22話 決勝戦そして発覚
闘技大会は本戦を迎えた
試合が一巡した時点で勝ち残った8名は
(人)仮面男
(獣)5人
(亜)2人
僅かだった3人の人のうちダロンと騎士の2人が負けてしまった。
それでも様々な種族が集まるこの戦いで基礎能力が劣る人がここまでこれただけでも称賛ものだろう。
そして残った仮面の男の実力は相当なものと分かった。
何しろ奴は無傷だ。攻撃は防がずただかわすだけ、当たりそうに見えたりしてるがそれはただ単に奴が最低限の動きでかわしてるからにすぎない。奴と対戦した選手たちは魔法も剣も何一つ奴には届かせることが出来ず急所に鋭い一撃をもらって負けている。
ある意味コイツが一番不気味だ。
そして魔法を主に使っていたエルフ達はほとんどが負けてしまった。
理由は単純、魔法は強力で殺傷力が高い。
ルールで殺しはもちろん反則負け(犯罪)なので使える術が制限されてしまい、使ったとしても威力を抑え過ぎてしまい相手はそれを見越して全力で突っ込んでくる。
というかここまで来ると相手は呪文の詠唱をさせる暇なんか与えてくれない。
結果接近戦で劣るエルフはこの大会では不利となってしまい負けてしまう。
それでも勝ち残った2人はそれを克服していた。
ってな感じで結局は身体能力でずば抜けた獣人が多く残った。
・・・・・・・・・
「・・・ここまでとはすごいな」
「ああ、獣人とエルフが接近戦でやりあうなんてそう見れるものじゃねーぞ」
目の前では狼の獣人とエルフが試合をしている。
ただその戦い方はお互いの体を使った格闘戦だ、獣人が圧倒的かと思えるがエルフの細身の体からは考えられないスピードと力で獣人と打ち合い時には投げ技も使用し応戦している。
珍しいエルフもいたもんだ。
戦っているエルフは今までの試合で魔法を使用していたが明らかに戦い方を変えていた。
大会後半からのタイプチェンジ、あのエルフにとっての奥の手ということだ。
「ふむ、あのエルフは肉体強化の術でもかけているのか?」
「いえ、それでもエルフの身体能力では到底追いつけるものではないはずなのですが・・・」
「あのエルフの人、魔法は使ってないみたいだよ」
「ん?エリィおまえあのエルフが何してるかわかるのか?」
「よくわかんないけど試合が始まった時、あの人の体に精霊がはいってったよ」
「そんな魔法あったっけ?エリス」
「精霊を纏うなんて聞いたことがない。おそらく秘伝の術もしくは、・・・まあこっちの方がありえそうだが固有スキルだろう。にしてもエリィよ、精霊が入ったことがなぜわかった?」
「そういえばエリィは精霊が見えるんだったな」
忘れてたな、エリィは下手すりゃ会話もできるんじゃなかったっけ?
「・・・おまえたちは事あるごとに私たちを驚かせるな」
何気なく言った言葉にエリスは呆れため息をこぼす。
手を額に当ててうつむいてるところがなんか馬鹿にされてる気がする。
「魔族のお前らに言われたくないけどな」ボソッ
「だまれ人外」
「んだとぉ!おれは馬鹿力なだけだ!!」
ふざけるな、どう見たって“いけめん”でカッコウィー好青年じゃないか!!
「馬鹿力で済ませるなたわけ。エリィに聞いたぞ、お前あのベヒモスを真っ向から受け止めたそうだな
十分人の域を超えておるわ」
「それ魔族でも無理なんですけど、ていうか今のほんとジーク?」
「そうだが(キリッ)」
「・・・人外でしょ」
人外に人外と言われてしまった。(しかも魔族のお墨付き)
「そこまでにしておけ、見ろエルフが徐々に押されているぞ」
「おっマジ?」
見れば獣人と互角に打ち合っていたエルフが防御に回っている、その額には脂汗をかき段々と出力も落ち初め勝負が決まりそうだ。
「魔法と違って精霊を纏うのは体力の消費が早いか。となると持久力も持ち合わせた獣人が有利のようだ」
「みたいだな。あっ、良い蹴り入った、惜しかったけどエルフの負けだな」
体力の疲労にガードが甘くなったエルフへ会心の一撃が入りそのままふっ飛ばされてしまった。
『勝者、フェオール!!みなさん勝者に拍手をっ。そしてその体からは考えられないすばらしい格闘戦を見せてくれたユルダ選手にも拍手を!!』
両者に贈られる大きな拍手、倒れた相手を勝者が手をとって起こした後互いに熱い握手を交わすという気持ちの良い終わりをして両者は退場した
・・・・・・・・・・・・・
『それではっ!最後は勝ち残った4人一斉の決勝戦を始めたいと思います!!』
・・・え?なに、他の試合はって?気にするな、ていうか察してくれ。
『決勝戦の出場選手を紹介します。
1人目は狼の獣人、そのずば抜けた速さと自慢の拳で相手を沈めてきた、フェオール選手!
2人目は熊の獣人、その手に持つ巨大な戦斧で敵をなぎ払う、タイン選手!
