなと思い唯一魔族で冷静を保っていたリゼに助けを求める。
「リゼ、これはどういううことだ?」
「すまない、わざとではないんだ。つまりだな・・・
加護持ちとは我ら魔族にとってはまさに化け物のような存在とされている。魔族と人との戦争では必ず加護持ちが繰り出され、その被害は加護持ち1人につき魔族3桁、中には言葉道理『一騎当千』をした者がいてな、しかも加護持ちは魔族の中からは生まれない。私達にとって加護持ちは恐怖の対象であって忌むべき存在とされている」
納得、確かにそれが本当なら分からなくもない。おれ達でいえば魔王に置き換えてるようなもの。どっちも桁外れな存在だとしてその化け物が目の前に現れたのだ。そう考えるとこの2人の反応は間違えてはない。
「なるほどな。こっちとそっちじゃ加護持ちの在り方は真逆なのか。それなら仕方ねぇな」
「人でも親が子を躾ける為に小さいころに怖い話をすることがあるだろう?それと同じで私達も話だけだがたくさんの話を聞かされた作り話のようなものさ。だから大概の者はすぐに忘れてしまう」
「それってあれ?『ほーら、早く寝ないと“加護持ち”が来て食べられちゃうゾォ』とか?」
「そんな話“も”あるな」
「なるほどなるほど。ってことはおれは物語に出てくる怪物なのかぁ。んで魔族を貪り食べると、おれって怖いなぁ
---ってなるか!!誰が食うかっ。あと“も”ってなんだ!!。ていうか魔族意外と家庭的な!」
言いがかりだ!!と強い口調で怒鳴るとそれに過剰な反応をして2人が悲鳴を上げる。
「ひっ!?」
「●●●れる!!!」 おいぃぃぃぃ!!今何て言った!?
「魔界の教育基準一体どんなだよ。飽く迄躾の範囲なんだろ?この歳でこんなにおどろくものなのか?」
ジェスは思わずビビってるてところで留まってるけど、特に意外にエリスはいつものふてぶてしく余裕を持った態度とは真逆のまるで10にも満たない女の子の怯え方をしていた。そのギャップにその場にいた全員が“え?”と思ったくらいだ。
「さすがに今のは私も初耳だ。まぁ、エリス様は特殊な環境(親ばかの過保護)で育てられたから少しはずれた思考があるかもしれない」
「その特殊な環境ってスゲー気になるんですけど?」
「聞きたいか?」
「やめときます」
何故なら聞いたら後に引けなくなると思ったから。
そして一人首を傾け何やらなやみ事をしていたエリィが唐突に口を開いた。
「“●●●れる”ってなに?」
「「きみ/エリィは知らなくていいっ」」
結局2人が落ち着くまで無駄に時間をくった。
sideユーヴェルト
滞在先のある貴族の屋敷で淹れたての紅茶をもらい、飲みながらあの男との戦いを思い出す。
「・・・・・ふぅ」
コンコンッ
「入れ」
「・・・失礼します」
入ってきたのは部下の騎士だった。
「君か。どうした、報告か?」
「一昨日私たちが追っていた魔族のことです」
「話せ」
「はい。話は魔族の手助けをし、我らを襲った男についてn「私があの時戦った彼か」
・・・やはりお気づきでしたか」
「前の報告と実際戦ってからだな。さらに言えば見つけた時奴の隣には3人ともいた」
「それならばなぜ何もしないのですか?団長ならばあれぐらいの相手は敵ではないでしょう」
さも当然とばかりに言いきる部下に思はず苦笑が漏れる。
そういえば彼については話してなかったな。
「あれが『加護持ち』だと言ったら・・・どうする」
「なっ・・・!!本当ですか?」
「ああ。しかとこの“目”で確かめた。あの戦いで彼も力を出し切ってはいない、あれだけでも魔獣に匹敵するがまだ上がると言っていたからな。純粋な“力”の加護を得たなら下手をすればドラゴン種に近いだろう」
ドラゴン・・・・この世界で生物の頂点に君臨する絶対の種族。
その体は2階建ての家を見降ろすほどの巨体に一対の翼が生え、大地を踏みしめる4本足を持ち
全身を覆う分厚い鱗はあらゆる攻撃に耐え、魔剣にも劣らないどんな防御も貫く爪・牙で敵を打ち砕く。
その口から出されるブレスはタイプで異なるが主に使われる炎ならば一夜で国を焼き尽くすといわれ、たった一体で国落としたなんて昔話は探せばよくあるものだ。
世界に『ドラゴンキラー』と呼ばれる少数のものがいるがそれは大抵が下級ドラゴンを退治したものに対しての言葉であり、中級・上級はそれぞれが段違いの力を誇る。
そんな最強種と近い存在だと知った部下は言葉を失う、
さすがの私も上級のドラゴンは相性が悪いからな、私よりも強いかもしれないと思っているのだろう。
それでもすぐに気を持ちかえしそれではと告げて来る。
「それほどの人物がこんな場所で埋もれていたとは・・・すぐに我らの同士とすべきではないですか」
「それこそ難しい問題だ。現に彼はなぜだか知らないが魔族についている。下手につつけば交戦するかもしれん、そうなれば私を除いて全滅は必須だろう」
確かに私と彼では加護の能力上私が優位に立つ、決して負けはない。
だが実際に戦うともなれば多対多となり互いにおもり(仲間)がつく、こっちは1分隊(10人くらい)にも満たない騎士達に対しあちらは魔族が3人もいる、私が斬った爵位持ちの女も回復がすでに終わってるだろう。結局味方は誰も残らないのは分かりきっている
「一応誘いはしたんだがな?『おれを大量殺戮兵器にするつもりか?誰が行くかアホ』と断られてしまった」
「団長の正体を知って啖呵を切るなんてやりますね。・・・ですがこのまま敵につかれば「いいじゃないか」・・・なんでですか?」
「そっちの方が面白い、帰還後手配書をまわせ」
「それだと完全に彼が敵につくじゃないですか!!」
「そっちの方が面白い」
きっぱり言い放った言葉に部下はまたも唖然とする。先ほどの驚きが感じられないのは彼が私の性格をよく知っているからだろう。
「はぁ、団長は自分が楽しいことに優先順位を置くんだから。
・・・わかりました、団長は私の上官で私は団長の部下ですからね、従うしかないですよー」
「すまないな。では頼んだぞ」
もはや一介の騎士が騎士団長に話す口調ではなく友人を小馬鹿にするような態度に変わってきているが所詮傭兵上がりの自分からしたらなんも問題もない。むしろこの方がやりやすくていい。最初は誰もが堅苦しい言葉で話すが自分が気軽に話していいと促しつつけるとこんなやり取りができた。
最近、王宮内で“騎士が騎士らしくない”と噂される原因はあろうことか騎士団長にあった。
かくして、ジークは己が知らないところでとんでもないことに巻き込まれていたのだった。
side end
修正
×リザ→○リゼ