21話 黒歴史そして仕返し
闘技大会は参加者も多くなるので前日から予選が行われ100以上いた参加者は何組かに分けられて任意の数になるまで戦いあう。
そうして最終的に参加者は16人になり、当日にトーナメントで抽選で選ばれた相手と戦い優勝者を決める。
だから大会は1日前から行われ闘技上は歓声が響き、その中にエリスたちを含めたおれらもいた。
そこはおれも楽しんでたからいいけどさ・・・
いくらたくさん人が集まるからといってもマントで正体を隠した魔族を連れて歩くなんて心配でたまらなかった。
参加者にはやはり騎士も混ざっていた。
勝ち残ったのは1人だけでリゼにあれがお前を倒した奴かと聞いたが首を横に振られた
「いや、奴は騎士達とは違う格好をしていた。何より強さはあんなものではない」
「そりゃそうか、子爵級をやったやつだ。見たところ参加した騎士たちはだいたい並みだし」
ちなみに勝ち残った16人はほとんどが獣人やエルフ(魔法バンバン使ってたな)
人間の勝ち残りは何と我らがギルドのダロン・顔に仮面をした男
知り合いの方は見ていたが仮面の男の方はノーマークだったのでその戦いは見ていない。
白熱した予選に興奮し機嫌を良くしたエリスが感想を言う。
「やはり残った者は大半が獣人・亜人か。それからするとあの人間の2人はなかなかの腕前だな」
それに対しエリィは何故か不満げにおれを見ていた。何だ?
「どうしたのエリィ?」
その様子に気付いたジェスが質問する。
「ジークが出たら1番だもんっ」
「あっ、いわれてみればそうだよね。この大会賞金も出るし傭兵には出世口にもなるんでしょ?
ねぇジーク、なんで出ないの?」
エリィ!!いらんことをっ・・・!
「それはだn「ジークさんは1度この大会に出たことありますよ」だれだっ、ってティーナちゃん!?」
急に後ろからティーナちゃんが現れた。話を聞いていたのかきちんと話に合わせている。
仕事の方は?あっ、この2日は休みだった・・・
やべ!この子言う気満々!?
ジェ「どちらさまでしょうか?」
「はい、この都市でギルドの受付をしてますティーナです(二コッ)」
ジェ「あ、はいっよろしくお願いします!」←顔真っ赤
ティーナスマイルに負けたジェス、やはり初見の男は撃沈か。
「・・・・」
「いたっ、何するのエリス!?」
「デレデレするな気持ち悪い」
過去をばらされそうになり心配していたが、何故か変な空気になっていく場をエリィが「あっ、ティーナちゃんだぁ」と言ってティーナと2人でホワホワした雰囲気を出したことで回避された。
せっセーフ・・・
「それよりもジークが1度出たことがあるってどういうこと?」
「おいっジェス!せっかくそれたのに!」
焦るおれに周りは顔を変える・・・つーか笑ってる。
ティーナちゃんを止めようとしたがこの流れはもう止めることはできなかった。
「今から6年ほど前、ジークさんは13歳ですね。傭兵なり立てだったジークさんはこともあろうか
この闘技大会に参加したんです」
もうなにも言うまいよ・・・
「それでそれで」
早く先が聞きたいと急かすみんな。
ジェスあとで路地裏こいや・・・
「当然周りは大反対で止めたんですが聞かなくて、大剣1本持って出場したんです」
「13歳で大剣持ってたんだ・・・」
「誰もが予選で負けるだろうと思ってたんですが・・・・ふふっ」
堪えきれず口に手を当て笑いだす受付嬢。
ジークはもう止めようとせず耳を塞いでいた。
「予選は滅茶苦茶でした。ジークさん以外その組に勝者はいませんでした」
「・・・・なんか想像できる」(ただテキトーに振り回しただけだろうな)
「本戦なんかもっと凄かったですよ、ほとんど一撃でしたから。獣人亜人関係なく吹き飛んじゃいました。ジークさんはそのまま優勝、会場は茫然としてましたよ」
淡々と続くおれの過去話にジェス達は驚愕したり納得したりしてる
「でもジークは優勝したのだろ?自慢できるではないか、なぜ秘密にしたかったのだ?」
当然の疑問にエリスがティーナに質問する
「そこですよ。最初は本人も喜んでたんですが・・・
この大会は皆さんお分かりのように様々な方々の出世口にもなる重要なものです。
ですからジークさんが参加した時の参加者は見せ場なんて全くなくて
それを審査員達が議論した結果、ジークさんは以降出場禁止になってしまったんです」
「そこまでなんて・・・、ジークの怪力は規格外だね」
「ジークかわいそー」
「ん?それではスカウトの方はどうだったのだ?そんな規格外が放置されるはずがないだろう」
リゼが疑問をこぼすと暗かったジークがさらにドーンと沈んだ。
ティーナも言いにくいのか困った表情で続けた(やっぱり言うんだ)
「まぁ、まだ幼かったジークさんにはショックだったそうで
その場から消えるように走り去って行っちゃったんです。それはもうすごい速さで」
「スカウト“しなかった”のではなく“できなかった”のか・・・」
「確かにそれは言いたくないかもね」
予選とおれの黒歴史物語が終わり腹をすかしたおれらは出店を回った。
普通に金を払おうとしたらさっきの謝罪として金は自分が持つとジェス達が言ってきた。
そうか、なら遠慮はしない。
・・・・仕返しだ
「・・・いいんだな」
「うんいいよ。ジーク達には世話になってばっかりだしね」
笑顔で遠慮しないでほしいと返すジェス、エリスたちも同意らしく何も言ってこない
ふっ、お前たちはお礼の選択を間違えた!
そしておれは復讐を実行に移すべくある人物へと振り向いた・・・
「だとよ・・・エリィ、何が食いたい?」
「お肉!」
・・・・・・・・
「おかわりっ」
今、エリィに初めて肉を食わせた時の悲劇が繰り返されている。
テーブルに積み上げられる十をゆうにを越えた皿(もちろん肉料理、それも高め)、周りの客は皿が重なるごとに声を上げる。
エリィは目を輝かせて次々と出される肉をその口の中へ収めていく。
(ほんとコイツの体どうなってんだろう)
対してジェス達は皿の枚数が増えるごとに顔を青くさせている。
おれは笑ってるがな!
「はははっ、相変わらずエリィは肉が好きだなぁ。うんいいぞ、ここはジェス達が払ってくれるからな、
あいつら金持ち(出まかせ)だから遠慮せずどんどん食べなさぁい。あっすいませんおれもおかわりっ。
・・・ん?なんだお前ら手が進んでないぞ、どうした」←すっごい笑顔
「どうしたの?お腹の調子が変なの?」
(腹の調子が変なのはお前だろっ!!)
声に出てないそれは全員が思ったことだった。
全く遠慮しないジーク達(半分以上がエリィ)にジェスたちはプルプル震えていたが今の言葉でとうとう限界が来てしまった。
「食べれるかっ!てゆーかこうなること知ってたでしょジーク!」
「お前らは限度というものを知らんのか!?」
「さすがに食べすぎだ」
それはおれも最初に言ったな・・・
反応は2つで2人が怒りと1人が呆れだった。だがそれでもジーク達の食べる手は止まらない。
「いやっ、だから止めてって言ってるじゃん。
あっすいません、勘弁して下さい、もう食べないでください」
・・・魔族の土下座なんて初めて見たな