3人目はエルフ、魔法の詠唱は早すぎて止めることは出来ない、ヴィレン選手!
4人目は何と人だ!彼に触れたものはまだいない、レーガン選手!
さあ!彼らはどのような試合を魅せてくれるのかっ。
それでは・・・・・・・はじめ!!!!!』
side フェオール
司会の声と相手めがけて駆ける、俺が狙うのは・・・エルフ!
そして同時に大きな体のタインが仮面の男に狙いを定めて走り始める。
実は俺とタインは試合前に話をしていた。内容は“互いに違う相手を倒さないか?”だ。
別に仲間ではないがタインも了承してくれた。
理由はある、それはあのエルフと人の選手がそれぞれの脅威になるからだ。
あのエルフの高速詠唱は並みの速さでは止めることはできず、出される魔法は中級を超える。
故に力重視のタインはただの的にされるだけ。
そして仮面の男はとにかく反射神経が逸脱している。大会中に俺と同じタイプの選手が戦っていたが奴は嵐のように迫る攻撃を全てかわしつくしてしまった。速さが売りの俺では戦いづらい。だが圧倒的な力で巨大な戦斧を使うタインならもしかしたら可能性があるかもしれない。
結果
俺=エルフ、タイン=仮面の男
で互いの天敵を倒してそれから俺たちで戦おうということになったのだ。
エルフは自分が狙われることに全く動揺せず構えをとる。
距離は10メートルほど、狼の獣人である俺にとっては無いにも等しい!
「フレイム」
「っ!!」
とっさに横に飛びのき飛んでくる炎の固まりを回避する
「ちっ、下級に至ってはほとんど無詠唱か!!」
近付ける隙を与えないよう小刻みに様々な魔法を放ってくる、容易に近付くことはできないが相手も魔法を俺にあてることが出来ない。そうして時間が過ぎる。
だがそれでいい・・・
互いに力を消耗するが俺は獣人、そんなことで体力が減ることはない。
そしてエルフは魔力を消費する、使う魔法は下級ばかりだが俊敏に駆けまわり隙あらば懐に潜り込んでくる俺に神経を限界までに集中し魔力と共に精神も擦り減らされていく。
そうしてどちらも攻めることが出来ず、先に痺れを切らしたのはエルフだった。
「くっ、悪いがあなた1人にこれ以上手間をかけるわけにはいかない。喰らえ!『バーニング』!!」
「ぐああああああ!!!」
とっさに防御に入ったが突然俺の前で爆発が怒り吹き飛ばされた。
中級魔法を無詠唱で!?
詠唱なしということで標準が定まってないおかげで直撃は避けることが出来たが吹き飛ばされたせいでエルフとの距離が生まれた。
そしてトドメに移るエルフが笑みを浮かべ勝利を悟る。
「これで終わらせます」
詠唱と共にその身に膨大な魔力を集める光景にゾッとする。
この量なら上級、それも広範囲のが来るだろう。言葉どうりエルフは次の一撃で俺どころか近くで戦ってる2人もろとも倒す気だ。阻止したいがダメージが抜けずすぐに立てない。
「ッガ!!?」
あと一息で魔法を発動させようとしたエルフの体が力なく倒れた。そしてエルフを倒したのは近くでタインと戦っていたはずの仮面の男だった。
side end
「ふぅ危なかった。一撃で全員を仕留めようとはつまらない真似を」
その言葉にエルフと戦っていた獣人が我に返り体制を立てなおし周りを見回す。
そして近くで息を荒くさせ地面に膝をついてるもう一人の獣人を見つけると傍によって仮面の男への警戒を始める。
「2人して挑むか?良いだろう、うまくいけばお前たちの攻撃でももしかしたら当たるかも知れんぞ?」
明らかな挑発、そしてそれに応えるように膝をついていたタインも立ち上がり獣人2人して仮面の男に駆けだした。
・・・・・・・・・・・・・・
「あの2人は仲間だったのか、ふんっ獣人がつまらぬ真似をしよって」
マジデツマンネーみたいな顔してんなコイツ、あの仮面野郎と気が合うんじゃね?同じこと言ってるぞ
「いいや悪くねーよ、あれは互いの天敵を当たらせただけでその後2人でやりあうつもりだったんだろうさ、よくあることだ。・・・・もっとも“アイツ”は別格だったみたいだけどな」
「そうだね、あの人結局攻撃は当たるどころか掠ってすらないよ」
もはや遊んでるなあれ、楽しんでないか?
「確かに・・・やれるチャンスはいくらでもあったはず。それにあの言葉からしてそうかもしれん」
あれほどの実力ならやろうと思えばすでに決着はついてる、ってことは本当にそうだってことなのだろうか?
「・・・・奴だ」
いつも無表情に近いリゼが緊張のこもった雰囲気で呟く。
その顔には冷や汗を流し若干の焦りも見え隠れしている。
「奴って誰だ?」
「あの雰囲気、そして強さ・・・間違いない・・・っ!」
おれの声をまるで無視するリゼには余裕がなく、ゆっくりと右手を刺されていた腹の傷に当てていた。
「間違いない・・・・奴が私を倒した騎士だ」
間をあけてすいません。
この1週間なにかと忙しくて・・・